有機・ハイブリッド材料

発光分子

より明瞭に病気の部位を光らせたい! ~生体用の発光体の合成


平田修造先生

電気通信大学 情報理工学域 III類(理工系)(情報理工学研究科 基盤理工学専攻)

出会いの一冊

とことんやさしい有機ELの本(第2版) 

森竜雄(日刊工業新聞社)

半導体のお話しから発光する機構までわかりやすく図を中心に説明されており、最初に光機能材料やデバイスの分野に触れる上でとっつきやすいと思われます。

こんな研究で世界を変えよう!

より明瞭に病気の部位を光らせたい! ~生体用の発光体の合成

ブラックライトで光らせる

発光材料を体の中に導入して特定の疾患部位に集積させると、ブラックライト照射時の発光情報を見ることで、疾患の有無や疾患部位の特定が可能です。

しかし体の中には微弱に発光する他の不純物も多く存在するため、疾患部位だけでなく周囲も同様に発光してしまうことがあり見分けがつかない場合もたくさんあります。

停止直後に発光が残る現象に着目

私は15年以上前にブラックライトの照射を停止した直後に1秒程度強く発光が強く残る長寿命室温りん光という現象に偶然出会い研究をしています。

長寿命室温りん光を示す材料を特定の疾患部位に集積する技術ができるようになると、ブラックライト照射の停止直後には、周囲の不純物は発光せずに疾患部位のみが発光することで、より明瞭に疾患部位の特定が可能になります。

赤や近赤外色ならカラダの深部まで見える

現在青色や緑色の長寿命室温りん光を強く生じる材料はありますが、体の深部の情報を見るためには体を通過するような赤や近赤外色の長寿命室温りん光が必要となります。しかし、赤や近赤外色の長寿命室温りん光は輝度が弱いという問題があります。

研究室では、コンピューターでどういう分子を構築すると赤や近赤外色の長寿命室温りん光が強くでるかを推定しながら、その推定した有機分子を合成し、その分子の発光性能をレーザで検証したり、発光分子を生体試料に投与して観察する実験等を行っています。

将来に向けて技術を吸収してもらいたい

学生さんには、計算(情報)、物理、化学、生物を総合的に行うことで、若く色々なことが吸収しやすい時期にたくさん技術を吸収していただき、自分が将来こういうことを実現したいといった時に、それを実行する力を培うことを意識していただきながら、グループで研究をしています。

通常の赤色発光体と開発している赤色の長寿命室温りん光体がはいった瓶がブラックライトの上に置かれている。ブラックライト照射時には両方が赤色に同程度発光する(左側)。その後ブラックライトを停止した直後は赤色の長寿命室温りん光体のみの赤色発光が1秒程度残る(右側)。
通常の赤色発光体と開発している赤色の長寿命室温りん光体がはいった瓶がブラックライトの上に置かれている。ブラックライト照射時には両方が赤色に同程度発光する(左側)。その後ブラックライトを停止した直後は赤色の長寿命室温りん光体のみの赤色発光が1秒程度残る(右側)。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

高校で自主(自由にふるまうが結果には責任を持つこと)の意識を教育いただき、あまり先の事は考えず自由にその時興味がある方向で進路を選択してきました。大学でも周囲の人気ではなく、自分がその時興味を一番感じたゼミを選択しました。

ゼミに入り、実験で発生する結果や変化に対して、どうしたら制御できるのだろうという視点で興味が赴くままに進み、それを貪欲に探究するという行動が、今の専門学問の研究者になることにつながったのだと思います。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「分子固体の室温での三重項失活速度の推定法の確立」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
グループの大学生や大学院生は、海外の研究者や留学生とともに英語が飛び交う中で、国際的に弱腰にならない事になれるような環境で研究開発を行っています。一生懸命に研究をして研究成果を発表をするとともに、リラックスするイベントを入れながら活動を行っています。
グループの大学生や大学院生は、海外の研究者や留学生とともに英語が飛び交う中で、国際的に弱腰にならない事になれるような環境で研究開発を行っています。一生懸命に研究をして研究成果を発表をするとともに、リラックスするイベントを入れながら活動を行っています。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) その他の材料・製品

(2) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品

(3) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関

◆主な職種

(1) 基礎・応用研究、先行開発

(2) 大学等研究機関所属の教員・研究者

◆学んだことはどう生きる?

博士課程を卒業した学生は、光機能素材の研究開発と販売を行う会社などに就職しています。修士課程を卒業した学生は、各種インク素材を扱う会社に就職している例が多いです。

博士課程を卒業した学生は、研究室で学習した専門性が生かされた業務を任されています。修士課程を卒業した学生は、ゼミで学習した技術課題等に関して個々がどのように基礎をベースにアクションをとっていくのかの物事の進め方が生かされているようです。

先生の学部・学科は?

昨今の化学系の人材に多いのが、絨毯爆撃的に研究開発を行う色が強いという点です。しかし今後アジアの優秀な人材が増える中、その方式では厳しい時代が到来しつつあります。

本学では、特に化学生物でも物理をしっかり行うことをベースとした教育がなされます。物理に基づいて化学や生命系の現象が制御できるようになると、より戦略的に自分のビジョンを描きながら化学や生物分野を進めることができるようになり、今後のリーダーとしてより必要なスキルとなってきます。

また、本学では巨大な研究グループは少ないので、若い学生さんが主体的に物事を進める機会が多くなります。機械的に言われた事を行う人材ではなく、個々の個性がより伸びる教育がなされている部分が多いと思います。

サンフランシスコでの発表とその後のお疲れ様の様子等です。いい成果を世界に発信できるように海外で発表することを心がけています。
サンフランシスコでの発表とその後のお疲れ様の様子等です。いい成果を世界に発信できるように海外で発表することを心がけています。
先生の研究に挑戦しよう!

なぜポリフェノールやカロテンは抗酸化作用があって、それを接種することがアンチエージングにつながるのかを調べてみましょう。

中高生におすすめ

トコトンやさしいレーザの本

小林春洋(日刊工業新聞社)

光の特徴やレーザー発生の原理から応用までわかりやすく図を中心に説明されており、最初に光の技術分野に触れる上でとっつきやすいと思われます。


有機ELのすべて エレクトロ・ルミネッセンス

城戸淳二

有機ELの原理や素材、そしてディスプレイを学習する上で読みやすい内容です。


未来の科学者たちへシリーズ

NIMS(物質・材料研究機構)

専門分野というよりは、素材の自然現象が動画でわかりやすく紹介されているので、素材の力を知るとともに、高校生がなぜこのような事が生じるのかという疑問を持ち、それがより興味を引き出すきっかけになるのではという点でいいと思います。

[webサイトへ]

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

応用化学

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

ドイツやイタリア。多様性があり且つ差別が少ないと感じる。食事がおいしい。

Q3.大学時代の部活・サークルは?

軽音楽部(バンド)

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

東京ビックサイトの警備員

Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?


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