触媒開発は有機合成の道具づくり
木工作業に似た、有機合成化学
皆さんは化学構造式はお好きですか?亀の甲のような六角形やジグザグの棒で書かれた構造式は、意味がわからなくて苦手という人も多いですね。そのような分子構造は肉眼では見えないし、電子顕微鏡でもはっきりとは見えません。
その見えない分子の姿を思い浮かべ、不要な結合を切り、必要な結合をつないで分子を組み立てていくのが有機合成化学です。ノコギリで木を切り、釘や木組を使って椅子や机を組み立てていくのと同様に、有機合成にも道具が必要です。分子を切ったりつないだりしてくれる道具にあたるのが【触媒】です。
目に見えない分子の姿や性格を想像
触媒とは、それ自身は反応の前後で変化せず、化学反応の活性化エネルギーを下げるものとされています。僕はこの触媒の開発、すなわち有機合成用の道具の開発をしています。
なお、この道具となる触媒も合成した分子です。この道具にどういう仕掛けをしたら、いままで切れなかった結合を切ることができるようになるのか?そんなことを、目に見えない分子の姿や性格を想像し、分子同士のやり取りを思い浮かべながら探っています。
これまで切れなかった結合を切る
さて、この触媒となる分子。「ルイス酸触媒」や「遷移金属錯体触媒」などがあり、それぞれに得意技があります。僕はこれらを上手につなぎ合わせた一つの新しい触媒分子を合成し、それによってこれまで切ることのできなかった不活性な結合を切ることを目指しています。他にもごく最近はじめた研究がありますが、それはまたの機会に。
僕が子供の頃、オゾンホールの拡大が大きな問題として取り上げられていました。化学者が作り出したフロンガスが原因だと言うのですが、それならば、きっとそれを解決するのもまた化学者だろうと漠然と思ったのを覚えています。
化学者が作り出したフロンガスならば化学者にしか分解できないし、代わりとなるものを新たに創り出すのもまた化学者だろうなと。当時は自分がその化学者になるとは全く思っていませんでしたが、気がつけば化学者になっていました。
「ルイス酸点含有錯体触媒を活用する不活性結合の活性化」
◆主な業種
(1) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品
(2) 薬剤・医薬品
(3) その他の化学系
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 製造・施工
(3) 品質管理・評価
長崎大学は小さいけれど総合大学です。この小ささを生かして様々な分野間の交流があります。工学部と水産学部が共同研究をしたり,工学部と医学部が共同研究をしたり。異分野との距離が近いことが長崎大学の強みだと思います。
身の回りの有機化合物が、どんな構造をしているのか調べてみましょう。そして、その構造から、その物質の性質を説明できる部分を見つけてみましょう。なぜタオルは水分をよく吸い、乾きにくいのでしょう?なぜワサビや辛子は唐辛子と違って鼻にツーンとくるのでしょう?都市ガスとプロパンガスの違いは何でしょう?
Q1.感動した/印象に残っている映画は? 『ボヘミアン・ラプソディ』 ラスト20分のための100分のイントロだったのかと思うほど、ラスト20分が圧巻でした。 |
|
Q2.大学時代の部活・サークルは? ハンググライダー・パラグライダーです。空を飛ぶという夢がかないました。 |
|
Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 京都先斗町の一見さんお断りのスナック。終わってからのまかないの晩ご飯がすごい量でした。 |
|
Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? キャンプに行ってのんびりとクラフトビールを飲むことです。 |