呼吸器内科学

加熱式タバコ

加熱式タバコなら安全か? 長期喫煙で肺の病気を発症


佐藤匡先生

順天堂大学 医学部(大学院医学研究科 呼吸器内科学講座)

出会いの一冊

新型タバコの本当のリスク

田淵貴大(内外出版社)

今回紹介した私たちの研究の主要テーマである「新型タバコ」(日本では主に加熱式タバコ)について、わかりやすく解説してくれている一冊です。

わが国で加熱式タバコが急速に広まっていた2019年に発刊されたものですが、加熱式タバコとは何か、これまでの紙タバコとは何がどう違うのか、加熱式タバコは本当に害が少ないのかなど、すでに身近なアイテムとなってしまった現在、あらためて一読されることをお勧めします。紙タバコを知らない若い人が、誤った情報で手を出してしまわないように。。。

こんな研究で世界を変えよう!

加熱式タバコなら安全か? 長期喫煙で肺の病気を発症

壊れた肺の治療法はない

タバコが健康に良くないことは皆さんもご存じかと思います。

煙が直接入る肺では、肺癌や喘息だけでなく、長期喫煙により肺胞が壊れて呼吸困難を招くCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が大きな問題です。COPDは高齢者を中心に多くの方が苦しみ、壊れた肺(肺気腫)を修復する治療はまだ見つかっていません。

マウスに6か月間吸わせると、肺気腫を発症

近年、加熱式タバコという新しいタバコ(*)が、紙タバコの代替として普及しています。加熱式タバコは紙タバコより有害成分が少ないと宣伝されているのですが、本当に安全かは不明です。

そこで私たちは、マウスに6か月間、毎日30分、新鮮大気(対照群)、加熱式タバコエアロゾル、紙タバコ煙にそれぞれ曝露する実験を行いました。

その結果、加熱式タバコ群でも、紙タバコ群と同様に肺気腫を発症することを発見しました。また、ヒトの気道上皮細胞に、加熱式タバコや電子タバコの蒸気成分であるプロピレングリコールを曝露すると、細胞の増殖や生存率が低下し、アポトーシス(細胞死)が誘導されました。

加熱式タバコの使用に警鐘を鳴らす

これらの結果から、加熱式タバコは「紙タバコより安全」と安心できず、長期使用により紙タバコと同様の肺気腫を起こしたり、気道細胞を傷害したりするリスクがあると考えられます。

私たちの研究成果が、今も拡がり続けている加熱式タバコの使用に警鐘を鳴らし、将来の健康リスクを低減することを願っています。皆さんも加熱式タバコを含めたタバコ製品全般の健康影響を改めて考えてみてください。

*新しいタバコには、加熱式タバコのほか、電子タバコも含まれます。加熱式タバコは、タバコ葉を燃やさずに約250~350℃で加熱し、たばこ本来の風味やニコチンを含む蒸気(エアロゾル)を吸います。一方、電子タバコはタバコ葉を使わず、ニコチン入り(または無ニコチン)のリキッド(プロピレングリコールなど+香料)を加熱して蒸気化したものを吸う仕組みです。ニコチン入りのリキッドは日本では販売が法律で認められていないので、日本では加熱式タバコが主に普及しています。

ネズミに加熱式タバコを吸わせる実験機械(真ん中の写真)です。もともとは普通の紙タバコ(右上)を吸わせるように設計された機械なのですが、加熱式タバコを回路につなげて(右下)、シリンジで吸引して(真ん中下)、筒の中に入れられて鼻だけ出すようにしたネズミ(左)にタバコの煙あるいは加熱式タバコのエアロゾル(蒸気)を届けられるように工夫しました。
ネズミに加熱式タバコを吸わせる実験機械(真ん中の写真)です。もともとは普通の紙タバコ(右上)を吸わせるように設計された機械なのですが、加熱式タバコを回路につなげて(右下)、シリンジで吸引して(真ん中下)、筒の中に入れられて鼻だけ出すようにしたネズミ(左)にタバコの煙あるいは加熱式タバコのエアロゾル(蒸気)を届けられるように工夫しました。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

医師を目指したきっかけは、父が内科医なので、というありきたりなものですが、専門分野の選択には紆余曲折がありました。医学部を卒業するときには心臓を専門にしようと思いつつ初期研修を開始したのですが、研修中に出会った指導医に惹かれて呼吸器を専門にしようと変わりました。

その後、大学院に進む際、当初は感染症を研究したいと思っていましたが、多くの人との出会いを経てタバコによる肺の病気に取り組むようになりました。人との出会いで人生は変わっていくものですね。

ネズミの肺を顕微鏡で観察するために、肺を膨らませながらホルマリン固定しているところです。一度にたくさんのネズミ肺を同じ条件で固定できるようにした自作の装置です。
ネズミの肺を顕微鏡で観察するために、肺を膨らませながらホルマリン固定しているところです。一度にたくさんのネズミ肺を同じ条件で固定できるようにした自作の装置です。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「慢性タバコ煙曝露システムを用いた加熱式タバコエアロゾルによる肺傷害の解析」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
今回紹介した加熱式タバコについての研究成果が、日本呼吸器学会禁煙推進委員会のXで紹介されています。このように自分たちの研究が評価してもらえると、とてもうれしいものです。
今回紹介した加熱式タバコについての研究成果が、日本呼吸器学会禁煙推進委員会のXで紹介されています。このように自分たちの研究が評価してもらえると、とてもうれしいものです。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

◆主な職種

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

先生の研究に挑戦しよう!

・タバコはなぜやめられないのか?

タバコは体によくないということは、今では小さい子供でも知っていることです。なのに、紙タバコにしても、加熱式タバコなどの新型タバコにしても、一度手を出すとなかなかやめられないのには、何か理由があるはずです。タバコに含まれる成分のせい?タバコを吸う人の心理的な問題?いろいろな面から考察してみてください。

中高生におすすめ

奇跡のバックホーム

横田慎太郎(幻冬舎)

野球好きならずともおすすめしたい。諦めずに頑張れば、何かを起こすことがきっとできるはず!


海賊とよばれた男

百田尚樹(講談社文庫)

長編ですが、怒涛の展開で一気に読めます。真のリーダーシップを体感することができると思います。


最後の医者は桜を見上げて君を想う

二宮敦人(TO文庫)

医療小説から一冊。だれもが避けられない「死ぬこと」について、深く考えさせられる作品です。続編もあります。

一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

アメリカ。英語を自由に使えるようになりたいから。

Q2.大学時代の部活・サークルは?

ボート部です。体が小さいので舵取りをやってました。熱いカレッジスポーツです!

Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

アルバイトではないですが、お笑いコンビを組んで、ローカル番組に出たことがあります。

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

愛犬のお世話です。家ではずっと一緒にいます。


みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ