ナノ材料化学

薄膜材料

独自の装置で、高品質な薄膜を合成


柳瀬隆先生

東邦大学 理学部 化学科(理学研究科 化学専攻)

出会いの一冊

二次元物質の科学 グラフェンなどの分子シートが生み出す新世界

日本化学会(化学同人)

グラフェンに代表される2次元物質は、近年大きな広がりを見せており多様な材料が出現しています。この本ではそれぞれの材料における専門家が集まり、対話形式で研究分野の最新情報と動向について書かれています。各テーマにおける研究内容についても豊富で、好きなテーマを選んで読み進めることができます。

材料化学の奥深さを堪能してください。

こんな研究で世界を変えよう!

独自の装置で、高品質な薄膜を合成

材料を薄くすると異なる性質に

高校化学で学ぶ層状物質(2次元物質)の代表例はグラフェンです。これはグラファイト一層のみを取り出した材料と言えます。

材料を薄くすることで何の意味があるのかと思われるかもしれませんが、極限まで薄くすると厚い状態とはまるで異なる性質を示すことがあります。これを「量子効果」または「サイズ効果」などと呼びます(厳密な意味ではありませんが...)。

薄膜を組み合わせて新たな機能を

量子効果は何もグラフェンに限ったことではなく、私が研究の中心としている遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)でも現れます。

私はそのTMDCの高品質な薄膜を合成する技術の開発を目指しています。将来的には様々な層状物質を組み合わせることで、単一材料では実現できない機能を有する薄膜材料を創出するべく研究を進めています。

装置開発はコツコツした学びの集大成

装置開発では化学に限らず様々な知識が必要になります。真空技術・プログラム技術・配管技術・高圧ガスの知識など様々です。

このような技術や知識は一朝一夕に身に付くものではなく、コツコツとした学びが必要になりますが、実際に動作する装置が完成した時は大きな達成感と充実感が得られます。

自作の化学気相蒸着装置です。原料ガスの供給量はコンピュータ制御しており、市販の装置では対応できない実験が可能になっています。自分で装置を組み上げるには時間と手間がかかりますが、自分のアイデアを形にできる楽しさもあります。それが大学研究における醍醐味とも言えるでしょう。
自作の化学気相蒸着装置です。原料ガスの供給量はコンピュータ制御しており、市販の装置では対応できない実験が可能になっています。自分で装置を組み上げるには時間と手間がかかりますが、自分のアイデアを形にできる楽しさもあります。それが大学研究における醍醐味とも言えるでしょう。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

もともと物理学に興味がありました。それが幸いし、大学生・大学院生時代は数学・物理・化学と偏りなく勉強してきました。化学科の学生として勉強・研究を進めて行く中で、材料化学に興味を持ちました。材料化学では数学・物理・化学の包括的な理解が重要で学生時代における自分の勉強スタイルとマッチしていました。

アボガドロ数の原子が集まって固体が形成されますが、それらは結合の仕方や組み合わせによって多彩な性質を示します。固体が持つ深遠さにはたくさんの魅力が詰まっています。
More is different by P. W. Anderson

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「2次元物質単層シートの組成制御によるバンドギャップエンジニアリングの確立」

詳しくはこちら

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学生たちはどんなところに就職?

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◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

東邦大学は私立理系では珍しく理学部を有しています。理学では純粋な知的好奇心を原動力として、自然の神髄に近づこうとします。大学では基礎=優しい、応用=難しいではありません。自然界の法則や原理を解き明かすことが“基礎"であり、その考え方は幅広く応用が利きます。6つある学科の中から自身の興味に近いものが見つかるのではないでしょうか。女子比率が高く、誰にとっても勉強・研究しやすい環境が整っています。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

元素のすべてがわかる図鑑

若林文高(ナツメ社)

元素の起源や原子構造に関する説明の後、すべての元素について図解で説明されています。高校化学では馴染みのない元素についても知ることができ、さらに身の回りでどのように利用されているかが理解できます。


化学現象から学ぶ化学の数学 基礎から応用まで

田中裕之(オーム社)

大学で化学を学ぼうとすれば、化学だけではなく物理や数学の知識は必須です。入学1年目で学ぶ原子構造は量子力学(物理学の1分野)により理解され、量子力学は線形代数や解析学と言った数学的手法を用いて記述されます。

この本は、大学化学を学ぶ上で重要となる数学の中で比較的難易度の低い題材を取り扱っています。この本に触れることで、数学・物理・化学に密接な繋がりがあることを理解できるでしょう。


図説 世界を変えた50の科学

ピーター・ムーア(原書房)

天文学・物理学・化学・生物学・遺伝学と微生物学から人類にもっとも貢献した発見について分かりやすく書かれています。それぞれの科学者の顔写真または肖像画が合わせて掲載されており、天才達の思考を垣間見ることができます。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

素粒子物理学

Q2.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

『ポケットモンスター』(小学生時代)

Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

英語

Q4.好きな言葉は?

百折不撓


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