ナノ構造化学

有機・炭素材料

光から、熱、そして電気へ やわらかい有機・炭素材料で拓く発電の未来


野々口斐之先生

京都工芸繊維大学 工芸科学部 応用化学課程(工芸科学研究科 材料創製化学専攻)

出会いの一冊

こんな研究で世界を変えよう!

光から、熱、そして電気へ やわらかい有機・炭素材料で拓く発電の未来

捨てられている熱から電気を生み出す「熱電変換」

私たちの身の回りには、使いきれずに捨てられている「熱」がたくさんあります。例えば、エンジンやパソコン、さらには私たちの体からも熱は出ています。このように使われずに逃がしてしまっている熱から電気を生み出す「熱電変換」は、再生可能エネルギーの一つとして近年注目されています。これまでの熱電材料は、硬くて重い金属や無機半導体が主流でしたが、もっと軽くて柔らかい材料が使えれば、服に貼ったり、曲面に装着したりと、活用の幅がぐっと広がります。

世界初 安定な有機熱電材料を開発

私は2011年に大学の研究者になったとき、フレキシブルな有機材料を使った熱電変換の研究に飛び込みました。

熱電発電を行うには、電子が運ばれる「n型」と、正孔(電子の抜けた穴)が運ばれる「p型」の2種類の材料を組み合わせる必要があります。当時この分野は大部分が未開拓で、なかでも、熱を加えると電子が冷たい側へ移動する「n型」材料は、有機物ではほとんど見つかっておらず、チャレンジする人も多くはありませんでした。でも、だからこそやる価値があると思ったのです。

その後、軽くてフレキシブルな特性を持つカーボンナノチューブを使い、世界で初めて安定なn型有機熱電材料を開発し、熱電変換の新しい道を切り開くことができました。電子を与える化合物を使い、その分子構造を工夫して電気の流れやすさを調整する「ドーピング」の手法を確立しましたが、ここでは、どんな分子をどのように組み合わせるかという化学の力が、材料設計のカギとなりました。

さらに新たな赤外線センサーの開発にも成功

さらに最近では、ナノチューブの「赤外線を吸収する」性質を活かして、熱電変換と組み合わせることで、赤外線に応答して電気を生む赤外線センサーの開発にも成功しています。赤外線センサーがあれば、物を壊さずに中身を調べる「非破壊検査」や、人の体温を検知して自動で反応するシステムなどに応用できます。災害時の人命救助や、安心・安全な暮らしにも役立つ技術です。

もともと私は、学生時代にノーベル化学賞でも話題となった「量子ドット」の光の性質を研究していました。この光化学と熱電変換、すなわち、異なる分野の知識を活かして、今までにない技術を生み出す。それが研究の面白さのひとつだと思います。

左:熱電変換材料を用いたデバイス作製の様子 
右:熱電変換に用いる半導体型カーボンナノチューブの分散液。炭素でありながら黒色ではなく、写真の液体はワインレッドを呈しています。
左:熱電変換材料を用いたデバイス作製の様子 
右:熱電変換に用いる半導体型カーボンナノチューブの分散液。炭素でありながら黒色ではなく、写真の液体はワインレッドを呈しています。
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中高生におすすめ

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「バッタ」にすべてを賭けた勇敢な研究者のエッセイ。ノンフィクション……? 研究者の日常は小説以上にドラマチック。姉妹本『バッタを倒すぜアフリカで』もぜひ。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

建築か土木工学です。街づくりにも興味があります。

Q2.大学時代の部活・サークルは?

軟式野球部

Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

一度だけですが、ビル工事の深夜アルバイトを経験しました。京都一の繁華街・四条河原町で片側車線を止めて工事を行い、普段とは違う京都の姿に触れられたのが面白かったです。

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

最近は少しずつ歴史を勉強し直しています。学生時代に習った内容と定説が変わっていたり、著者ごとに異なる仮説が語られていて、新しい発見があって面白いです。特に、考古学の研究アプローチには強い興味を持っています。


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