水圏生命科学

イカの青い血

イカす「青い血」研究! 青色タンパク質解明から、イカの健康診断まで


加藤早苗先生

鹿児島大学 水産学部 水産学科 食品生命科学分野(農林水産学研究科 食品創成科学専攻)

出会いの一作品

グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち

主演:マット・デイモン

大学で数学の教授が出した難問を解いていたのは掃除のバイトの貧しい若者だった。この天才的な若者と、心に傷を持つ心理学者との交流を描いたヒューマンドラマ。

主演のマット・デイモンが学生時代に幼馴染と脚本を描き、映画化した作品です。アカデミー脚本賞受賞、主演男優賞ノミネート。自分の可能性を知ること、そして自分の人生を見つけることが描かれている点でお勧めできます。

こんな研究で世界を変えよう!

イカす「青い血」研究! 青色タンパク質解明から、イカの健康診断まで

自然界には青い血の生物がいっぱい

「血はどんな色?」と聞かれたら、皆さんは何と答えますか?多くの人は「血は赤い」と迷わずに答えるでしょう。

しかし、自然界には赤くない血を持つ生物種の方が多いのです。イカやタコなどの軟体動物や、アワビなど腹足類に分類される巻貝、エビ、カニやクモなどの節足動物の多くは「青い血」を持っています。生きた化石と呼ばれるオウムガイの血も青く、絶滅して化石しか現存しないアンモナイトの血も青かったと推測されています。

青い色はタンパク質ヘモシアニン

では、「赤い血」と「青い血」では何が違うのでしょうか?

私たちヒトの血液には赤血球があり、その中にはヘモグロビンという鉄を結合したタンパク質が含まれています。ヘモグロビンは体内で酸素を運搬する役割を果たしています。

青い血の場合には、ヘモシアニンという銅を結合したタンパク質が酸素を運搬する役割を果たしているのです。

飼育が難しいイカ、養殖も夢みて

私はこの「青い血」について様々な視点から研究をしています。生物学的視点からは、青い血と赤い血を比較研究し、生物進化の手がかりを得ようとしています。

化学的視点からは、自然界で最大のタンパク質分子のひとつである軟体動物ヘモシアニンの分子構造と生理機能を研究しています。巨大分子の構造研究は難しく、構造生物学という学問では意義深いチャレンジです。

応用学的視点からは、血液検査によるイカの健康診断をめざしています。イカは飼育が難しく、養殖は成功していませんが、健康診断をすることで養殖の可能性が広がるかもしれません。

アオリイカ。下の個体は釣り上げられて興奮して体色が黒くなっていますが、上の個体はリラックスしています。彼らの「青い血」を採血します。
アオリイカ。下の個体は釣り上げられて興奮して体色が黒くなっていますが、上の個体はリラックスしています。彼らの「青い血」を採血します。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

私は水産学博士(課程博士)の日本女性第一号ですが、長いこと医学部教員(助教)として医学研究に取り組んでいました。

その時、「イカの人工飼育が難しいのはなぜか」、つまり「イカはなぜ水槽で生か(イカ)すことができないか」という研究プロジェクトにお誘いいただき、「なんてイカす研究だ!」と思って参加しました。イカが飼育中に衰弱する理由を調べるための血液検査が、青い血の研究のきっかけとなりました。

イカの青い血。青いマジックペンと比べるとその青さが判ります。
イカの青い血。青いマジックペンと比べるとその青さが判ります。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「頭足類酸素運搬タンパク質ヘモシアニンの会合体形成における修飾糖鎖の関与」

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先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
研究室の学生とノルウェーからの留学生。鹿児島大学下荒田キャンパス(水産学部)にて。
研究室の学生とノルウェーからの留学生。鹿児島大学下荒田キャンパス(水産学部)にて。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 食品・食料品・飲料品

(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

(3) 商社・卸・輸入

◆主な職種

(1) 品質管理・評価

(2) 技術系企画・調査、コンサルタント

(3) 調達、物流、資材・商品管理

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

全国に86校ある国立大学のうち、水産学部があるのは北海道大学、東京海洋大学、長崎大学、そして私が所属する鹿児島大学の4校しかありません。ですから、鹿児島大学水産学部には全国から入学者が集まっています。留学生も多く、学生さんは様々な仲間と大学生活をエンジョイしています。

水産学部では生物、化学、物理、地学のどの研究分野も選択できるので、大学入学後に自分の進路に合った学科を選択することが可能です。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

巨大生物 進化の謎 ダイオウイカ大解剖

制作:株式会社ツードッグ

ダイオウイカ研究の第一人者である国立科学博物館窪寺恒美博士を中心として、鹿児島大学水産学部、三重大学、東北大学、千葉大学等の研究者が集結してダイオウイカの解剖実験をした記録映画です。実験室での解剖のみならず、漁師やダイバーの方々がダイオウイカと出会った貴重な経験を告白してくれます。

イカという生物を通じて、進化の不思議や生命の謎、そして地球状の多様な生物の尊さを考えていくドキュメンタリー映画です。私も出演、協力しています。

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一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

私の教え子(留学生)の母国。十数か国ありますが、バングラデシュのマンゴー、インドのカレー、モンゴルの羊料理など、学生が作ってくれた多くの料理を学生とともに再び味わいたいです。どこの国にも行くことができるような、戦争のない、平和な世界を切望しています。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

忌野清志郎

Q3.好きな言葉は?

知的好奇心、人生お遊び


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