アユと養殖業を守る!善玉菌の力を借りたアユの病気対策
アユにしか感染しない、恐ろしく強い冷水病菌
目には見えない小さな微生物の働きに、私はいつも感心させられます。博士号を取得した後、私に与えられた研究テーマは「アユの冷水病菌」でした。この細菌はとても偏食家で、なんとアユにしか感染しません。そんな狭い相手だけを狙って、自然界で生き残っていけるのか?川のどこに潜んでいて、どうやってアユに取りつくのか?そもそもどこから来たのか――次々と浮かぶ疑問に突き動かされ、好奇心のままに研究を続けてきました。
冷水病菌には意外な一面もあります。アユに感染すると体を溶かし、あっという間に全滅させるほどの高い病原性を示す一方で、寒天培地上で他の細菌と競争させるとあっさり負けてしまいます。自然界では弱々しい存在なのに、アユに対しては恐ろしく強い――そのギャップに研究者としての好奇心をかき立てられました。
「いつになったら解決するんや」
けれども、研究を続ける中で転機が訪れました。ある川で調査をしていたとき、漁協のおじさんに、「もう何年もこの病気に悩まされている。いつになったら解決するんや。わしら、もうもたへん」と言われました。その言葉を聞いた瞬間、私はハッとしました。ただ面白いからと謎を追いかけるだけではなく、現場で困っている人のために、冷水病を本当に防ぐ研究をしなければと思いました。
謎解きのワクワク感と社会に役立つ実感
今は、「善玉菌」などを使った病原菌の侵入を防ぐバリア技術の開発に取り組んでいます。善玉菌は、アユの体表や腸にすむものだけでなく、川の水や土、他の魚や発酵食品からも幅広く探し出し、病原菌の侵入を防ぐ力を持つ菌を見つけ出そうとしています。小さな菌の力を借りて魚を守ることは、養殖業の持続可能性や川の文化を支える未来にもつながります。
研究は好奇心から始まりました。目に見えない小さな世界に潜む謎を解き明かすときのワクワク感は、研究者としての大きな喜びです。けれども今は、それだけではなく、社会を支える研究もしたいと考えています。魚を守り、人々の暮らしや文化に貢献できるときにも、研究のやりがいを強く感じます。謎解きの面白さと社会に役立つ実感――その両方が、私にとって研究の醍醐味です。
私が大学4年生の時に与えられた卒業研究のテーマは、「ビブリオ病菌の淡水中での生残機構の解明」でした。ビブリオ病菌は当時、琵琶湖でアユを大量死させていましたが、本来は海にすむ海洋細菌で、淡水に晒されると数時間で死んでしまいます。「なぜ淡水で生きられないはずの細菌が、湖で魚を殺せるのか?」これが私たちの大きな疑問でした。
すでに先輩が、琵琶湖の湖底の泥の表面からこの細菌を検出していました。そこで私は、湖底の環境条件(低温・暗所・酸素が少ない)とビブリオ病菌の集合体(バイオフィルム)を作って淡水に晒しました。すると、淡水でも死なずに、数ヶ月も生き残ったのです。目に見えない小さな生き物のしたたかな生残戦略に心を奪われ、「この世界をもっと知りたい」と大学院進学を決意しました。
「全てのアユ由来冷水病菌が持つ3型O抗原関連遺伝子はアユへの病原性の発揮に重要か」
◆主な業種
(1) 農業、林業、水産業
(2) 食品・食料品・飲料品
(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
◆主な職種
(1) 生産管理・施工管理
(2) 商品企画、マーケティング(調査)
(3) 大学等研究機関所属の教員・研究者
海に囲まれた日本において、近畿大学は「海を耕せ」という初代総長の指示のもと、世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功し、水産研究をリードしてきました。本学科では、水産研究所と連携して、魚を飼育・生産する養殖現場での学修や研究に加え、魚の健康や養殖環境の健全性を守る研究、食品加工や流通に至る「生簀から食卓まで」を一貫して学べます。建学の精神である実学教育を通じ、研究成果を社会に還元し、次世代の水産業を担う人材を育成できるのは近畿大学ならではの特色です。
CRISPR (クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見
ジェニファー・ダウドナ、サミュエル・スターンバーグ 櫻井祐子:訳(文藝春秋)
ノーベル賞を受賞した遺伝子編集技術「CRISPR-Cas9」がどのように発見されたのか、その道のりを描いた一冊です。研究者ジェニファー・ダウドナとエマニュエル・シャルパンティエの出会い、仲間との協力やライバルとの熾烈な競争など、まるで冒険物語のような展開にワクワクさせられます。
さらに、この本では「研究者の仕事」がリアルに伝わります。研究室での挑戦や失敗だけでなく、自分たちの発見が社会にどう受け止められ、時に想定外の影響を及ぼすのか、その責任にどう向き合うのかといった、科学者ならではの葛藤も描かれています。
研究に興味のある人はもちろん、「科学技術が社会とどう関わるのか」に関心がある人にもおすすめです。未来の進路を考えるヒントがきっと見つかるでしょう。
完全攻略!鮎 Fanatic
坪井潤一 、高橋勇夫、高木優也(築地書館)
鮎を心から愛する3人の研究者が、それぞれの専門的な視点から鮎について語り尽くした一冊です。この本は、生態・行動・環境との関わりなど、多様な切り口で鮎を深掘りしていて、読み直す度に新しい視点を与えてくれます。
また、本の中には「研究者ってどんなふうに調査や研究をしているのか」という点も描かれていて、フィールドワークに汗を流す姿や、データを分析して自然の謎に迫ろうとする姿を知ることができます。科学を学ぶことは、教科書の中だけでなく、実際に自然に出て、観察し、問いを立て、考えることから始まるのだということが伝わってきます。
鮎が好きな人はもちろん、自然や環境、研究そのものに興味のある中高生にとっても、鮎という身近な存在を通して「科学する楽しさ」を知ることができるおすすめの本です。
フィールド調査のための安全管理マニュアル
日本生態学会:監修(朝倉書店)
現場で試料を採取するフィールド調査には、転倒や天候変化、危険生物との遭遇など、思わぬ「ヒヤリハット」が潜んでいます。本書は、そうした事例と、それを避けるための危機管理・安全管理のポイントを体系的にまとめた一冊です。
近年は中高生でも、個人や学校単位で研究活動に取り組む機会が増えており、現場でのトラブルや不幸な事故に巻き込まれるリスクが高まっています。フィールド調査は大変魅力的ですが、同時に危険も伴います。将来有望な若い人材を守るためにも、そして私自身も含め研究者が安全に活動を続けるためにも、本書を参考にして安全なフィールドワークを心がけていければと思います。
| Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? フランス:美味しい・自由・自国文化を大切にする精神など、実際に生活してみてとても楽しかったからです。 |
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| Q2.大学時代の部活・サークルは? サイクリング部 |
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| Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? ギャル神輿:神輿がめちゃくちゃ重くて辛かったのですが、日給はよく、今となっては良い思い出です。 |
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| Q4.好きな言葉は? 明石家さんまさんの「人生 生きてるだけで丸儲け」 |

