発生生物学

ウニの幼生

海の小さな命の宝箱=ウニ幼生から、生命の共通原理を解読したい


谷口俊介先生

筑波大学 生命環境学群 生物学類(生命環境系 下田臨海実験センター/生物学学位プログラム)

出会いの一冊

釣りキチ三平

矢口高雄(週刊少年マガジンコミックス)

自然と生き物に対する考え方や姿勢がとてもよく描かれています。自然を正しく敬い、怖がることが大切であることを教えてくれます。なんでもかんでも危ないから禁止という、昨今の考え方とは違うかもしれませんが、ヒトも自然の一部であるので正しく知って接することの必要性を説いてくれます。

こんな研究で世界を変えよう!

海の小さな命の宝箱=ウニ幼生から、生命の共通原理を解読したい

光でうんち

え、光でうんち?——そんな不思議を手がかりに、私たちは「目のない」ウニの幼生で生命のしくみを探っています。ウニは無脊椎動物ですが、進化的には人に近い仲間です。おとなはヒトデと同じ仲間で五放射対称ですが、幼生は私たちと同じ左右相称で、消化管も食道・胃・腸に分かれています。

私たちは、幼生が光に反応して“うんち”をすることを発見し、どの波長・どれくらいの強さの光が、どの細胞で感じられ、どの神経回路を通って肛門が開くのかまで、道筋を一つずつ明らかにしています。

もともとの研究の出発点は発生生物学で、受精卵が複雑な体へ分化していく途中で、光という環境情報が内臓の働きをどう切り替えるのかにも興味を持ち始めて追いかけている最中です。遺伝子のスイッチや神経の活動を調べ、光受容→“脳”にあたる神経→肛門開口という回路図を作成中です。さらに、光が幼生の泳ぎ方や食べ方、そして出し方にどう影響するのかも検証しています。

人間の睡眠・食欲・消化の理解につながる

目がなくても光をどのように“見ている”のか? その答えは、光を合図に生きる私たち人間の体内時計や行動の理解にもつながると思われます。太陽の下と夜の人工光の中で暮らす我々自身を理解する時に、人間だけを見ていても実はよくわからない場合が多いです。身近な「光」を鍵に、海の小さな命の宝箱=ウニ幼生から、生命の共通原理を解読したいと思っています。

この研究は、海の生き物だけでなく、睡眠・食欲・消化のリズムなど私たちの暮らしの根っこを見直すヒントを探すきっかけを提供します。皆さんの教科書にある“刺激と反応”が、細胞と臓器のレベルでどうつながるのか——そのリアルを示すのが目標です。

フランスの地中海沿いで採集したヨーロッパムラサキウニParacentrotus lividus。ヨーロッパのウニ研究者はこの種をモデル生物として利用しています。出張や学会発表でいろいろな国にいくたび、海岸でウニがいないか見て回るのも楽しいです。
フランスの地中海沿いで採集したヨーロッパムラサキウニParacentrotus lividus。ヨーロッパのウニ研究者はこの種をモデル生物として利用しています。出張や学会発表でいろいろな国にいくたび、海岸でウニがいないか見て回るのも楽しいです。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

自然が不思議で生きて動いているものが不思議という思いが、現在の仕事の出発点だと思います。研究テーマはそもそも人間って不思議だよね、だけど人間よりも単純な生き物で何かを見つけた方がすみずみまで解析できて自分が“納得いく”かも、というところに基づいて決めている気がします。いずれにせよ、それほど強い想いがあるわけではなく自然とそうなっています。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「ウニが光により腸の入口と出口の開閉を制御するメカニズムを発見(TSUKUBA JOURNAL)」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
アメリカMarine Biological Laboratoryで1年半に一度開催されるウニ研究の国際学会Developmental Biology of the Sea Urchinでの発表風景。ウニを使って発生生物学・細胞生物学・進化生物学・ゲノム生物学等の研究を行なっている世界中の研究者や学生が集まり発表と議論を4泊5日の泊まり込みで行います。
アメリカMarine Biological Laboratoryで1年半に一度開催されるウニ研究の国際学会Developmental Biology of the Sea Urchinでの発表風景。ウニを使って発生生物学・細胞生物学・進化生物学・ゲノム生物学等の研究を行なっている世界中の研究者や学生が集まり発表と議論を4泊5日の泊まり込みで行います。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関

(2) コンサルタント・学術系研究所

(3) コンピュータ、情報通信機器

◆主な職種

(1) 基礎・応用研究、先行開発

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

私は臨海実験施設に所属しているため、筑波大学の中でも異質なところで研究をしています。とにかく目の前が海であり、研究材料の生き物も自分で海に入り採ってきます(県や漁協の許可の元)。それでいて研究内容はゴリゴリの分子生物だったり、顕微鏡をひたすら覗くものであったりとフィールドからラボまで全てを網羅した研究を展開しています。

所属先である筑波大学下田臨海実験センターの前に広がる鍋田浜。とても美しいビーチで泳いで魚を採集して飼育することを趣味にしています。また、実際に生き物は自然の中で生活しているということを実感できる環境でもあります。大学に入って研究を始め、特にDNAやタンパク質といった分子の働きに着目するようになると、実験で用いる生物は飼育しやすいモデル生物になります。その環境が続くと、それらの生物が自然のなかでどのように振舞っているのかという感覚がおろそかになりがちです。そんな時は少し海で泳いでみれば、生き物は我々ヒトも含めて自然の中の一部であるというごく当たり前の感覚を取り戻すことができるので、生物学者の仕事場としてはとても良い環境だと思います。
所属先である筑波大学下田臨海実験センターの前に広がる鍋田浜。とても美しいビーチで泳いで魚を採集して飼育することを趣味にしています。また、実際に生き物は自然の中で生活しているということを実感できる環境でもあります。大学に入って研究を始め、特にDNAやタンパク質といった分子の働きに着目するようになると、実験で用いる生物は飼育しやすいモデル生物になります。その環境が続くと、それらの生物が自然のなかでどのように振舞っているのかという感覚がおろそかになりがちです。そんな時は少し海で泳いでみれば、生き物は我々ヒトも含めて自然の中の一部であるというごく当たり前の感覚を取り戻すことができるので、生物学者の仕事場としてはとても良い環境だと思います。
先生からのメッセージ

たくさんの人と出会って話す!森や山へ、海や川へ!

私自身は、本を読む暇があったら“たくさんの人と出会って話す!森や山へ行って歩く!海や川で泳ぐ!”ことを大切にしています。当然本を読むことは大切だとは思いますが、人には得意不得意、好き嫌いもあります。将来研究者になりたい・研究をやりたいと思っていても、本をたくさん読んでいないとダメかもと思わなくても良いということを伝えたいです。

もちろんたくさん本を読んで知識がたくさんある人を見るとすごいなーと思いますが、いろいろな人が世の中にはいて、いろいろなタイプの人が研究者になった方がおもしろいと思うので、字で読んだ知識と同じくらい、目で見て耳で聞いて指で触って得た知識も大切だと思えれば良いのではと考えています。

中高生におすすめ

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

医学、経済、経営、法律

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

カナダ:以前住んでいたし、この夏も旅行してやっぱり素敵な国だと感じたから

Q3.感動した/印象に残っている映画は?

『ショーシャンクの空に』『シンドラーのリスト』『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

スキー場の住み込みバイト

Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

幼魚採り 幼魚水族館