哺乳類の脳だけが持つ、大脳皮質はどう進化してきたか
ヒトの脳の大部分を占める大脳皮質
私たちヒトの脳の大部分を占める領域、それが「大脳皮質」と呼ばれる部分です。大脳皮質は哺乳類に独自の脳の領域ですが、この大脳皮質が哺乳類の歴史の中でいつ誕生し、どのようにして進化してきたのか、未だ大きな謎に包まれています。
様々な動物の脳の発生プログラムを比較
一方、胎児の時期では、様々な動物の脳のかたちや細胞の構成は驚くほど似ています。これは、脳をつくる「共通のプログラム」がすべての動物にあることを意味しています。そのプログラムを土台にして、哺乳類に独特の大脳皮質が進化したと考えられます。私はこの謎を解くため、様々な動物の大脳の発生プログラムを比較する研究を行っています。
研究室ではマウス、ニワトリ、そしてヤモリやカメなど、いろいろな動物の胚を実験対象にしています。胚を顕微鏡で観察し、遺伝子を導入したりすることで、脳の発生プログラムがどのように変化するのかを解析し、哺乳類に独自の脳の発生プログラムを明らかにしようとしています。
化石人類のDNAから、ヒトの進化の研究も
さらに最近は、ヒトの進化の研究にも取り組んでいます。今から約4万年前に絶滅したネアンデルタール人やデニソワ人と呼ばれる人類は、私たち現生人類とは異なる解剖学的な特徴を持っていました。
2022年にノーベル生理学・医学賞を受賞したスバンテ・ペーボ博士らの研究により、絶滅した人類のゲノムDNAの情報がわかりました。研究室では現在、化石人類に特徴的なタンパク質の違いが個体発生にどのような影響を与えるのかを研究しています。
小さな頃から医学に興味があり、将来は医師になりたいと思っていました。でも高校時代は応援団や生物部の活動に明け暮れてあまり勉強しませんでした。理学部の生物学科に入って3年目に、分子遺伝学の講義を聴いて感動し、分子生物学に目覚めました。
大学院から脊椎動物の神経発生学の研究を始めたのですが、実は分子生物学よりも、顕微鏡の下で小さな組織片を移植する「胚操作」が得意なことに気が付きました。今でもいろんな動物の胚をみるとワクワクします。
「多階層的比較解析による興奮性神経細胞の進化起源の解明」
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「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」
京都工芸繊維大学の応用生物学系ではバイオテクノロジーを基盤とした基礎・応用研究を行っています。
細菌や酵母などの微生物、癌細胞、植物やカイコ、ショウジョウバエなどの昆虫、さらにマウスなど多様な生き物を扱っており、分子生物学、細胞生物学から生態学、進化学といった、ミクロからマクロまで幅広い生物学の分野を学べることも特徴です。
松ヶ崎、嵯峨キャンパスは京都北部の風光明媚な場所にあり、古都の暮らしを満喫できます。
いろいろな脊椎動物の胚を集めて、形態的な違いや骨格の違いを比較することで、解剖学的な多様性について調べることが可能です。高校生でも入手しやすい材料として、ニワトリやウズラ、また養殖されているスッポンやカモの有精卵があります。
胚の大きさやかたちを比べることにより、種に固有の発生時間とその法則がわかるかもしれません。また温度を変化させたとき、発生はどうなるのか、まだわかっていないことも多いので、調べてみると面白い結果が出るかもしれません。
骨を染色する「透明骨格標本」は、工夫すれば高校の理科室にある試薬でも行うことができます。文化祭の展示でも人気が出そうです。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 人類学 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? BEGIN 。ファースト・アルバム収録の「流星の12弦ギター」という曲がお気に入りです。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? うたごえサークル、ギタークラブ、生物研究会 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 模型製作 |
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Q5.好きな言葉は? 生き物は必ず生きる道を探す(『ジュラシック・パーク』に登場する数学者イアン・マルコム博士の言葉) |