ウイルス感染による牛のがん 簡単・正確な検査方法を開発
生物の進化に大きく貢献 レトロウイルス
レトロウイルスは、数あるウイルスの中でも少し変わった性質を持っています。細胞に感染すると、自分の遺伝子を宿主のゲノムの中に組み込み、一度感染すると生涯体内に残り続けます。
この性質は、人や動物にとって厄介な一面がありますが、逆に生殖細胞に入り込んで胎盤形成に関与するなど、生物の進化に大きく貢献してきたこともわかっています。また、レトロウイルスは遺伝子を運ぶベクターとして研究に利用されたり、古代のウイルス感染の痕跡を手がかりに進化の謎を探る手段としても役立っています。
牛に感染し、「がん」のような病気を引き起こす
そんなレトロウイルスの一つに「牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)」があります。これは牛に感染し、リンパ腫という「がん」のような病気を引き起こします。日本でもBLVの感染率は高く、問題となっているウイルスです。
牛が健康に暮らすためには、BLVによるがんをできるだけ早く見つけることが大切ですが、従来の検査方法は時間がかかったり、がん化の程度を正確に判断できないことが課題でした。
そこで私たちは、血液を使ってBLVによるがん化を簡単かつ正確に調べられる新しい方法を開発しました。この方法を使って、これまで見えなかったウイルスによるがん化の程度を数値化して「見える化」できるようになりました。
このように、レトロウイルスの研究を通して、牛の病気の理解や早期発見を目指しつつ、レトロウイルスの感染機構や生物の進化の謎を解くような研究にも取り組んでいます。
大学の授業で、多くの感染症が動物由来病原体による、ということを知り、どうやって動物の病原体が人に感染するようになるのかに、強い疑問を持ちました。その答えを探す中で、病原体の宿主域を規定する分子機構に興味を抱き、当時最先端の研究が行われていたHIV研究の世界に飛び込みました。大学院では、ウイルス感染を防ぐ細胞の蛋白質を解析し、その構造の違いが動物種ごとの感受性や抵抗性を規定していることを突き止めることができました。
「褐毛和種におけるBoLA-DRB3遺伝子の多様性解析」
◆ 小林朋子先生HP
◆主な業種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(2) 薬剤・医薬品
(3) 農業、林業、水産業
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 大学等研究機関所属の教員・研究者
(3) その他
◆学んだことはどう生きる?
卒業生の中には、家畜防疫官として、動物検疫所で働いている卒業生もいます。外国から輸入される動物や畜産物を介して家畜伝染病が侵入しないように、水際での検疫を行っています。卒業研究では、牛伝染性リンパ腫ウイルスの遺伝子型の判別法の開発と、ウイルス遺伝子の多様性について研究していました。農場で採血した血液から、ウイルス遺伝子を検出したり、抗体検査を行った経験は、業務でも生かされているそうです。また、研究を通して感染症制御の難しさや、国際的な家畜衛生の重要性を認識するようになり、現在の仕事につながりました。
動物科学科では、動物の生命現象や機能、行動と生産性に関する研究を行っています。特に動物衛生学研究室では、畜産学の知識を背景に、動物の病気をどう防ぐかを研究しています。基礎的な研究だけでなく、附属農場や現場での体験を通じて、実際に役に立つ研究を行っているのが大きな特徴です。
| Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 医学部です。特に、感染症が広がる理由をもっと知りたいので、疫学を専門にもう一度勉強したいです。 |
|
| Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? タイです。博士研究員として、研究のために1年弱滞在しました。文化や食事がとても気に入っています。 |
|
| Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 生態学の研究室で、シカの胃内容物の解析のお手伝いをしました。生態学の面白さと、難しいさに触れた、意義深いアルバイトでした。 |
|
| Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 動物園や博物館めぐりが好きです。 |
|
| Q5.好きな言葉は? 為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり |

