生態・環境

ヤマカガシ

餌のヒキガエルの毒を防御に再利用するヘビ「ヤマカガシ」


井上貴斗先生

名古屋大学 農学部 応用生命科学科(大学院生命農学研究科 応用生命科学専攻)

出会いの一冊

化学生態学 ―昆虫のケミカルコミュニケーションを中心に―

中牟田潔:編 井上貴斗・手林慎一・野下浩二・野村昌史・北條賢・望月文昭・森哲・森直樹:著(朝倉書店)

私の研究分野である化学生態学に関する書籍は非常に少なく、最新動向を感じられるものは間違いなくこの一冊です。化学物質の構造や動物の豊富な例と共に「化学生態学とは何か」を簡単に学べると共に、その魅力が感じられると思います。

私も自身の研究に関連する内容である「脊椎動物の防御物質を巡るケミカルエコロジー」について、未来の研究者の卵である方々にわかりやすく、面白く感じてもらえるように力いっぱい書きました。

こんな研究で世界を変えよう!

餌のヒキガエルの毒を防御に再利用するヘビ「ヤマカガシ」

毒の構造を化学的に変え、より効果的に活用

あえて毒を食べる、自然界にはそんな不思議な進化をとげた動物がいます。私が研究している日本の「ヤマカガシ」というヘビは、牙に毒をもちますが、それとは別に、餌のヒキガエルがもつブファジエノライドという毒を取り込み、自身の防御力を高める特別な能力をもちます。

ヤマカガシは、ヒキガエルの毒を首の皮膚にある頸腺 (けいせん) という特殊な器官にためます。そして、襲われた際に頸腺をアピールして注意を引き、傷ついて破れた頸腺から毒液を噴出させて身を守ります。また、ヤマカガシは取り込んだ毒の構造を化学的に変え、水に溶けやすくして、頸腺が破れた際により効果的に毒が敵にかかるようにしています。

毒をカスタマイズできるヘビは他にはいない

毒を食べて使う生き方は昆虫やカエルでも見られます。しかし、ヤマカガシの様に毒を化学的にカスタマイズする能力、毒をためる専用の器官とそれをアピールする能力といった複雑なシステムをもつ例は他にありません。

私はこんなヤマカガシに魅せられ、研究を続けています。ヒキガエルを食べるヘビは他にもいますが、毒の再利用はしません。私は、ヤマカガシが毒を平気で食べ、カスタマイズして専用の器官に貯蔵するシステムがどのようなもので、単にヒキガエルを食べるだけの他のヘビとどのように違うのか、今はその解明に取り組んでいます。

「食べること」は生き物の進化と深く関わっています。ヤマカガシの研究は、生物が環境にどう適応してきたかを知る良い手がかりになり、また、毒の再利用に関わる遺伝子や分子の働きを知ることで、薬の開発など、思わぬ形で役立つ可能性もあります。

首を曲げて頸腺をアピールするヤマカガシと、皮膚の下に張り付いた頸腺
首を曲げて頸腺をアピールするヤマカガシと、皮膚の下に張り付いた頸腺
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

元々勉強が嫌いで、高卒で働くつもりでいました。生き物が子供の頃好きで、生物の成績だけ比較的悪くなかったことから、当時の担任に生物だけでも本気で勉強してみたらと言われてやり始め、理系学問全般の面白さに目覚めて気づけば今に至ります。

大学3年までに数学をはじめあらゆる科目を夢中で学びましたが、講義でヤマカガシの研究について知り、「絶対この研究をやりたい」と思い、周りに言い続けた結果、4年生から研究させてもらえることになりました。ずっと勉強してきた数学は数理解析や統計処理で偶然にも役立っています。後輩の皆さんには、大学で好きなことを好きなだけ、自由に学んでほしいです。

産卵期に渓流に集まるナガレヒキガエル
産卵期に渓流に集まるナガレヒキガエル
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「ヘビの餌由来毒素による化学防御の分子基盤」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
ヤマカガシ採集の様子
ヤマカガシ採集の様子
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 食品・食料品・飲料品

(2) 薬剤・医薬品

(3) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関

◆主な職種

(1) 基礎・応用研究、先行開発

(2) 品質管理・評価

(3) 大学等研究機関所属の教員・研究者

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

濠端の住まい

志賀直哉

高校生の時、授業では扱われませんでしたが教科書に全文載っていました。授業を聞かずになんとなく読んだのですが、読み終えた後、なぜか非常に心が落ち着いて、感動した覚えがあります。この経験から、志賀直哉を大学時代に読み漁りました。

内容に劇的なことは何もなく、窓から見える濠の景色、動物の様子、季節の移ろい、訪れる人とのやりとりなど、ささやかな日常が淡々と描かれます。日常の中で本当の豊かさを見出したい人、暮らしや空間を大切にしたい人、文学を通して生き方を考えたい人におススメできます。


春風夏雨

岡潔(角川ソフィア文庫)

日本が誇る大数学者、岡潔をご存じでない方は多いと思います。数学が好きで大学時代に寝食忘れて打ち込んでいる時に多くの作品を読みました。岡潔という学者がいたことを知ってもらいたいという思いをこめて、紹介します。

この作品は数学の枠を越えて、人間とは何か・心とは何か・生きるとはどういうことかを静かに、深く考察した随筆集です。論理的な証明や数式はほとんど登場せず、むしろ自然・季節・子どもの心・日本文化・芸術・宗教といった広い主題を通じて、「人間の心の本質」に迫っていきます。題名の「春風夏雨」は、中国の故事「春風のように人を育て、夏の雨のように潤す」から取られた言葉であり、全編を通して「静かで深い滋養」を与えてくれるような文章が並びます。特に「情緒がなければ知性も意志も働かない」という言葉は、研究という知的で物質的な営みに没頭する日々の中で、自分自身の心を見直す契機になりました。

知識偏重の毎日に少し疲れている人、自然や季節の中で心を見つめたい人、科学と人文の境界を越えて考えたい人におススメできます。


論理が伝わる 世界標準の「書く技術」

倉島保美(ブルーバックス)

大学に入るまで、場合によっては研究を開始するまで、あまり論理的な文章を書く練習や、論理的で伝わりやすい文章の例に触れる機会は少ないと思います。私は実際そうで、元々下手だったこともあり、研究を始めてからかなり苦労しました。

本書は、「主語と述語の対応」「論理の段階づけ」「前提と結論の接続」といった、論理的文章の構造の基本を解説したうえで、それらを活かした段落構成・文章構成の技術が、豊富な事例とともに示されています。特徴的なのは、「論理の正しさ」だけでなく、「読み手に伝わるか」という伝達の側面までを踏み込んで扱っていることです。単に筋が通っているだけでは不十分で、「相手がどのように読み、どこでつまずくか」という視点を重視しています。論文やレポートなどに直結する「実践的技法」を学べます。研究者・専門職を目指す人、ビジネス文書を書く可能性のあるすべての人へおススメできます。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

やはり化学生態学です

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

台湾:野外調査中に出会う全ての人が温かかった。ヘビ、カエルの種類が非常に豊富でヤマカガシもいる。ご飯がとてもおいしい。

Q3.一番聴いている音楽アーティストは?

UVERworld の 「earthy world」と同率一位で 「7 日目の決意」です

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

UVERworld のライブ

Q5.好きな言葉は?

才能は努力には勝てない、努力なんかじゃ楽しむやつには勝てない


みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ