がん細胞がリボソームを作り替えて増殖! 創薬にもつながるリボソーム研究
リボソームはみんな同じ、ではなかった
「核小体」「リボソーム」:高校生物の教科書で最初に登場するこれらの細胞内構造体に注目して私たちは研究をしています。
ご存知の通り、リボソームはmRNA情報からタンパク質を作る「タンパク質合成装置」、そして核小体はリボソームを組み立てる「リボソーム合成工場」です。真核生物では一つの細胞にリボソームが100~1000万個(!)あると言われ、全部のリボソームが同じ形と機能を持つ、いわば機械として考えられてきました。しかし最近になって、細胞内には少しずつ形と機能が違うリボソームの存在が発見されたのです。
「がん」を特徴づけるリボソームに注目
-もしかしたら病気の原因になる異常なリボソームが存在するかもしれない-
リボソームは80種類のタンパク質と4種類のリボソームRNA(rRNA;これも教科書に載っていますね)から作られています。ここで、少しずつ違うリボソームが存在するならば、例えば「がん」を特徴づけるリボソームもあるのでは?と思いつきました。
実際にいくつかのがん細胞でリボソームを構成するタンパク質を調べてみると、がんの種類によって特徴的なタンパク質がリボソームに含まれており、正常の細胞とは違った翻訳をしていることを見出しています。
私たちが病気の時に摂る抗生物質のほとんどは原核生物のリボソームを標的としています。ということは、もしかしたらがん細胞のリボソームを標的とした薬も可能なのかもしれません。
-リボソームが違うということは工場での作り方も違うのでは?-
上記の研究から、がん細胞にはリボソーム合成の秘伝のレシピがあって、それを元にリボソームを作り替えているのでは、とも考えられます。そこで現在では核小体でのリボソーム組み立て機構の違いについても研究を進めています。
近年の生命科学研究ではコラボレーションが重要
私自身はタンパク質やRNAについて研究する「分子生物学」を専門としています。しかし、がんなどの医学部的な研究、将来的な創薬に必要な薬学部的な研究は分野外です。恵まれていることに理系学部からなる徳島大学には様々な分野で著名な研究者が数多くいます。そこで同世代の各分野の専門家とタッグを組むことで、一人では難しい研究をみんなで推し進めています。
中学生の時に英語が好きだったので、将来は英語教師になろうと思い、高校では英語教育に力を入れている文系私立大学の附属高校(正確に言えば附属ではありませんが…)にいきました。しかし、高校2年生のときにアルバイトでやっていたファミリーレストランのキッチンの仕事がすごく楽しくて、将来はレストランなどのメニュー開発がしたいと思いました。そこで色々と調べてみると食品関連=農学部!と分かったので、高校3年生の時に理転をしました。
もちろんそんなに人生甘くありませんので、1年間予備校でお世話になり、東京農工大学農学部に進みました。しかし、食品化学の講義がどうも私には難しかった(?)こと、たまたま配属された分子生物学的な研究室での研究と技術開発がとても面白かったことから、今に至っています。
研究に限らず何でもそうだと思いますが、やってみるとどれも面白いことが多いです。まずは気になったことを自分で調べて、自分でやってみる力をつけてください。
「簡便なリボソームインタラクトーム解析法によるMyc依存的ながん原リボソームの同定」
私は徳島大学の中でも先端酵素学研究所という研究所に所属しています。大学は教育機関でもあり研究機関でもありますが、附置研究所に分類される先端酵素学研究所では研究業務がメインです。いわゆる学部ではないため大学生がほぼおらず、所属しているスタッフの多くは大学教員や技術職員です。しかし研究に興味がある大学生が自発的に研究室を訪問して実験を行ったり、修士課程・博士課程の大学院生が修士号・博士号取得に向けて最先端の研究を行ったりしています。
大学の研究と聞くと難しいイメージがあります。確かに難しいのですが、その難しい研究を色々な人と相談しながら開拓して前に進み、そして誰もまだ見つけていない世界で初めての発見をしたワクワク感は、一度味わうと病みつきになります。ぜひ先端酵素学研究所のウェブサイトを見て、もし何か興味を持ったり気になることがあったら、その先生に連絡を取ってみてください。
国立大学法人徳島大学先端酵素学研究所のHP:https://www.iams.tokushima-u.ac.jp/
吉川治孝先生のメールアドレス:yoshikawa.harunori(@tokushima-u.ac.jp をつけてください)
他学部の先生方と一緒に運営している研究クラスターでは、その活動の一環として小学生向けに「食品からのDNA抽出」や「がん組織の観察」といったイベントを行いました。https://www.iams.tokushima-u.ac.jp/2023hirameki_tokimeki/
「がん」と聞くと怖い病気というイメージがありますが、正常な状態と病気(がん)の状態の組織を観察することで、健康(病気)に細胞がどのように関わっているのかを考えたり、また生きているものなら必ず「DNA」が含まれていますので、食べ物からDNA を取り出す実験をすることで、生物間での DNA の違い・遺伝子とは何かを考えたりするイベントです。食べ物からDNAを取り出す実験はキットが市販されていて家で簡単にできますので、ぜひやってみてください!
ちなみにこのイベントは小学生向けにはしていますが、実は大学や企業で実際に行なわれている生命科学研究の一部とほぼ変わりありません。実験は難しいと思われがちですが実験自体は料理ととてもよく似ています。実際に料理のレシピ本があるように実験のレシピ本があるので、慣れてしまえばできてしまいます。
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ(新潮文庫)
日本と英国は同じ島国ですが、ほぼ日本人しかいない日本に対して、英国は非常に多くの移民からなる多民族国家です。LGBTQなどの理解も非常に進んでいて、実際に私の英国時代の同僚にはアメリカ出身のゲイカップル、イタリア・スペイン出身のレズビアンカップルがいました。しかもアメリカ出身のゲイカップルは現地スコットランドの子どもを養子にとって育てています!
多様性は新しいものを産み出すのに非常に重要です。実際に私が在籍していた大学の研究所では半分以上が英国以外の出身でしたし、この多様性が最先端の生命科学研究を支えていたと思います。しかし、もともとその土地に住んでいた英国人はその現状をどのように思っているでしょうか?また移民が全員、豊かな生活を英国で送れているのでしょうか?
多様性は新しいものだけでなく差別や偏見も産み出します(私も差別を受けたことがあります)。一方で、その多様性をもたらした移民がいなければ英国経済が成り立っていないかもしれません。そして、もしかしたら日本もそう遠くない未来に、今の英国と同様のことが起こる可能性が十分にあります。
高校生の皆さんが英国の事例を通して日本以外のことを考えることで、自分が日本人であるというアイデンティティ、そして日本に住んでいるという当たり前の事実を考えさせてくれる良い一冊だと思います。皆さんが大学を卒業されるころには「日本に住むのが当たり前」ではなく「日本を出るのが当たり前」になっているかもしれませんね。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 飛行機関連の仕事ができる大学に行ってみたいです。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? デスクワークの際にメタリカを... |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? 軽音楽部でギターを弾いていました。 |
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Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 大学院時代に大学受験予備校(今はありません)で生物を教えていたことがあります。 |