土壌劣化に負けてはいない! 酸性土壌に対抗する植物の強さの秘密
土中のアルミニウムは植物に有害
皆さんはアルミニウムと聞くと何を思い浮かべますか。身近な日用品、1円硬貨、飲料缶や様々な乗り物などに広く利用されています。実は、皆さんの足元の土の中にも、ケイ素の次に多い金属元素としてアルミニウムが普遍的に存在しています。アルミニウムは通常は問題を起こしませんが、土が酸性になると溶け出して、植物の成長を強く阻害してしまいます。植物にとってはとても有害な元素なのです。
酸性土壌は耕地の50%も
このような酸性土壌は、世界の耕作可能地の50%を占めるともいわれています。それでは私たちの食糧生産も心配になりますよね。しかし、実際は肥料を施すことで作物を栽培しています。ところが、発展途上国などでは肥料が不十分で生産性が低いままです。また、過剰な化学肥料の使用や気候変動の影響で土壌酸性化は進行すると考えられています。
適応メカニズムを遺伝子レベルで明らかに
しかし、植物も負けてはいません。植物は、長い、長い進化の過程で苛酷な酸性土壌環境に適応するための色々なメカニズムを獲得してきました。例えば、植物体内で作られるリンゴ酸やクエン酸を根の周りに分泌することで、アルミニウムを無害な形にすることができます。また、面白いことに、酸性土壌に強い植物から、全く育つことができない弱い植物まで存在します。
そこで、私たちはその強弱を遺伝子レベルで比べて、強さの原因を明らかにしようと研究を進めています。最近は、ヒトと同じように、色々な植物のゲノム解読も急速に進みました。そのため、わずかなゲノム配列や遺伝子発現の違いを見つけて、適応メカニズムを構成している協働する多くの遺伝子セットを明らかにできつつあります。この適応メカニズムを改良することができれば、進行する土壌劣化にも対抗できると信じてやみません。
学生時代、国際連合食糧農業機関(FAO)が発表しているハンガーマップを知りました。世界の飢餓状況が色分けされた地図です。今はWebでリアルタイムで見ることができますが、当時、ポスターを取り寄せて皆で眺めました。日本で暮らしていると実感はありませんでした。
体力的に野外研究活動に自信がなかった私は、緑の革命ではないけれど、実験室での食糧生産向上に繋がる発見を通じて飢餓解決に貢献できればと思い、研究活動をスタートさせました。
「酸性土壌への適応進化から読み解くアルミニウム耐性の遺伝子発現制御ネットワーク」
◆主な業種
(1) 農業、林業、水産業
(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(3) 食品・食料品・飲料品
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 大学等研究機関所属の教員・研究者
(3) 品質管理・評価
◆学んだことはどう生きる?
農業に関わる国立研究機関などで、国内外の農業・食品産業の発展を目指し、作物の評価、改良などの研究を行っている卒業生達がいます。植物は様々な苛酷な環境で生育しますが、植物の環境や栄養応答のしくみをゲノム、遺伝子レベルで実験、理解して得た知識や考え方は、研究対象が変っても活かされると思います。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 宇宙物理学、天文学 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? Lang Lang |
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Q3.感動した/印象に残っている映画は? アマデウス |
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Q4.好きな言葉は? 好きこそ物の上手なれ |