ナノマイクロシステム

自律思考システム

マイクロチップの上に小さな「人工脳」を創る


吉田昭太郎先生

中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科(理工学研究科 電気電子情報通信工学専攻)

出会いの一冊

脳の中の幽霊

V・S・ラマチャンドラン、サンドラ・ブレイクスリー(角川文庫)

古い本ですが、内容は色褪せていません。私が高校生のころに読んで、将来は脳科学(神経科学)の研究者になろうと決めた本です。

人はなぜ考えられるのか、脳とは何なんだろう、という疑問が尽きなくなる名著です。科学の本のような難しさも感じるかもしれませんが、文学作品としても非常に優れているところが他の神経科学の一般書と一線を画するところかと思います。

おそらく人生において出会ったことのない脳の不思議と出会える豊富なエピソードと、それに取り組む研究者の凄さを味わえるので、脳に興味のある高校生はぜひ読んでみると刺激を受けられると思います。

こんな研究で世界を変えよう!

マイクロチップの上に小さな「人工脳」を創る

人工的に脳内物質の組み合わせたら

「なぜ人は考えられるのか」という謎に、私は中高生の頃から魅了されてきました。思考が脳内の物質の組み合わせで生まれるなら、人工的にその物質を組み合わせることで、人間のように考える機械も創れるはずです。

さて、考える機械という意味では、現代の人工知能(AI)も一部で人間を凌駕するほど優れています。しかし、莫大な電力消費が必要で、地球の限りある資源の消費と気候変動を加速させる恐れがあります。いつか使えなくなってしまうかもしれませんし、いつの間にか地球が人類の住めない星にもなりかねません。

そこで、急激な気候変動を起こさずに、数十万年ものあいだ物質を循環させながら持続してきた「人の思考」が重要です。つまり細胞やタンパク質などの有機物質からなるイオン回路でAIを構築できれば、それもまた人のように持続可能なのではないでしょうか。

人間と同じ物質から成る自律思考システム

現在、私はこの構想を実現すべく、マイクロチップの上に小さな「人工脳」を創る研究を進めています。

有機物質を微細加工すると、情報を読み書きする電気的なセンサーや物質輸送を行うイオン回路を構築できます。そのような脳内に似た環境をチップ上に集積化し、生きた脳細胞を培養して脳のように育てるのです。

実用化には時間を要しますが、人間と同じ物質から成る持続可能な自律思考システムが、環境と共存しながら進化するAIの未来を拓く鍵になるかもしれないと考えて、大学生や大学院生と一緒に毎日技術開発を進めています。

実験室の様子。生物を扱う細胞培養設備、化学物質を扱う設備、電子材料を扱う加工設備が整っている、異分野融合型の研究室です。
実験室の様子。生物を扱う細胞培養設備、化学物質を扱う設備、電子材料を扱う加工設備が整っている、異分野融合型の研究室です。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

中学生の頃は心理学に興味があって、図書館でいろいろな本を読んでいました。ところが、上記でおすすめした『脳の中の幽霊』に出会って、自分は神経科学に興味があるのだと気づきました。

さらに大学に入って、自分は神経科学に興味があるのではなく、脳神経が知能や精神を実現している電気的なシステムに興味があることに気づき、電気電子情報工学に専攻を変えました。最後に大学院になって、電子工学と神経科学が交差する現在の研究テーマに出会いました。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「有機イオントロニクスで拓く神経-グリア回路の一細胞レベル生体模倣システム」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
夏のオープンキャンパスでの研究室一般公開の様子。研究室で開発している様々な技術を、大学生と大学院生が高校生にわかりやすく説明します。大学生活に関する疑問・質問にも答えます。
夏のオープンキャンパスでの研究室一般公開の様子。研究室で開発している様々な技術を、大学生と大学院生が高校生にわかりやすく説明します。大学生活に関する疑問・質問にも答えます。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 半導体・電子部品・デバイス

(2) 電気機械・機器(重電系は除く)

(3) 医療機器

◆主な職種

(1) 基礎・応用研究、先行開発

(2) 設計・開発

(3) システムエンジニア

◆学んだことはどう生きる?

生物のような有機物質をどのように小さく加工して電子工学に活かすかという研究をしていますので、当然、半導体微細加工技術の基礎をしっかり学ぶことになります。現代の電子産業では半導体微細加工技術の進展はなくてはならないものですので、卒業生は半導体電子産業へ就職することが多いです。電子回路や半導体工学は一朝一夕では身につかない難しい技術ですので、そのような専門知識を得た人は普通の人では就けないような技術・研究職に関わっています。

先生の学部・学科は?

電気電子情報通信工学科では、現代社会で欠かすことができない、電気・電子・情報産業の根幹となる基礎知識を学ぶことができます。このような技術はどこでも必要になるため、非常に就職には有利です。

さらに中央大学では、他の大学では珍しい「生物・医学」と電気・電子・情報工学の融合領域を学べるのが特色です。特に生き物のように柔らかい電子機械、生き物を材料として使う電子機械、生き物と融合して機能する電子機械を全て学べる大学は非常に希少です。

先生の研究に挑戦しよう!

細胞やタンパク質をはじめとして、様々な生き物のシステムを人工的に創出する技術として「合成生物学」という分野が進んでいます。さまざまな広がりのある分野ですが、今年の段階でどのようなところまで最先端研究が進んでいるか、興味を持ったテーマを一つ選んで調べてみましょう。

中高生におすすめ

向上心

サミュエル・スマイルズ(知的生きかた文庫)

怠惰になるのは簡単だが、それでも人生には人生を賭けるほどの仕事が必要である、というようなことを学べると思います。高校生くらいの純粋な頃に、いわゆる説教のような本の内容を素直に受け止めて、本気で何かに取り組む経験ができるのもよいと思います(私が高校の頃読んで、これで発奮して東大受験を決めた本です)。といっても、さらに年を重ねると、人生そればかりでもないということも思うようになるかもしれません。


嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え

岸見一郎、古賀史健(ダイヤモンド社)

人生を生きる上で避けられない「他の人との関わり方」について考えを深められると思います。自分の幸せとはなんだろう?どうやって生きていけばいいんだろう?と悩む人にお勧めしたいです。

ですが、こちらはもしかすると少し大人になって、迷いが生じてからの方が読みやすいかもしれません。私はある程度大人になってから読みましたが、これまで考えて感じてきたことがわかりやすく表現されているように思い、先にこの本を読んでおくのもよいかと感じました。


SHIROBAKO

P.A.WORKS

一転して、アニメ好きな高校生をはじめとして誰でも見やすい、仕事に関わるアニメーション作品をオススメします。アニメーション製作の現場を舞台に、ものづくりに関わる仕事をする人たちがどのように困難を乗り越えるのかが描かれています。

一見アニメ愛好家のための柔らかそうな作品に見えると思いますが、描かれている内容は硬派で、仕事をするとはどういうことなのかについて深い洞察を得られると思います。

一問一答
Q1.感動した/印象に残っている映画は?

『この世界の片隅に』

Q2.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

マジック・ザ・ギャザリング

Q3.大学時代の部活・サークルは?

学園祭実行委員会

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

育児


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