がん転移を抑える漢方薬を発見
漢方は日本の伝統医学
漢方薬を知っていますか。漢方薬は中国の薬と誤解されることがあるのですが、漢方は日本の伝統医学で、漢方の治療で用いるお薬が漢方薬です。
たまに漢方薬を健康食品だと思っている方もいますが、それは誤りで、漢方薬は医薬品です。このため医学部や薬学部では漢方医学や漢方薬の勉強もします。
がん細胞の運動能を抑制する漢方薬
私は麻黄湯(まおうとう)が、がん細胞の運動能を抑制することでがん転移を抑えることを見出しました。さらに麻黄湯に配合されている麻黄(まおう)が、細胞運動を促進するc-Metという受容体を阻害することで、がん細胞の運動能を抑制することを明らかにしました。
しかし麻黄はエフェドリン、プソイドエフェドリンなどのアルカロイドを含んでおり、不眠、動悸、血圧上昇、排尿困難などの副作用を誘発します。このため麻黄はがん患者さんの治療に適さないと考えられました。
そこで、麻黄からアルカロイドを除去したエフェドリンアルカロイド除去麻黄エキス(EFE)を共同研究者と一緒に開発しました。
痛みを軽減することもわかってきた
現在、c-Met発現が原因となって生じる分子標的治療薬耐性肺がんに対して、分子標的治療薬とEFEを併用することで耐性から回復することを実験的に明らかにしており、さらに、EFEはがんの化学療法剤によって誘発される末梢神経障害性疼痛を軽減する作用があることもわかってきました。これらの知見から、がん薬物療法へのEFEの併用の可能性を探っています。
高校3年生の6月に母をがんで亡くしました。3月頃までは体調が悪いと言いながら家事をしていた母が、4月にがんと診断された後、3ヵ月で亡くなるなんて、高校生の私にはまったく理解できませんでした。
そこでがんを知り、母の仇を取るために薬学部へ進学しました。その後、がんの研究を続けるうちに、仇を取るのは難しく、それよりもがんと上手に共生する方法を探すことが大事であると気づきました。
「がん薬物療法へのエフェドリンアルカロイド除去麻黄エキス(EFE)の併用効果の解析」
◆主な業種
(1) 病院・医療
(2) 薬剤・医薬品
◆主な職種
(1) 薬剤師等
(2) 基礎・応用研究、先行開発
◆学んだことはどう生きる?
薬学部に移籍して3年目となり、初めて配属された学生達が来年卒業します。とても優秀な学生達で6名が卒業研究の結果を学会で口頭発表しました。卒業後の進路は様々ですが、がんに興味を持ちがん専門病院で勉強を続ける予定の学生や、漢方薬に対する興味がより強くなり研究職として企業に就職する予定の学生もいます。
1972年にわが国最初の東洋医学の総合的な研究機関として東西両医学の長所を生かした治療と、東洋医学の科学的解明の研究を目的に東洋医学総合研究所が開設されました。2023年に組織改組により、私の所属していた研究部は薬学部へ移籍し、診療部門は北里研究所病院漢方鍼灸治療センターとなりました。
現在も臨床医の先生方と共同研究しながら漢方薬の薬理学的研究を行っており、薬学部の学生は臨床医の先生方の講義から実臨床について学んでいます。
2015年に厚労省から「がん対策加速化プラン」への提言が出され、「がんとの共生~がんと共に生きる」の項目に「漢方薬を用いた支持療法に関する研究を進める」が掲載されました。がん支持療法とは「がんの直接的な治療ではなく、がんに伴う症状、手術の合併症、薬物療法の副作用に対する治療」のことです。がんとの共生に漢方薬がどのような役割を果たしているのか、調べてみましょう。
ブルーバックス シリーズ
主に科学者(講談社)
サイエンスの世界を著名な先生方がわかりやすく解説していて、ワクワクが止まりません!面白そうだなと思ったタイトルの本を手に取ってみてください。
| Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 母ががんに罹患していない世界線があるなら、理学部で物理学か生物学を学んでみたかったです。 |
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| Q2.一番聴いている音楽アーティストは? スピッツ 「僕はきっと旅に出る」 |
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| Q3.感動した/印象に残っている映画は? 西の魔女が死んだ |
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| Q4.好きな言葉は? サイエンス |

