光工学・光量子科学

レーザー光

一瞬でモノを変化させるフェムト秒のレーザー光!情報通信機器を作る技術へ


宮地悟代先生

東京農工大学 工学部 化学物理工学科(工学府 化学物理工学専攻)

レーザーについて知りたい人は

トコトンやさしいレーザの本

小林春洋(日刊工業新聞社)

レーザーという変わった光の性質について知ってもらえると思います。興味を持った方はぜひ東京農工大の化学物理工学科に入学してください。私がレーザーの原理から応用までを講義しています。

こんな研究で世界を変えよう!

一瞬でモノを変化させるフェムト秒のレーザー光!情報通信機器を作る技術へ

DVDプレイヤーやバーコードリーダーで活用

私は強い光をモノにあてたときに、モノと光がどのようになるのかを調べる研究をしています。その取り組みでわかったことを、世の中にない応用へと積極的に利用することを行っています。

皆さんは強い光と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。太陽光や稲光を思い浮かべたかもしれませんが、私はレーザー光という光を使っています。

レーザー光は私たちの暮らしの中では、CD・DVD・BDプレイヤーや、バーコードリーダー、医療用メスなど様ざまな場面で使われています。

雷よりも強烈なレーザー光

私の研究室では、フェムト秒という10のマイナス15乗秒という非常に短い時間に光エネルギーを閉じ込めたレーザー光を使っています。

あまりに小さな単位なので実感が沸かないですよね。

光は真空中で1秒間に地球を7週半進みますが、100フェムト秒では食品用ラップフィルム約2枚分の厚さの距離しか進みません。その非常に短い時間・狭い領域に閉じ込められたレーザー光の電気的な強さは、雷よりもはるかに強く、モノの状態を一瞬で変化させることができます。

ちなみに、このレーザーの発生方法は、ジェラール・モーロー博士とドナ・ストリックランド博士によって開発され、2018年にノーベル物理学賞を受賞しています。

電子を操り小さいものを作る

私の研究室では、このような自然界ではなかなか存在しない光を使い、一瞬でモノを変化させると同時にその様子を捉え、うまく操ることを得意としています。

最近では、表面プラズモン・ポラリトンという自由電子で構成される表面素励起を操り、小さいものを作る技術や新しい光触媒技術への応用を積極的に行っています。小さいものを作る技術は、もののインターネット(IoT)や情報通信技術(ICT)、移動性(モビリティー)を支える、高性能なコンピューターやスマートフォンを作ることに欠かせません。

レーザー光を使った新しい技術を提案し、企業と大学、公共団体と連携して研究を進めています。

(左)強いフェムト秒レーザー光を固体表面に当てたときの概略図。電子の周辺に発生した強い電場(近接場)によって固体表面を削ります。(右)削られた後の窒化ガリウム表面の顕微鏡画像。幅100nm、深さ700nmの溝が均一に削られています。
(左)強いフェムト秒レーザー光を固体表面に当てたときの概略図。電子の周辺に発生した強い電場(近接場)によって固体表面を削ります。(右)削られた後の窒化ガリウム表面の顕微鏡画像。幅100nm、深さ700nmの溝が均一に削られています。
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(左)強いフェムト秒レーザー光で微細加工する実験を宮地先生が行っている様子です。(右)実験をするときに着けるゴーグルです。レーザーによって光の波長が異なるので適切なものを選んで使います。
(左)強いフェムト秒レーザー光で微細加工する実験を宮地先生が行っている様子です。(右)実験をするときに着けるゴーグルです。レーザーによって光の波長が異なるので適切なものを選んで使います。
学生たちはどんなところに就職?

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(2) 精密機械・機器(医療機器・光学機器を除く)

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(3) 基礎・応用研究、先行開発

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先生の学部・学科は?

エネルギー、新素材、環境という3つの軸を中心に幅広く化学、物理、電気、機械系分野をカバーする他大学にはないオンリーワンの学科です。基礎となる化学、力学、熱力学、電磁気学、量子力学、数値解析を体系的に学び、「化学工学」と「物理工学」の2コースと3つの軸に対応した科目群が用意され、専門をより深めることができます。

(左)強いフェムト秒レーザー光を照射した後の固体表面の時間変化を測定する実験を学生が行っている様子です。(右)強いレーザー光を作るためにチタンサファイアという石に緑色のレーザー光を当てている様子です。レーザー光は目に入ると危ないのでゴーグルを着けて実験を行います。
(左)強いフェムト秒レーザー光を照射した後の固体表面の時間変化を測定する実験を学生が行っている様子です。(右)強いレーザー光を作るためにチタンサファイアという石に緑色のレーザー光を当てている様子です。レーザー光は目に入ると危ないのでゴーグルを着けて実験を行います。
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中高生におすすめ

ご冗談でしょう、ファインマンさん / 困ります、ファインマンさん

リチャード P. ファインマン、訳:大貫昌子(岩波現代文庫)

リチャード P. ファインマン博士は、1965年、量子電磁力学の発展に大きく寄与したことにより、ジュリアン・S・シュウィンガー博士、朝永振一郎博士とともにノーベル物理学賞を受賞した理論物理学者です。

『ご冗談でしょう、ファインマンさん』や『 困ります、ファインマンさん』では、自由奔放な物理学者の姿がエッセイの形で書かれていて大変読みやすく、私にとって科学者が非常に魅力的なものと感じた貴重な書籍です。是非若いうちに読んでいただき、科学者を目指してもらえればと思います。


銀河英雄伝説(全10巻、外伝全5巻)

田中芳樹(創元SF文庫)

未来の宇宙を舞台とし、民主制と専制君主制のそれぞれの政治体制をとる2つの国家を含め、複数の陣営のイデオロギーが対立する様子が歴史小説の体裁で書かれています。ほとんどの登場人物が20歳代である一方で、皆とても思慮深く、同世代の時に読んだ私はものの考え方についてとても影響を受けました。アニメやコミックがありますが、国語力向上のためにぜひ小説を読んでいただきたいです。私の研究室に配属した学生には毎回読書を勧めています。

一問一答

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