「学習」と「暗号」の美しい対応関係を数学的に証明
未だ原理がよくわかっていない「学習」と「暗号」
普段当たり前のように使われる計算の技術にも、未だ原理がよくわかっていないものが多くあります。その代表的なものが「学習」と「暗号」です。
例えばネットショッピングでは、住所などの大切な情報を守るために暗号技術が使われます。しかし、その暗号が本当に安全かどうかはわかっていません。将来、新しい計算方法が見つかれば破られてしまうかもしれないのです。
また、計算機が機械学習によって何を学べるのかもまだはっきりしていません。人工知能は翻訳や画像認識を経験的にうまくこなせるようになりましたが、理論的には「2つの平面で区切られた単純な領域を見分けられるか」といった基本課題さえ、現実的な時間で解けるかわかっていません。
私は、この学習と暗号の関係に興味を持って研究しています。
学習と暗号はコインの裏表
私の研究では、学習と暗号がコインの裏表のように、同じ概念を異なる角度から見た関係にあることを明らかにしました。学習を「矛」、暗号を「盾」と考え「矛盾」の故事を思い出すと、よりイメージしやすいかもしれません。つまり「矛がある=強い学習が可能」なら「盾がない=暗号が破れる」、逆に「矛がない=学習ができない」なら「盾がある=暗号が安全」となります。一見異なる目的を持つ学習と暗号のあいだに、こうした美しい対応関係があることを数学的に証明しました。
このような、異なるものに深いつながりを発見することは、それぞれに新しい視点を与え、知識を広げる手助けになります。
「計算機にできることは何か」を追究
この知識を生かして、例えば、暗号の手法を応用してデータから学習に必要な情報を取り出す研究や、「学習の難しさ」を利用して高速に計算できる暗号技術を作る研究に取り組んでいます。さらに、この学習と暗号の関係を「情報」というキーワードで掘り下げ、「計算機にできることは何か」という基本原理の解明を目指しています。
最初のきっかけは、大学の研究室の先生や先輩から刺激的な話をたくさん聞いたことだと思います。たとえば、計算機の限界に迫る未解決問題である「P対NP問題」や、コイントスのような乱数を決まった手順の計算によって擬似的に生み出す「擬似乱数」といった話題です。
面白いと感じたテーマについて本や論文をわからないなりに読み解くうちに、それらのさまざまな計算にまつわる概念が複雑に、ときに不思議なほど美しく結びついていることを少しずつ知りました。その結びつきをさらに深く理解したいとあれこれ考え、今の研究テーマへとつながっていきました。
「一方向性関数の構成における相対化の障壁の突破と回避」

