複雑な結晶成長をコンピュータで再現、物理法則を発見する
結晶のバリエーションは環境の違い
私たちの身の回りには、多くの結晶があります。
雪、食塩、鉱物や宝石、半導体、医薬品、中には、タンパク質やアミノ酸からなる結晶など。自然界で作られた結晶もあれば、人間が作り出した結晶もあります。
結晶は、温度や湿度、溶液濃度、不純物の有無など、それが作られた環境の違いによって、形や色、大きさ、物性が大きく変わります。水分子からなる雪の結晶が千差万別の形を示すように、たとえ同じ材料から作ったとしても、同じ結晶が作られるとは限りません。
結晶成長をシミュレーション
私が取り組んでいる研究は、この複雑な結晶成長という自然現象に関する普遍的な物理法則を発見することです。
そのために、結晶成長においてもっとも重要だと思われるいくつかの物理過程に着目し(モデル化)、それぞれの過程を微積分の式を用いて表現し(定式化)、これらの式を組み合わせてコンピュータで解きます(数値計算)。その計算結果が思わしくなければ、モデル化に立ち返って再検討します。
これを繰り返し、実際の結晶成長現象を正しく再現できたとき、物理法則のひとつを解明できたと言えます。
結晶の理解が、宇宙の理解にもつながる
物理法則は、自然科学や科学技術における考え方の基盤です。鉱物結晶の形成時にその内部に残された痕跡から、地球内部や初期太陽系の環境を推測できるように。窒化ガリウムの結晶成長技術が青色LEDの発明に繋がったように。
結晶成長に関する物理法則をひとつひとつ積み上げ、物質科学の発展に貢献したいと考えています。
自宅にあった図鑑の影響か、宇宙に対して漠然とした興味を持っていました。高校では数学と物理学が得意だったこともあり、宇宙物理学が学べる筑波大学に進学しました。
卒業研究のテーマ決めで「空間スケールが小さいテーマ」という漠然とした希望を出したところ(あまりに大きいと頭の中でイメージできないと思った)、隕石に含まれる結晶組織の成因に関する天体物理現象に取り組むことになり(博士論文もこのテーマ)、その後、結晶成長過程そのものへと興味が移りました。
宇宙スケールの物理学から始まって、原子スケールの物理学に落ち着くことになろうとは、高校生のときには想像もしていませんでした。
「微小重力環境下での結晶成長過程における不純物効果の理論的解明」
◆ 三浦研究室HP
◆主な業種
(1) 金属製品
(2) コンピュータ、情報通信機器
◆主な職種
(1) 製造・施工
(2) システムエンジニア
私が所属する名古屋市立大学総合生命理学部の特徴は、「一学科制」である点です。生命科学、化学、物理学、数学、情報科学といった広い理学分野の基礎を学んだ上で、専門分野を選ぶことができます。
高校卒業時点で具体的にやりたいことが決まっていなかったとしても、大学進学後にいろんな分野に実際に触れた上で進路を決めることができるので、私のようにやりたいことが漠然としている学生(「テーマや研究分野に出会ったきっかけ」を参照)にもおすすめです。
・表計算ソフトを使った数値計算
物理現象の多くは、微分を含む方程式(微分方程式)で表されます。結晶成長も例外ではありません。微分方程式をコンピュータで解くことを数値計算といいますが、微分や数列の知識があれば、Microsoft Excelのような表計算ソフトを使って、簡単な問題を解くことが可能です。高校物理で扱うテーマを超えた現象(例えば、空気抵抗を考慮したときの斜方投射など)を数値計算してみると、物理学の広がりを感じることができるでしょう。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 物理学(今と同じ) |
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Q2.大学時代の部活・サークルは? 陸上同好会 |
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Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? フラミンゴを観賞できるレストランのウェイター。閉店後にフラミンゴが過ごしている区画を掃除する仕事があったのですが、すごく臭かったのを覚えています。 |