生物分子化学

真菌感染症の治療薬

真菌感染症の治療薬の副作用を減らし、効力をアップする


長井賢一郎先生

北里大学 薬学部

出会いの一冊

天然物の化学 魅力と展望

編:上村大輔

実は、天然物は多くの分野で研究されています。例えば、「蛍の光や花の色」「キノコやフグの毒」「昆虫のフェロモン」においても天然物が重要な役割を果たしています。

この本には、著名な研究者によって、天然物の歴史的な話題から最先端の研究までがわかりやすくまとめられています。1話完結ですので、まずは興味を持った話だけ読んでみましょう。続編の『天然物の化学 II 自然からの贈り物』(編:上村大輔)もあります。面白いと感じたら更に読み進めてみましょう。

こんな研究で世界を変えよう!

真菌感染症の治療薬の副作用を減らし、効力をアップする

病原性を持つ恐ろしい真菌もある

私は、天然物から薬の種を見つける研究を続けています。天然物とは微生物や植物が作る化学成分であり、これまでに多くの薬が誕生しています。

そして私たちは、「深在性真菌症の治療薬の開拓」に挑戦しています。カビや酵母などの真菌は、味噌や醤油といった発酵食品の製造や抗生物質の生産に役立ち、ヒトに多くの恩恵を与えてくれています。一方で病原性を持つ真菌も存在し、免疫力の低下したヒトに対して感染します。これが深在性真菌症であり、世界中で年間150万人を死に至らしめる恐ろしい感染症の1つです。

副作用が課題だが、新薬開発も難しい

しかし、その治療薬の数は限られています。実は、真菌とヒト細胞はよく似ているため、薬が真菌だけでなく、ヒトも攻撃してしまう、つまり副作用が出てしまうのです。新しい抗真菌薬の開発は強く望まれていますが、とても大きなハードルがあります。

アムホテリシンB(amphotericin B, AmBと略す)は強い抗真菌作用を持つ深在性真菌症の重要な治療薬ですが、一方で腎毒性などの副作用が臨床使用を限定的にしています。この問題を解決するため「AmBの抗真菌作用を増強する成分はAmBの投与量を削減しても同等の抗真菌作用を発揮し、かつ副作用を低減できるのでは」と仮説を立てました。

今ある薬の問題点克服も重要

不撓不屈の努力の末、微生物資源より新規の環状ペプチドを発見しました。このペプチド自身は抗真菌作用を全く示しませんが、AmBと併用するとAmBの抗真菌作用を増強しました。一方でヒト細胞へAmBの毒性を増強しません。

このように、薬学部では、新しい薬を作るだけでなく、今ある薬の問題点を克服して作用を高める研究も大切にしています。現在、「なぜこのペプチドがAmBの抗真菌作用を増強できるのか?」という謎の解明に挑戦しています。この謎がわかれば、安全な深在性真菌症の治療薬の開拓に貢献できると考えています。

化学反応の後処理をしているところ。危険な溶媒や試薬を取り扱うため、実験操作は排気装置のついた実験台(ドラフト)の中で行います。保護メガネ、白衣、グローブは必須です。
化学反応の後処理をしているところ。危険な溶媒や試薬を取り扱うため、実験操作は排気装置のついた実験台(ドラフト)の中で行います。保護メガネ、白衣、グローブは必須です。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「アムホテリシンB活性増強作用を持つ天然物由来ペプチドの創薬研究」

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中圧分取液体クロマトグラフ。微生物資源由来のサンプルには、ものすごくたくさんの成分が入っています。この装置を使用して成分ごとに自動で分けます。
中圧分取液体クロマトグラフ。微生物資源由来のサンプルには、ものすごくたくさんの成分が入っています。この装置を使用して成分ごとに自動で分けます。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 病院・医療

(2) 薬剤・医薬品

◆主な職種

(1) 薬剤師等

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

薬学部では、微生物薬品製造学(微生物由来)と生薬学(植物由来)という、天然物に関する研究を行っています。薬品製造化学では天然物の化学合成を基盤とした研究をしています。

私は化学系共有機器室に所属しており、様々な分析機器を利用して天然物や合成中間体の構造を明らかにする研究支援を行っています。さらに、同じ敷地内の利点を活かした共同研究も行われています。もし天然物に興味を持ったなら、やってみたい何かが見つかるかもしれません。

中圧分取液体クロマトグラフの結果。試験管ごとにピンクから黄色の成分に分かれているのがわかるかと思います。この後、各成分のカタチを明らかにし、有用な作用を持つか調べます。
中圧分取液体クロマトグラフの結果。試験管ごとにピンクから黄色の成分に分かれているのがわかるかと思います。この後、各成分のカタチを明らかにし、有用な作用を持つか調べます。
先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

無人島に生きる十六人

須川邦彦(新潮文庫)

研究を進めていくと数多くの様々な問題が発生します。そして、それらをなんとかして乗り越えていく必要があります。この本では、16人が船旅の途中、大嵐によって難破し漂流して無人島にたどり着きます。数多くの困難に遭遇しますが、皆で協力しあい乗り越えてゆきます。その取り組みは、研究で遭遇する困難の解決にも通じると感じます。毎年、夏にゆっくり読みます。

一問一答
Q1.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

ラミーキューブ(頭を使います)と人生ゲーム(ドキドキのルーレット)

Q2.大学時代の部活・サークルは?

ラグビー。考えて行動すること、チームワーク、継続することの大切さを学びました。

Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

貝殻拾い(ぼーっとできます)と折り紙(集中できます)


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