高分子・繊維材料

セルロースナノクリスタル

機能をアップ!開発した円盤状のセルロース粒子を蓄熱材に活用


毛利恵美子先生

九州工業大学 工学部 応用化学科 

出会いの一冊

化学の歴史

アイザック・アシモフ  訳:竹内敬一、玉虫文一(ちくま学芸文庫)

化学者でもありながら、特にミステリー作家としても有名な著者が、化学の歴史を古代から現代まで解説しています。簡潔な文体でユーモアを交えて解説しており、読みやすいです。錬金術から現代化学へどのように変遷したのかなど、化学の講義ではなかなか聞けない話が楽しく読めます。

また、化学は西欧諸国で発達したという印象を抱きがちですが、実際には西暦300年~1100年の西欧諸国における化学の空白を、アラビア諸国で蓄積された化学知識が補ったことにも言及しており、良心的な印象を受けます。

こんな研究で世界を変えよう!

機能をアップ!開発した円盤状のセルロース粒子を蓄熱材に活用

「コロイド化学」に興味

私自身は、大学で高分子化学を専攻しました。就職後に無機物質から作る液晶というものに触れたことで、有機物・無機物という枠組みではなく、大きさや形が重要な意味を持つ「コロイド化学」という学問分野に興味を持っています。

CNCを高分子で包んだり、高分子をCNCで包んだり

最近は、セルロースナノクリスタル(以下CNCと略)に興味を持ち、研究を行っています。これは、ナノスケールの太さを持つセルロースの棒状粒子で、液晶にもなることが知られています。

ただ、CNCは水中では液晶状態にもなるのですが、そのほかの溶媒とは均一に混合することも難しいのです。そこで、粒子の中にCNCの液晶を閉じ込めてしまえばよいと考えました。実際に実験を行ってみると、CNCを高分子で包んだり、高分子をCNCで包んだりできることがわかりました。

予想外の円盤状の粒子

ある時、高分子の両末端に二重結合が付いたような構造の高分子を使用してみました。これまでと似たようなものができると予想していたのですが、赤血球のような円盤状の粒子ができました。一般には球状になることが多く、円盤状の粒子ができるのは珍しいのです。

このように、研究をしていると予想外のことが起こります。人間の頭で考えることの限界を知る楽しい瞬間です。

この円盤状の粒子を何かに使えないかと考えたところ、使用していたポリエチレングリコールは蓄熱材としても利用されていることを知りました。蓄熱材を粒子にすると表面積が増え、熱の出入りがスムーズになると期待できますが、円盤状の粒子は球状よりもさらに比表面積が大きいので、よりその効果がでるのはないかと考え、現在研究を進めています。

円盤状粒子の顕微鏡画像(左)粒子の向きを電場で制御できることを示した図(右)
円盤状粒子の顕微鏡画像(左)粒子の向きを電場で制御できることを示した図(右)
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

私の専門は高分子化学ですが、あたらめて振り返ってみると「『コロイド』はよくわかっていないことが多くて面白いよ」と化学の先生に言われたのがきっかけではないかと思います。

高分子は分子ですが、サイズが非常に大きいので、その溶液は「分子コロイド」とも呼ばれます。高分子は分子でありながら、通常の分子とは桁違いの大きさなので、分子の世界とは全然違う現象が起こることがあり、それがとても面白いと思っています。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「蓄熱機能を有するセルロース系高次異方性円盤状カプセルの集積による熱特性の制御」

詳しくはこちら

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円盤状粒子の論文が学術雑誌の内表紙として選ばれました
円盤状粒子の論文が学術雑誌の内表紙として選ばれました
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品

(2) 半導体・電子部品・デバイス

(3) セラミクス、ガラス、炭素

◆主な職種

(1) 製造・施工

(2) 生産管理・施工管理

(3) 品質管理・評価

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

一九八四年

ジョージ・オーウェル 訳:高橋和久(ハヤカワepi文庫)

1949年に発表されたSF風社会派小説。60年以上も前の社会情勢を批判した小説なのに、現在読んでも驚くほど当てはまることが多い!

これは、この小説が本質的に重要なことを語っているということと同時に、人間社会がそれほど変わっていないということも意味していると思います。本書の「正気かどうかは統計上の問題ではない」という言葉は、多数派に流されがちな世の中で、個人の思考や独創性をきっと支えてくれるのではないでしょうか。


今そこにある危機(映画)

原作:トム・クランシー

1994年のアメリカ映画で、10代のころに見ました。CIA情報アナリストのジャック・ライアンが活躍するシリーズのうちの1作ですが、ラストシーンで主人公が静かに言い放つ”I don't dance.” というセリフが忘れられません。長いものにまかれてはいけない場面があることを、時々思い出させてくれます。


ラッセル教育論

バートランド・ラッセル 訳:安藤貞雄(岩波文庫)

受験生は、著者の名前に心当たりがあるのでは?数学者でもあり哲学者でもある著者の言葉は、多くの英文読解の問題になっています。

ラッセルは、『幸福論』の方が有名ですが、公教育が一般的でなかった時代に、教育がなぜ必要なのかを論じた教育論を私はお勧めします。若いときは自分のことばかり気になる傾向があるものですが、「広い見識を持つことが相対的に自分自身への執着を減らし、結果的に幸福をもたらす」という趣旨の言葉にはっとしました。

一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

イタリア。どこに行っても美味しく楽しい。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

Joji/Glimpse of Us

Q3.感動した/印象に残っている映画は?

『ロスト・キング 500年越しの運命』(2022)

Q4.好きな言葉は?

Every cloud has a silver lining. (どの雲にも銀の裏地がついている→どんな悪いことにも良い面がある。)


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