真菌感染症の治療薬の副作用を減らし、効力をアップする
病原性を持つ恐ろしい真菌もある
私は、天然物から薬の種を見つける研究を続けています。天然物とは微生物や植物が作る化学成分であり、これまでに多くの薬が誕生しています。
そして私たちは、「深在性真菌症の治療薬の開拓」に挑戦しています。カビや酵母などの真菌は、味噌や醤油といった発酵食品の製造や抗生物質の生産に役立ち、ヒトに多くの恩恵を与えてくれています。一方で病原性を持つ真菌も存在し、免疫力の低下したヒトに対して感染します。これが深在性真菌症であり、世界中で年間150万人を死に至らしめる恐ろしい感染症の1つです。
副作用が課題だが、新薬開発も難しい
しかし、その治療薬の数は限られています。実は、真菌とヒト細胞はよく似ているため、薬が真菌だけでなく、ヒトも攻撃してしまう、つまり副作用が出てしまうのです。新しい抗真菌薬の開発は強く望まれていますが、とても大きなハードルがあります。
アムホテリシンB(amphotericin B, AmBと略す)は強い抗真菌作用を持つ深在性真菌症の重要な治療薬ですが、一方で腎毒性などの副作用が臨床使用を限定的にしています。この問題を解決するため「AmBの抗真菌作用を増強する成分はAmBの投与量を削減しても同等の抗真菌作用を発揮し、かつ副作用を低減できるのでは」と仮説を立てました。
今ある薬の問題点克服も重要
不撓不屈の努力の末、微生物資源より新規の環状ペプチドを発見しました。このペプチド自身は抗真菌作用を全く示しませんが、AmBと併用するとAmBの抗真菌作用を増強しました。一方でヒト細胞へAmBの毒性を増強しません。
このように、薬学部では、新しい薬を作るだけでなく、今ある薬の問題点を克服して作用を高める研究も大切にしています。現在、「なぜこのペプチドがAmBの抗真菌作用を増強できるのか?」という謎の解明に挑戦しています。この謎がわかれば、安全な深在性真菌症の治療薬の開拓に貢献できると考えています。
「アムホテリシンB活性増強作用を持つ天然物由来ペプチドの創薬研究」
◆主な業種
(1) 病院・医療
(2) 薬剤・医薬品
◆主な職種
(1) 薬剤師等
薬学部では、微生物薬品製造学(微生物由来)と生薬学(植物由来)という、天然物に関する研究を行っています。薬品製造化学では天然物の化学合成を基盤とした研究をしています。
私は化学系共有機器室に所属しており、様々な分析機器を利用して天然物や合成中間体の構造を明らかにする研究支援を行っています。さらに、同じ敷地内の利点を活かした共同研究も行われています。もし天然物に興味を持ったなら、やってみたい何かが見つかるかもしれません。
Q1.学生時代に/最近、熱中したゲームは? ラミーキューブ(頭を使います)と人生ゲーム(ドキドキのルーレット) |
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Q2.大学時代の部活・サークルは? ラグビー。考えて行動すること、チームワーク、継続することの大切さを学びました。 |
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Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 貝殻拾い(ぼーっとできます)と折り紙(集中できます) |