分子生物学

遺伝子発現

遺伝子に付加される父親・母親の記憶「DNAメチル化」の仕組み


松崎仁美先生

筑波大学 生命環境学群 生物学類(理工情報生命学術院 生命地球科学研究群 生物資源科学学位プログラム/生命農学学位プログラム)

出会いの一冊

驚異のエピジェネティクス 遺伝子がすべてではない!? 生命のプログラムの秘密

中尾光善(羊土社)

DNAのメチル化修飾や、DNAが巻きついているヒストンというタンパク質のさまざまな化学修飾が、「ゲノム刷り込み」だけでなく、いろいろな場面において遺伝子の転写を調節していることが、次々に明らかにされてきています。

このような学問の分野である「エピジェネティクス」について、基礎から専門的な考え方まで、やさしい文章で大変わかりやすく解説されています。

こんな研究で世界を変えよう!

遺伝子に付加される父親・母親の記憶「DNAメチル化」の仕組み

両親から受け継がれる遺伝子

生物の体が、両親から受け継がれた「遺伝子」をもとに形作られていることは、良く知られているとおりです。体中の細胞は、(ごく一部の例外はありますが)同じ遺伝子セットを持っています。けれど、いろいろな臓器があって役割分担できているのは、細胞ごとに異なる遺伝子が選ばれて働いて(=「転写」されて)いるためです。

DNAメチル化によって、子どもでは遺伝子の片方だけが転写

これだけでも十分スゴイですが、わたしたちヒトも含めた哺乳類では、さらに不思議な現象があります。一部の遺伝子が、父由来か母由来のどちらか一方だけ働くように決められているのです。どちらの親から来たかの記憶を「刷り込まれて」いるように見えるので、「ゲノム刷り込み(インプリンティング)」と呼ばれています。

刷り込み遺伝子のDNA配列は、基本的に父由来と母由来で同じです。それなのになぜ、片方だけが働くのか。鍵は、DNAに付けられた小さな化学修飾「メチル化」です。刷り込み遺伝子は、精子か卵子どちらかのみでメチル化され、それが受精すると、そのまま片方のみメチル化され続けます。これが印となって、子どもでは片方だけが転写されるのです。

受精してすぐの胚に注目して実験

わたしたちは、このDNAメチル化がどのようにしておこるのか、マウスをモデルとして調べ、特に受精してすぐの胚で重要な仕組みがあることに気付きました。いま、関係する調節タンパク質などの詳しい分子機構を解き明かそうと、日々実験しています。

刷り込み遺伝子は、片方の親由来だけ働くのが正常で、両方とも働いたり働かなくなったりすると病気の原因にもなります。その調節の中心にあるDNAメチル化の仕組みを知ることで、解決の糸口が見つかれば、と願っています。

マウスの胚でのDNAメチル化の様子も調べます。写真は、受精卵が1回分裂してできた、2細胞期の胚。
マウスの胚でのDNAメチル化の様子も調べます。写真は、受精卵が1回分裂してできた、2細胞期の胚。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

ふと自分の体をみても、特に意識せずとも動いたり考たりできて、それはもとは1つの細胞から作られたもので・・・と、うまくできすぎていて不思議でなりませんでした。仕組みを知りたいと思い、高校では生物を履修しなかったのに(だからこそ?)、大学から生物学に進みました。

個体の成り立ちを遡ると遺伝子とその発現にいきつくように感じて、転写の研究を始め、さらにそれが化学修飾でON/OFFされる巧妙さに魅力を感じ、エピジェネティクスの研究を続けています。

研究には、写真のようなDNA塩基配列解読装置(シーケンサー)も使います。
研究には、写真のようなDNA塩基配列解読装置(シーケンサー)も使います。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「哺乳類の世代間エピジェネティックマーク変換機構の解明」

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私(後列右)と、一緒に研究をしている谷本啓司先生(後列左)、研究室のみなさん。
私(後列右)と、一緒に研究をしている谷本啓司先生(後列左)、研究室のみなさん。
学生たちはどんなところに就職?

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先生の学部・学科は?

筑波大学生命環境学群生物学類では、系統分類学・生態学など基礎生物学分野から、分子生物学、ゲノム生物学、農学や医学との境界領域まで、あらゆる生物学の分野を学ぶことができます。対象とする生物も、微生物・植物・動物の単細胞から多細胞まで、バラエティに富んでいます。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

生命科学者たちのむこうみずな日常と華麗なる研究

仲野徹(河出文庫)

生命科学史に名を残す偉大な科学者について、その伝記をもとに、発見の背景や人となりが仲野先生の楽しい語り口で解説されています。偉人の人生はやはり規格外だなあと圧倒されると同時に、とはいえやはり人間なのだなと思えたりします。


ソフィーの世界 哲学者からの不思議な手紙

ヨースタイン・ゴルデル(NHK出版)

登場人物のやりとりを通して、哲学史全般をやさしく知ることができます。それはもちろん良いのですが、まずストーリーそのものが面白いです。同じ著者の『カードミステリー 失われた魔法の島』(徳間書店)もおすすめです。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

気象学

Q2.大学時代の部活・サークルは?

茶道部

Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

長期休みのたびに、国立の研究所で実験補助をさせてもらっていました。


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