ナノ構造物理

グラフェン

舞台は2次元から3次元曲面へ! グラフェンの新機能を創出


田邉洋一先生

岡山理科大学 理学部 基礎理学科

出会いの一冊

フラーレン・ナノチューブ・グラフェンの科学 ナノカーボンの世界

齋藤理一郎(共立出版)

私が研究するグラフェンを含むナノカーボンと呼ばれる物質の歴史に始まり、構造や性質について、広い読者層に伝わるように平易な言葉を丁寧に選んで書かれている本です。ナノカーボンを初めて知るうえで最適な1冊だと思います。

こんな研究で世界を変えよう!

舞台は2次元から3次元曲面へ! グラフェンの新機能を創出

しなやかな炭素原子のシート、グラフェン

皆さんは"グラフェン"という物質を知っていますか。

炭素原子が蜂の巣格子状に並んだ2次元のシートです。グラフェンは、鋼鉄並みのしなやかさから容易に曲げることが可能であり、加えて、電気や熱をよく通すなどの優れた性質を示します。

この高性能の2次元シートを利用した、既存の半導体物質を凌駕する新しいデバイスの研究が現在世界中で行われています。

立体的な曲面構造を用いてグラフェンを集積化する

2次元のグラフェンの様々な外場に対する応答を増幅するには、3Dグラフェンと呼ばれる、グラフェンを用いた3次元の曲面で構成される中空の立体構造を作製し、グラフェンを集積化することが有効です。化学気相蒸着という金属箔の上に高品質なグラフェンを作製する方法を応用して、立体的な金属鋳型の表面にグラフェンを作製し、鋳型を酸で溶かす方法を用いてこのような物質が作製されます。

一方で、3次元の曲面を持つグラフェンが従来のグラフェンと同様な性質を示すのかという3Dグラフェンのデバイス化において極めて根本的な問題がこれまで分かっていませんでした。

私たちの研究室では、3次元ナノ多孔質グラフェンという物質を舞台にこの問題に取り組んでいます。

これまでの研究から、3次元の曲面をもつグラフェンにも質量ゼロのディラック電子と呼ばれる相対論的な粒子が存在するが明らかになり、加えて、曲面の変形やトポロジーを利用することで、この粒子に新しい機能を付与することが可能であることが分かってきました。

3次元のグラフェン曲面を利用した新しい物質科学の展開

グラフェンの3次元の曲面の一部を窒素で置き換えると、曲面の局所変形という従来の2次元物質や3次元物質とは異なる構造的な特徴に由来して、グラフェンのディラック電子の海の中に、局在した動きの遅い電子が現れることが分かり、これを利用した炭素による電極触媒の研究を現在行っています。

このように、曲面を利用することで、既存のグラフェンにはない新しい性質を生み出し、さらに、これらの知見を様々な2次元物質を使った曲面に展開することで、新しい物質科学の舞台が生まれると期待しています。

鉛筆の芯などに使われるグラファイトは、炭素の2次元シートが積み重なった構造を持っています。この2次元シート2枚を取り出したものがグラフェンです。炭素原子1個分0.34nmの厚みを持つ極薄の物質です。この2次元のシートを曲面を利用して立体化すると3Dグラフェンと呼ばれる物質を作ることができます。
鉛筆の芯などに使われるグラファイトは、炭素の2次元シートが積み重なった構造を持っています。この2次元シート2枚を取り出したものがグラフェンです。炭素原子1個分0.34nmの厚みを持つ極薄の物質です。この2次元のシートを曲面を利用して立体化すると3Dグラフェンと呼ばれる物質を作ることができます。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

博士課程を修了して、東北大学で世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の助教をしているときに、共同研究者から1枚物のグラフェンでできた立体を作るから電気伝導を測らないかという提案があり、立体の内部に電解質を注入してトランジスタが作れるなと、ふと思いついて、トランジスタを作って電気伝導の測定を行ったのがきっかけで、曲面の研究を始めました。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「3次元曲面をもつグラフェンのディラック電子物性の解明」

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グラフェンの3次元の曲面でできた立体構造の内部には、様々な物質を詰め込むことができる広大な空間があります。私の研究室では、この空間に、イオン液体と呼ばれる室温で陽イオンと陰イオンに電離した液体を注入して、トランジスタを作製して、3Dグラフェンの電気伝導特性を調べています。
グラフェンの3次元の曲面でできた立体構造の内部には、様々な物質を詰め込むことができる広大な空間があります。私の研究室では、この空間に、イオン液体と呼ばれる室温で陽イオンと陰イオンに電離した液体を注入して、トランジスタを作製して、3Dグラフェンの電気伝導特性を調べています。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等

(2) 自動車・機器

(3) その他の化学系

◆主な職種

(1) 中学校・高校教員など

(2) 設計・開発

(3) 製造・施工

◆学んだことはどう生きる?

研究室の卒業生のおおよそ6割が公立の中学校の理科教員として、2割が一般企業、残りの2割が大学院に進学されています。

先生の学部・学科は?

私の所属する岡山理科大学理学部基礎理学科は、中学校と高校の数学と理科、高校の情報の教員免許を複数の組み合わせで取得することができる全国でも稀な学科です。加えて、数学・理科・情報の3分野の複合的な教員集団を活かして、例えば、私の分野では、物理に加えて、情報や化学の専門家の意見を直接聞きながら、自分の研究に必要なスキルを身に着け実践する環境が整っています。皆さんの様々なアイデアを形にすることができる学科であると思います。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

旅人 ある物理学者の回想

湯川秀樹(角川ソフィア文庫)

大きなことを成し遂げるには、専門分野の知識のみならず、様々な知識や経験、十分な準備が必要であることを教えられます。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

日本史

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

ヤッシャ・ハイフェッツ

Q3.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

『ウイニングイレブン』

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

部屋の模様替え


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