スイーツに好まれるサツマイモ。もっと甘くするには
続く焼き芋ブーム
サツマイモは猛暑や干ばつに強く、農薬や肥料があまり必要ない環境負荷が低い作物です。さらに食物繊維が豊富な低GIの健康食品でもあり、SDGsを実現する有望作物として再評価され始めています。
安納芋の登場で始まった焼き芋ブームは現在も続いていますが、日本では健康食品よりスイーツのイメージが強いようです。つまり「より甘い」ことが求められます。サツマイモの甘さは4種類の糖の含量とバランスで決まりますが、収穫後の貯蔵条件も糖含量に大きく影響します。
寒いとダイコンみたいに甘くなる?
雪の下で貯蔵したキャベツやダイコンが甘くなるのは、糖含量を高めることで凝固点降下を起こし凍結(=枯死)を回避するためです。
サツマイモも2週間の低温処理でショ糖が1.4倍に増加しました。このときショ糖分解酵素遺伝子IbAINV1の発現が抑制され、同酵素活性が低下することを明らかにしました。しかし亜熱帯原産のサツマイモは低温障害を受けやすく、技術的な実用化に至りませんでした。
高温処理でショ糖が増えるメカニズム
一方、サツマイモを高温処理するとショ糖が12時間で1.4倍に増加しました。このときショ糖合成酵素遺伝子IbSPS2の発現が急上昇し、同酵素活性が増加しましたが、この酵素の活性抑制タンパク質も後を追うように増えました。つまり過度のショ糖蓄積を抑えるリミッターのようです。
低温でも高温でもショ糖が蓄積しますが、そのメカニズムは対照的で、分解を抑制する低温より合成を促進する高温の方が短時間で蓄積するようです。さらに研究を進めてリミッターを解除できれば、より甘いサツマイモを作り出せるかも知れません。
ちなみに研究に用いている「兼六」は戦前の石川県で育成された品種ですが、安納芋のルーツであることをDNA型鑑定などで明らかにしました。
小学生のころは昆虫や淡水魚に夢中で、自分で採取したり飼育したりしていました。植物に興味を持ったのは中学生になってから。「花が咲く」という現象に興味を持ちました。
当時、花成ホルモン(フロリゲン)はまだ見つかっていなかったので、大学受験の際は大学院の受験案内書で花成の研究ができそうな大学を選びました。学部3年のころから農林水産省の研究所に研究生として通うことができ、植物の形作りと植物ホルモンの機能について最先端の研究に関わりました。
「サツマイモの食味に影響する糖代謝制御機構の解明」
◆主な業種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(2) 農業、林業、水産業
(3) 商社・卸・輸入
◆主な職種
(1) 事業推進・企画、経営企画
(2) 調達、物流、資材・商品管理
(3) その他
「焼き芋はじっくり焼くと甘くなる」のはデンプンからつくられる麦芽糖が増えるからです。この現象には加熱によるデンプンの糊化と糊化デンプンのβ-アミラーゼによる分解が関わっています。このβ-アミラーゼの本来の生理機能は明らかになっていませんが、人間は都合良く利用して焼き芋を甘くしています。
そこで加熱方法(電子レンジの場合は出力、焼く、蒸すの場合は火加減)を変えて調理したサツマイモの甘さを比べて下さい。デンプンの糊化やβ-アミラーゼ活性について調べ、加熱方法と甘さの関係が説明できるでしょうか。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? やはり農学 |
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Q2.感動した/印象に残っている映画は? 『シザーハンズ』 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? 帰宅部でしたが、1年のころは毎日図書館に通い、2年のころは毎日自転車で20km走り回り、3年から農林水産省の研究所で修業を始めました。 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 家猫たちと遊ぶこと |