生物物理学

細胞骨格

小さな役者「細胞骨格」はどうやって大きな細胞を動かしているのか


藤原郁子先生

長岡技術科学大学 工学部 工学課程 物質生物工学分野

出会いの一冊

生物と無生物のあいだに

福岡伸一(講談社現代新書)

研究のお話だけでなく、ニューヨークやボストンでの著者の生活や研究の様子、そして著者の哲学もたくさん書かれているので、まだ研究を始めていない人でも楽しめます。

生物系に進んだ人は、実験を始めて1年ほど経ってからもう一度読むと、改めて科学の面白さを感じられる一冊です。小さな無生物であるタンパク質たちが互いに働きかけ、新陳代謝しながらも調和したダンスを繰り広げ、細胞の生命活動を支える様子が描かれています。

こんな研究で世界を変えよう!

小さな役者「細胞骨格」はどうやって大きな細胞を動かしているのか

アクチンが働くしくみ 

細胞は、じっとしているだけではなく、形を変えたり、外からの刺激に応じて移動したりします。その力の源は「細胞骨格」という、細胞の中で働く小さな役者たちです。もし教室を細胞と見立てるなら、その大きさは消しゴムのかけらくらいにすぎません。

その中でもアクチンというタンパク質は、互いにつながって糸のような繊維をつくり、教室ほども大きな細胞を押したり、繊維をほどいて細胞を動かしたりしていますが、その制御のしくみは未だ解明されていません。

顕微鏡で見る分子のダンス

アクチンや、その細菌版ともいえるMreBという細胞骨格タンパク質が、どのように力を生み出し、細胞を動かしているのかを研究しています。そこで活躍するのが「TIRF顕微鏡」という特別な顕微鏡です。ふつうは見えない1本1本の繊維が、伸びたり縮んだり揺らぐ様子をリアルタイムで観察できます。分子がまるで生きているかのように動き出す瞬間に立ち会えるのは、とてもワクワクします。

さらに、光を当てると形が変わる分子にも注目しています。光をスイッチのように使うことで、アクチンやMreBの動きをオン・オフできるのです。もし細胞の力を自由に操れるようになれば、がん細胞の広がり方や免疫細胞の働きを理解する新しい手がかりになるでしょう。タンパク質を部品のように組み合わせ、動く人工の“マイクロバイオマシン”をつくることも夢ではありません。

精製したタンパク質の動きを蛍光顕微鏡で観ています。
精製したタンパク質の動きを蛍光顕微鏡で観ています。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

驚きが私の研究の原点

最初は筋肉を使った研究をしていました。けれども大学院で、「リステリア菌」が宿主のアクチン重合を利用して細胞内を動き回ることを知り、さらにその現象を精製したタンパク質だけで再現できたという論文を読み、衝撃を受けました。生きものではないものが、まるで生きもののように動き出す! その驚きが私の研究の原点です。

人との出会いが研究を育てる

私の研究は「偶然の出会い」と「人とのつながり」から広がってきました。居場所を失いかけた時に出会った先生を通じて、光で分子を操作する技術に触れました。初めての環境で目を回していた時、マントを着て鈴を鳴らしながら励ましてくれた先生を通じて細菌のアクチン様分子MreBの研究にも携わりました。みなさんも、思いがけない出会いが人生を変えるかもしれません。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「光応答性タンパク質によるアクチン細胞骨格のナノマイクロシステム制御の理解」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
大腸菌を使ってタンパク質を準備するので、クリーンベンチは大活躍です。
大腸菌を使ってタンパク質を準備するので、クリーンベンチは大活躍です。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 薬剤・医薬品

(2) 光学機器

(3) コンサルタント・学術系研究所

◆主な職種

(1) 技術系企画・調査、コンサルタント

(2) 設計・開発

(3) 品質管理・評価

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

小さな分子から動く細胞を創り出すという、他大学にはあまりない挑戦的な研究ができます。

タンパク質は樹脂を使って精製します。相談しながら実験を進めます。
タンパク質は樹脂を使って精製します。相談しながら実験を進めます。
先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

ゴールデンカムイ

野田サトル(ヤングジャンプコミックス)

金塊を追いかけるように、研究もまた、分子や細胞の動きという“見えない世界”を観察しながら、細かい手がかりをつなぎ合わせてしくみを理解していく作業です。

しかも、研究者もタンパク質も、登場人物のように多面性があり、一見ふざけて見える行動の裏には、実は深い知識や観察力が隠れていることもあります。研究の面白さは、こうした謎解きや人との出会いのワクワク感にも似ているのです。


科学をアートで見てみたら

ロイク・マンジャン 木村高子:訳(原書房)

美しい作品を見ながら科学についても考えられるので、1冊で2度おいしいです。分子や細胞にも、アートのような美しさと複雑さがあります。この本は科学全般について扱っていますが、アートの美しさや作者の精緻な意図を通して、科学の不思議や新しい発見を感じられます。


生命の根源を見つめる (知のフィールドガイド)

東京大学教養学部:編(白水社)

各著者が行った研究成果をもとにしているため、実験の様子が目に浮かび、まるで自分もその場にいるようです。また、身近な問題にも繋げられており、「なるほど!」と気づかされる一冊です。さらに、時には著者の進路の迷いも紹介されていて、学びのヒントや勇気をもらえます。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

社会の役に立つことを説明しやすい学問

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

イタリアのサレルノ。人が優しく御飯も美味しい。歴史もあり美しく穏やかな街だから。

Q3.一番聴いている音楽アーティストは?

King Gnu ねっこ

Q4.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

マンガ派で、ゲームはしていませんでした

Q5.好きな言葉は?

こつこつ


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