恐竜の奇抜で多様な頭部は、どう進化し成立したかを明らかに
脳を収めていた空洞を三次元的に復元
恐竜研究においては、骨格や化石の外形を調べるだけでなく、頭骨の内部構造や脳の形態を復元することによって、生態や行動の理解が大きく進展します。私が現在進めているのは、恐竜の頭骨と脳の形態の関係性を探る研究です。本研究では、頭骨の形と脳の形がどのように対応し、進化の過程で共に変化してきたのかを明らかにすることを目的としています。
脳そのものは化石として残りませんが、脳を収めていた空洞(=頭蓋腔)は保存されています。この空間を三次元的に復元することで、脳の大きさや形態を推定することが可能です。
この研究では特に、角竜や鳥脚類といった草食恐竜を対象にしています。これらのグループは多様で独特な頭骨を進化させており、その形態と脳との関係を検討することで、特殊な頭部構造がどのように成立したのかを明らかにできると考えています。
頭蓋腔と脳の形態には関係がある
さらに、現生のワニや鳥を比較対象として、頭蓋腔の構造と実際の脳の形態との関係を解析しています。これにより、化石資料から脳をどの程度正確に推定できるのか、その信頼性を検証することが可能になります。すでに一部の鳥脚類標本では、頭蓋腔の特徴と脳の発達の関係に一定の傾向が見いだされつつあります。
この研究を通じて、恐竜の頭骨と脳が互いにどのような影響を及ぼし合って、それぞれの形態を形づくることになったのかを探ることを目指しています。こうした研究は、奇抜で多様な頭部を進化させてきた恐竜の姿を理解するうえで、重要な手がかりとなります。
「恐竜における脳と頭骨の形態的共変化の解明」
恐竜をはじめとした古生物学に特化した学部で、そのような分野を専門とする教員が集まっています。そのため、古生物やその周辺分野に関して広い視点にたって学び、研究できる場所だと思います。そのような学部は国内では本学部以外にはありません。
ダイナソー・ブルース
尾上哲治(閑人堂)
恐竜科学の研究の魅力をあまりなく伝えてくれる科学ドキュメンタリーだ。恐竜の研究に出会う最初の本として多少高いが図書館でも借りて、ぜひ手に取ってほしいし、一読してほしい一冊である。
恐竜が絶滅したのは、巨大隕石の衝突によるものだという説は、今や広く知られている。しかし、この学説がどのように誕生し、どのように議論され、受け入れられてきたのかを知る人は意外と少ない。本書は、科学の世界における「発見」とはどのように生まれ、どのように検証され、あるいは否定され、そしてどのように認められていくのかを、リアルな研究史の視点から描く。
科学の世界では、新しい説が発表されたからといって、すぐに受け入れられるわけではない。むしろ、多くの場合、激しい批判や疑念にさらされ、検証と反証の繰り返しの中で、ようやく定説となる。本書では、まるでミステリー小説を読むかのような緊張感の中で、恐竜絶滅隕石衝突説がどのように確立されていったのかが描かれる。著者自身が現役の研究者であるため、その筆致には説得力があり、科学の世界の厳しさと同時に、その魅力も存分に伝わってくる。
解剖男
遠藤秀紀(講談社現代新書)
科学と思想の狭間を見るのに最適なのは、『解剖男』である。本書は、動物園で死んだ動物の遺体が、どのように研究者の手に渡り、解剖され、標本となり、科学の発展に寄与していくのかを、生々しくもユーモラスに描く。著者の遠藤秀紀氏は、動物の形態学を専門とし、数々の哺乳類の標本を手がけてきた研究者だ。
動物の死は、しばしば「終わり」として捉えられるが、本書ではむしろ「始まり」として描かれる。死体は単なる物体ではなく、そこから未知の知見が生まれる可能性を秘めている。研究者の情熱や、科学に対する飽くなき好奇心が随所に感じられると同時に、「生と死」に対する考え方そのものを揺さぶられる一冊だ。
著者は私の博士課程時代の指導教員でもあり、独特の語り口は、本書を単なる科学解説書ではなく、一種のエンターテインメントとしても成立させている。研究の現場にいる人間だからこそ語れる、生の科学の姿がここにある。科学が、いかに地道で、いかに感動的なものかを知ることができるだろう。
ロスト・ワールド ジュラシック・パーク2
マイクル・クライトン(ハヤカワ文庫)
マイクル・クライトンは、科学技術が進歩する一方で、人類がそれを完全に制御することはできないというテーマを、一貫して描いてきた作家である。本書もその例に漏れず、遺伝子技術によって甦った恐竜たちが、いかに人間の予測を超えた存在であるかを描き出す。
本作では、人間がどれだけ科学的知識を蓄積し、技術を発展させても、自然の本質を理解し尽くすことはできないというメッセージが随所に込められている。特に印象的なのは、「地球そのものは人類によって破壊されることはない」という趣旨を著者が述べているところだ。私たちはしばしば「地球に優しい」という言葉を使うが、それ自体が人類中心の考え方であり、地球は人間が何をしようと存続し続けるのだという皮肉な視点を突きつけられる。クライトンの作品は、単なるエンターテインメントにとどまらず、科学技術に対する盲信や、人類の傲慢さに対する鋭い批判を内包している。本書もまた、その例外ではない。
| Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 古生物学 |
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| Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? イギリス:古生物学発祥の地で、多くの化石も見つかるため |
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| Q3.感動した/印象に残っている映画は? ジュラシック・パーク |
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| Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 鳥類標本からのDNA抽出・解析実験の補助 |

