栄養環境は生殖細胞のエピゲノムにどんな影響を与えるのか
ヒトも動物も不妊症に悩む
生殖細胞の性分化、配偶子形成、受精を経て生殖サイクルがまわることにより、生命に連続性が生まれます。生殖サイクルに異常が生じることにより、不妊症が増加し、大きな社会問題になっています。ヒトだけでなく、畜産業界でも受胎率の低下が問題になっています。
ヒトと動物に共通した社会問題である不妊症の要因には、環境などの外的要因や、遺伝などの内的要因が関係しており、不妊症の改善を目指した生殖細胞分化、受精、着床といった生殖サイクルの分子機構の解明が求められています。
エピゲノムが生命の連続性に重要な役割
私たちの体を作る細胞は、基本的に体細胞と生殖細胞に分類されます。体細胞は、脳や内臓、筋肉や骨、皮膚といった体を構成する細胞のことで、一世代限りの分化を遂げます。
一方、生殖細胞は、精子や卵に分化し、受精後に次世代の個体を作り出す能力を再獲得することができます。生殖細胞では、その分化過程を通して、全能性を再び獲得するための特殊なエピゲノムが形成され、それが生命の連続性に重要な役割を担っています。
外部環境がエピゲノムに揺らぎ
精子や卵は、その元になる細胞(幹細胞)が変化して作られます。その過程では、数千もの遺伝子の発現が調整されています。私たちは、生殖細胞が作られていく過程の遺伝子発現を調整する仕組みについて、細胞核内の染色体構造変化「クロマチン構造変化」と、使う遺伝子と使わない遺伝子を決める機構の変化「エピゲノム変化」に注目して、その制御機構を明らかにしてきました。
栄養環境などの外部環境要因は、エピゲノムに揺らぎをもたらします。未解明な部分が多いこの学問領域において、どんな栄養成分が生殖細胞のエピゲノムに影響し、その情報が次世代へ継承されるのかを調べています。栄養成分が代謝経路に影響を与え、記憶として生殖細胞のエピゲノムに刻まれる仕組みを明らかにしたいと考えています。
「世代を超えて受け継がれる、代謝-エピゲノムクロストークの解明」
◆主な業種
(1) 食品・食料品・飲料品
(2) 薬剤・医薬品
(3) コンサルタント・学術系研究所
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) コンサルタント(ビジネス系等)
(3) 中学校・高校教員など
◆学んだことはどう生きる?
本研究室の卒業生は、製薬会社や食品会社の研究開発職や、中学校や高校の教員として活躍しています。また、研究者としてのキャリアを歩むために大学院の博士課程に進学する学生もいます。
東京理科大学 創域理工学部 生命生物科学科は、全国に先駆けて生物科学の各分野や領域を統合した研究・教育を目指した学科で、その先見性はそのままに、生命現象の解明や科学技術の発展を見据えた研究・教育を展開しています。生物の種や技術の枠を超えた、分野をリードする先進性・独創性の高い研究を行う中で、確かな基礎力と高い専門性を身につけ、世界の様々な分野で社会を牽引できるバイオロジストを育成しています。
次世代シーケンス解析の普及により、様々な生物のゲノムや遺伝子発現などの大規模データが蓄積しています。それらは公共データベースに保管されており、誰でもアクセスすることができます。次世代シーケンス解析の教本や講習動画を参考に、最新のデータに触れて実際に解析してみると、思いがけない大発見があるかもしれません。
TOGO TV
ライフサイエンス統合データベースセンター
TOGO TVは、生命科学分野の有用なデータベースやウェブツールの動画マニュアルや講演・講義動画、イラスト、講習資料などを紹介するポータルサイトです。最新のデータベースやウェブツールの利用方法を、動画でわかりやすく、無料で学ぶことができます。生命科学研究の現場でどのような能力が必要とされているのかを知るきっかけにもなると思います。
[webサイトへ]