電子・電気材料工学

熱電変換

半導体デバイスからの排熱を、2次電池に蓄電して再利用するシステム


出浦桃子先生

早稲田大学 基幹理工学部 電子物理システム学科(基幹理工学研究科 電子物理システム学専攻)

出会いの一冊

マンガでわかる脱炭素カーボンニュートラル

藤野純一(池田書店)

カーボンニュートラルという言葉がはやっていますが、具体的にどういうことなのかよく知らない方も多いのではと思います。カーボンニュートラルとは何か、なぜ必要か、具体的な取り組みについて、などがマンガでわかりやすく書かれています。興味を持ってもらう入口の本としておすすめです。

こんな研究で世界を変えよう!

半導体デバイスからの排熱を、2次電池に蓄電して再利用するシステム

半導体を利用したりAIを活用するほど、大量の熱が発生し捨てられる

半導体デバイスは、スマホやLED照明、家電に電車と、まさにどこにでも使われていて、いまや我々の生活に欠かせなくなっています。最近ではAIを活用している人も多いでしょう。

でもスマホもLEDも使っていると結構熱くなりますよね。しかも皆さんがAIを活用するほど、世界で動いているデータセンターは発電所並みのエネルギーの熱を発しています。発生した熱はただ環境に捨てられるばかりか、機器を冷却するのに新たに大量のエネルギーを消費しています。環境問題が深刻なのに、こんなのもったいないですよね。

半導体デバイスと熱電デバイスを1つのモジュールに

そこで私は捨てられてしまう排熱を何とか有効利用したいと考えて、熱を電気に変換する熱電変換に着目しています。半導体デバイスからの排熱を熱電変換し、2次電池に蓄電して再利用するシステムを提案しています。

ここで重要なのは、半導体デバイスと熱電デバイスを1つのモジュールにまとめることと、そのために2つのデバイスを同じ材料系で作るということです。

白色LEDなどに用いられている窒化物半導体は、実は熱電材料としても有望です。というのも、通常は半導体は原子を規則的に配列した結晶でなければいけませんが、その配列が乱れた状態(特異構造と呼んでいます)をうまく利用することで熱電変換性能が向上することがわかっており、窒化物半導体は特異構造を作るのに有利だからです。今は、窒化物半導体熱電結晶を作る技術の開発、熱電特性の解明、熱電デバイスの作製に取り組んでいます。

左:結晶を作る過程(結晶成長)の模式図。多くは真空中で原料気体を供給し、結晶の種(基板)と原料を加熱することで、原料が分解した分子や原子が基板表面に吸着して、固体化して結晶になります。
右:横型熱電デバイスの模式図。電気伝導性の異なる2つの半導体結晶(または半導体結晶と金属)を短冊状に加工し、交互に配置して、直列接続するように端部を金属で接続します。短冊の両端に温度差が発生すると、電圧・電流が発生するゼーベック効果を利用して、熱エネルギーから電気エネルギーに変換します。現状では十分な電圧を得るのに必要な短冊が数万本程度と非常に多いのが課題です。
左:結晶を作る過程(結晶成長)の模式図。多くは真空中で原料気体を供給し、結晶の種(基板)と原料を加熱することで、原料が分解した分子や原子が基板表面に吸着して、固体化して結晶になります。
右:横型熱電デバイスの模式図。電気伝導性の異なる2つの半導体結晶(または半導体結晶と金属)を短冊状に加工し、交互に配置して、直列接続するように端部を金属で接続します。短冊の両端に温度差が発生すると、電圧・電流が発生するゼーベック効果を利用して、熱エネルギーから電気エネルギーに変換します。現状では十分な電圧を得るのに必要な短冊が数万本程度と非常に多いのが課題です。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

中学高校の頃、就ける仕事の選択肢が広そうと思って理系を目指し、大学では、理学部より実生活に貢献できそうと思って工学部に進学しました。モノの中を電子が流れているのを想像したら面白そうで電子工学に進み、結晶成長が面白そうと思って研究室を選びました。物理と化学の両方の素養を学べると思ったのが魅力的だったのと、「結晶成長」という言葉がいかにも何かを作っていそうで楽しそうと思ったからです。人生は「面白いと思えるか」で選ぶとよいと思います。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「半導体デバイス排熱の有効利用に向けた窒化物半導体の熱電特性解明と性能向上」

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超高真空(非常に低い圧力)下で窒化物半導体を結晶成長する装置の前で、学生と。身長よりも大きな装置を使って実験します。
超高真空(非常に低い圧力)下で窒化物半導体を結晶成長する装置の前で、学生と。身長よりも大きな装置を使って実験します。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

◆主な職種

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

早稲田大学基幹理工学部では、学系という大きめの枠で入学し、2年生進級時に学科に配属されます。1年生のときに基礎をじっくり学びながら、志望する学科を選ぶことができます。私の所属する電子物理システム学科は、量子論などのがっつり物理系の研究室から、私のような材料・デバイスの研究室、さらには回路や通信、システム系の研究室まで、研究の幅広さが自慢です。必ず自分の興味に当てはまる研究が見つかると思います。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

ブラック・ジャック

手塚治虫(少年チャンピオン・コミックス)

医療漫画としても面白いですが、人間とは何か、人はどうあるべきか、といったことを深く考えさせられる物語だと思います。私はブラック・ジャックを読んで医者に憧れ、やはりブラック・ジャックを読んで医者を目指すのをやめました。医者の功罪を考えさせられたからです。


青い光に魅せられて 青色LED開発物語

赤﨑 勇(日本経済新聞出版)

青色LEDの発明で2014年にノーベル物理学賞を受賞された赤﨑先生が、ご自身の人生を幼少期から語られた内容がまとめられています。1つのことに集中して取り組まれる面は、研究者としてこうありたいと思わされます。一方で、人生とは不思議なご縁で導かれていくものだということも感じられます。なお、幼少期の部分では戦争の話も出てきますので、若い方にはぜひ読んでいただきたいです。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

歴史も好きだし、政治も興味あるし、やっぱり医療系に進めばよかったかな、などと色々考えますが、結局また電子工学を選ぶ気がします。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

日本大好き!なので、できれば日本にいたいですが、引退したら気候のよさそうな南欧とかオーストラリアとかいいかもしれません。

Q3.感動した/印象に残っている映画は?

バック・トゥ・ザ・フューチャー:3部作の話の作りこみに感心した。
猿の惑星:結末にそう来たかと驚愕した。

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

オーソドックスですが、塾講師をしていました。高校までの勉強の復習にもなりましたし、わかりやすく説明する能力や、保護者(年上の方)とお話しする能力など、色々な力が身についたと思います。

Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

元保護犬と暮らしているので、犬と過ごすことと、保護犬猫に関する活動。

Q6.好きな言葉は?

明日やれることは今日やる(実現はできていない)


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