チンパンジーだって、特定の場所でうんこする!?
私には予想できていた!
森の中を歩いていたチンパンジーが、倒木の上でしゃがみ、間もなくうんこをし始めました。近くにいた欧米からの観光客たちは、「Oh~!」と笑い声を漏らしています。しかし、藪の間から双眼鏡でチンパンジーの排便を覗き見ていた私は、「やっぱりね」としたり顔です。なぜなら、私にはチンパンジーが排便することが予想できていたからです。
生物学の辞典を紐解くと、『排泄する場所を特定しない』動物種として、『ヒト以外の霊長目』が挙げられています。確かに、人間の公衆トイレのような意味での「特定の場所」は、おそらくチンパンジーには見当たらないでしょう。
しかし、例えば倒木、坂の上、少ししなるように樹間を伝う木本性のつる植物など、チンパンジーが頻繁に排泄をするミクロな「特定の場所」は存在すると私は考えています。チンパンジーたちにとっての排泄にまつわる(ゆるやかな)規則を明らかにすること。これが私の目下の研究テーマです。
トイレってそもそもなんだっけ?
いま、SDGs6では「安全な水とトイレを世界中に」という目標が掲げられています。私が「ヒト以外の霊長類」の排泄行動を通して考えたいのは、「トイレってそもそもなんだっけ?」ということです。私の直感が正しいとすれば、「便器」にあたるようなものは、ヒトとチンパンジーの共通祖先の社会にもあったかもしれません。では、なぜ人類の祖先は「特定の場所」で排泄をする必要があったのでしょう?
こんなふうに、人間社会では当たり前のことを、「そもそも○○ってなんだっけ?」と考え直すヒントをくれるところが、進化人類学・霊長類学の魅力ではないかと私は考えています。
「排泄人類学の創出:排泄の自然誌と人類誌、サニテーションと健康」
雄大な日本アルプスを窓から望む信州大学理学部生物学コースは、魅力的な野外フィールドが身近にあるため、早い段階でフィールドワーク研究を始められる点が強みだと思います。学生の中には、入学式の日の午後から進化人類学研究室に顔を出して研究を始めて、学部生のうちに査読付きの著名な国際学術誌に筆頭著者として論文を発表した人もいます。

