細胞内共生説の謎 隠された歴史とポストゲノム時代における新展開
佐藤直樹(東京大学出版会)
細胞内共生説は高校の生物学の教科書でも取り上げられ、一般的に受け入れられている進化の理論の一つです。この説では、ミトコンドリアや葉緑体などの細胞小器官は、古代の細胞が他の細菌を取り込んで共生したことに由来するとされています。著者は独自に開発した分子系統解析技術を使い、葉緑体の遺伝子の多くが単一の共生だけでは説明がつかないことを明らかにしました。
一般的な説明と現実には乖離があることを本書タイトルは『謎』として捉えています。中高生の皆さんには、少々難しい内容も含みますが、教科書に紹介されるような一般的に定説とされるものの中にも検証すべき『謎』が残されていることを見逃さずに探求してもらいたいです。
ミドリゾウリムシとクロレラの共生成立に膜脂質はどうかかわるか
単独でも生存できる
ミドリゾウリムシという微生物は、単細胞生物ながら興味深い特性を持っています。彼らはクロレラという光合成を行う微生物を体内に共生させており、この関係は相利共生の例としてよく紹介されます。クロレラはミドリゾウリムシに栄養を供給し、逆にミドリゾウリムシはクロレラに安定した生存環境を提供することで共生関係を維持しています。
興味深いことに、この小さな生物たちは単独で生存する能力も有しています。この能力は真核細胞誕生の初期段階を思わせるところがあります。
膜脂質や膜タンパク質が重要
これまでの遺伝子発現解析などによる先行研究では、この相利共生の成立において膜脂質や膜タンパク質が重要な役割を果たしていることが示唆されていました。そこで、私たちは最新のリピドミクスという解析技術を用いて、ミドリゾウリムシとクロレラの共生過程を詳しく調査しています。
リピドミクスは、生体内の脂質(リピッド)を大規模に解析するための技術で、生体内の脂質の多様性や機能について理解を深め、生物学的なプロセスや疾患との関連性を明らかにすることができます。
生命の不思議に迫る
私たちの研究グループは、このリピドミクス技術を駆使して、ミドリゾウリムシとクロレラの共生過程における膜脂質の役割とそのメカニズムを探求しています。
この共生関係がどのように成立し、どのような脂質が関与しているのかを解明することで、生命の不思議な側面に迫ることができると期待しています。この小さな共同生活社会のような世界には、私たちの理解を超えた多くの秘密が隠されているかもしれません。
高校時代、天文気象部に所属し、夜空を望遠鏡で観察しながら宇宙の成り立ちや生命の存在の意味について漠然と考えていました。大学・大学院では分子生物学を学び、生命活動が分子レベルでどのように行われるのかや進化に興味を持ち、DNAやタンパク質、脂質の分析を通じてその仕組みを研究しました。宇宙の神秘に思いを馳せるところから、分子生物学のようなミクロな視点への変遷はありましたが、私の原動力は不思議の探求です。
「細胞内共生成立過程における脂質代謝分析のためのリピドミクス解析基盤創製と機能解明」
◆主な業種
(1) 薬剤・医薬品
(2) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品
(3) 食品・食料品・飲料品
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) セールスエンジニア・技術営業
(3) 品質管理・評価
◆学んだことはどう生きる?
生命分析化学研究室では、生体内や環境中で起こる現象を化学の観点から解明することを目指し、分子を網羅的に測定する技術や生命現象をリアルタイムで捉えるセンシング技術、生物の化学物質応答の解析技術などを研究・開発しています。当研究室の卒業生は、製薬、化学、食品、分析機器メーカーなどに就職し、研究開発や品質管理、専門技術者として、研究を通じて培った知識や経験を活かし、活躍しています。
生命科学部は、設立以来、医学、薬学、理学、農学、工学の各専門分野の教員が一堂に会して、複雑な生命現象を総合的に解明することを目指しています。学生たちは、先端の教員と共に研究に没頭し、生命科学のさまざまな課題に真剣に取り組むことで、幅広い知識と技術を身につけるとともに、未来の課題に対処する力を育んでいます。豊かな研究環境が学生たちの成長を支えています。
(1) 細胞内共生の種類や具体的な例を調査してみましょう。例えば、ミトコンドリアや葉緑体などの細胞内共生体を取り上げ、それぞれがどのようにして細胞内で機能しているのか、その役割や進化について調べてみましょう。
(2) 細胞内共生がどのようにして進化し、生物の進化にどのような影響を与えたかを調査してみましょう。例えば、エンドシンビオーシス仮説や共生の進化メカニズムなどについて調べてみましょう。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? データサイエンスを学んでみたいと思います。現代社会ではビジネス、医療、環境、マーケティングなど、あらゆる領域でデータ解析の需要が非常に高まっています。データサイエンスは大量のデータから有益な情報を抽出し、データから得られた洞察を元に、新たなアプローチや革新的な解決策を導き出すことができます。複雑な生命の仕組みを解き明かす上でもデータサイエンスは強力なツールになると思います。 |
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Q2.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 最近、小学生の息子とサムライ合戦というチーム戦でポリウレタン製の剣を使って相手の腰に付けた紙風船を破るゲームを楽しみました。このゲームは、エネルギッシュで仲間と一緒に戦略を練り、競い合いながら楽しめる要素があって、大変盛り上がりました。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? 大学時代はボート競技をやっていました。ボートは、体力だけでなくメンタル面やチームワークを鍛え、自然との調和も感じることができるスポーツです。ボートを制御して速く進めむためにはテクニックやタイミングが重要なのですが、それを磨く過程が楽しかったです。今でも大学時代の仲間と市民レース大会などに参加しています。 |
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Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 大学時代に報道機関で国政選挙の開票速報集計アルバイトを経験しました。開票速報は作業の速さと正確さが求められるため、責任感と信頼性が重要です。アルバイトを通して政治的な興味を持つだけでなく、データ収集処理や責任感を身につける良い機会となりました。 |