遺伝子に付加される父親・母親の記憶「DNAメチル化」の仕組み
両親から受け継がれる遺伝子
生物の体が、両親から受け継がれた「遺伝子」をもとに形作られていることは、良く知られているとおりです。体中の細胞は、(ごく一部の例外はありますが)同じ遺伝子セットを持っています。けれど、いろいろな臓器があって役割分担できているのは、細胞ごとに異なる遺伝子が選ばれて働いて(=「転写」されて)いるためです。
DNAメチル化によって、子どもでは遺伝子の片方だけが転写
これだけでも十分スゴイですが、わたしたちヒトも含めた哺乳類では、さらに不思議な現象があります。一部の遺伝子が、父由来か母由来のどちらか一方だけ働くように決められているのです。どちらの親から来たかの記憶を「刷り込まれて」いるように見えるので、「ゲノム刷り込み(インプリンティング)」と呼ばれています。
刷り込み遺伝子のDNA配列は、基本的に父由来と母由来で同じです。それなのになぜ、片方だけが働くのか。鍵は、DNAに付けられた小さな化学修飾「メチル化」です。刷り込み遺伝子は、精子か卵子どちらかのみでメチル化され、それが受精すると、そのまま片方のみメチル化され続けます。これが印となって、子どもでは片方だけが転写されるのです。
受精してすぐの胚に注目して実験
わたしたちは、このDNAメチル化がどのようにしておこるのか、マウスをモデルとして調べ、特に受精してすぐの胚で重要な仕組みがあることに気付きました。いま、関係する調節タンパク質などの詳しい分子機構を解き明かそうと、日々実験しています。
刷り込み遺伝子は、片方の親由来だけ働くのが正常で、両方とも働いたり働かなくなったりすると病気の原因にもなります。その調節の中心にあるDNAメチル化の仕組みを知ることで、解決の糸口が見つかれば、と願っています。
ふと自分の体をみても、特に意識せずとも動いたり考たりできて、それはもとは1つの細胞から作られたもので・・・と、うまくできすぎていて不思議でなりませんでした。仕組みを知りたいと思い、高校では生物を履修しなかったのに(だからこそ?)、大学から生物学に進みました。
個体の成り立ちを遡ると遺伝子とその発現にいきつくように感じて、転写の研究を始め、さらにそれが化学修飾でON/OFFされる巧妙さに魅力を感じ、エピジェネティクスの研究を続けています。
「哺乳類の世代間エピジェネティックマーク変換機構の解明」
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「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」
筑波大学生命環境学群生物学類では、系統分類学・生態学など基礎生物学分野から、分子生物学、ゲノム生物学、農学や医学との境界領域まで、あらゆる生物学の分野を学ぶことができます。対象とする生物も、微生物・植物・動物の単細胞から多細胞まで、バラエティに富んでいます。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 気象学 |
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Q2.大学時代の部活・サークルは? 茶道部 |
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Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 長期休みのたびに、国立の研究所で実験補助をさせてもらっていました。 |