材料加工・組織制御工学

溶接・接合

強靭さと再利用性 相反する機能を持つ新たな接合体の設計


松田朋己先生

大阪大学 工学部 応用理工学科(大学院工学研究科 マテリアル生産科学専攻)

出会いの一冊

失敗学のすすめ

畑村洋太郎(講談社文庫)

本書はものづくりや研究に欠かせない「失敗から学ぶ姿勢」を説いた一冊です。失敗を単なる挫折として片づけず、「なぜ起きたのか」「どう防ぐのか」を考えることで、新しい知識や発想につなげられると強調しています。

金属疲労によるコメット機の墜落や、脆性破壊で沈んだリバティ船など、材料や溶接に関わる事例も紹介されており、私の分野でも講義で扱われます。こうした事例は、技術の発展が常に試行錯誤や反省の積み重ねによって築かれてきたことを実感させてくれます。失敗の歴史を糧に日々研鑽を積み、未来の成果へと挑戦する姿勢は、すべての学ぶ人に役立つはずです。ぜひ手に取ってみてほしい一冊です。

こんな研究で世界を変えよう!

強靭さと再利用性 相反する機能を持つ新たな接合体の設計

「つなぐ」技術が様々な製品を生む

スマートフォンや自動車は、実はいろいろな材料をつなぎ合わせて作られています。この「つなぐ」技術を溶接・接合といいます。

これまでの研究では、接合部分をナノサイズで細かく制御し、とにかく壊れにくくすることが目標でした。しかし環境やリサイクルを考えると、「強いけれど、必要に応じて分けて再利用できる」ことも求められています。

壊れる道筋をあらかじめ設計する

私の研究は、“強靭さ”と“再利用性”という新しい機能の両立をめざしています。着目したのは、ナノのような小さな世界に加えて、もっと大きなスケールでの構造のデザインです。

例えば、材料の一方をぎっしり詰まったものから、わざと小さな穴の多いものに変えてみました。すると意外にも接合部の強さや伸びが向上し、しかも分離・再接合もしやすくなることがわかったのです。つまり、壊れる道筋をあらかじめ設計することで、全体が脆く壊れるのを防ぎつつ、再利用につなげられるのです。私はこれを「階層的破壊誘導」と呼び、強靭さとリサイクル性という一見相反する機能の両立を目指しています。

穴だらけの材料? 失敗から生まれた発想

実は、この発想は実験の失敗から生まれました。間違えて「穴だらけの材料」を作ってしまったのですが、調べてみると今までにない良い結果が出て、思わず学生と一緒に喜び合いました。その発見を理論に落とし込み、新しい接合体の設計へと発展させています。失敗が新しい発見につながる瞬間は本当にワクワクしますし、それこそが研究の醍醐味だと思っています。

金属材料と炭素繊維強化樹脂からなる接合体(継手)の断面写真と強度特性の違い。樹脂側に多孔質の欠陥構造を入れることで、強度・伸びともに著しく上昇する。
金属材料と炭素繊維強化樹脂からなる接合体(継手)の断面写真と強度特性の違い。樹脂側に多孔質の欠陥構造を入れることで、強度・伸びともに著しく上昇する。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「階層的破壊誘導機構に基づく強靭かつ分離・再接合可能な異種材料接合体の創製」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
金属材料と炭素繊維強化樹脂の接合実験を行う学生の様子
※普段撮影するときは定点カメラです
金属材料と炭素繊維強化樹脂の接合実験を行う学生の様子
※普段撮影するときは定点カメラです
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 半導体・電子部品・デバイス

(2) 自動車・機器

(3) 鉄鋼

◆主な職種

(1) 生産技術(プラント系以外)

(2) 基礎・応用研究、先行開発

(3) 製造・施工

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

私が所属する専攻では、材料分野では近年急速に発展している3Dプリンティング技術に関する研究拠点を整備し、新たな材料の開発を積極的に進めています。一方、生産分野では、国内初の「熔接工学科」の伝統を受け継ぎ、我が国唯一の溶接・接合に関する総合研究所である接合科学研究所と強固に連携し、日本の接合研究を牽引しています。このように、材料と生産の両分野において高い自由度を持ち、世界最先端の科学技術の研究開発に取り組むことができます。

先生の研究に挑戦しよう!

世の中には多くの種類の接着剤があり、その成分や特性によって強度や用途に違いがあります。まずは代表的な接着剤について成分や特徴を調べてみましょう。さらに、接着強度を高める工夫の一つとして表面粗さに注目し、表面を荒らした場合に接着強度や壊れ方がどう変わるのかを調べてみましょう。その際には、硬い材料同士や硬い材料と柔らかい材料といった組み合わせも変えてみて、結果を比較しながら接着と壊れる仕組みを考えてみましょう。

中高生におすすめ

宇宙兄弟

小山宙哉(モーニングKC)

子どもの頃に描いた夢に、大人になってから再び挑戦する姿が描かれており、諦めずに夢や目標を持ち続けることの大切さを伝えてくれる作品です。特別な天才でなくても、発想を少し変えたり小さな工夫を重ねたりすることで課題を乗り越えていけることが示されており、その背景には「好きだからこそ真剣に向き合える気持ち」があると気づかせてくれます。

さらに、一人だけでなく仲間と支え合いながら挑戦する姿が繰り返し描かれ、大きな目標を実現するうえで協力の力が欠かせないことを実感させてくれます。これは研究や開発の現場にも通じるテーマであり、夢を持ち、工夫し、仲間と進むことが未来を切り拓く原動力になるのだと教えてくれる一冊です。


イシューからはじめよ

安宅和人(英治出版)

一見ビジネス書ですが、その考え方は研究や学びの場面にも役立ちます。大切なのは「どれだけ頑張るか」ではなく「何に力を注ぐか」を見極めることだと、この本は伝えています。

課題研究や発表を準備するとき、やることが多すぎて迷うことがありますが、本当に答えるべき問いを選び、それに集中すれば成果はぐっと変わります。やみくもに努力するよりも、仮説を立てて検証し、筋道の通った答えをつくる。このシンプルな姿勢は、日々の学び方や将来を考えるうえでもヒントになるので、一度手に取ってほしい一冊です。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

気持ちは医学ですが、間に合わないので材料学です。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

スウェーデンです。国民性が素晴らしく、自然豊かであったことから、とても住心地が良いと思います。

Q3.感動した/印象に残っている映画は?

子供の頃にテレビで視聴した『グリーンマイル』が印象に残っています。

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

旅先での温泉めぐりが楽しいです。


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