水や土壌の環境DNAを分析し、絶滅危惧種や外来種を調査
捕まえなくても、そこにいる生物がわかる
環境中(水、土、空気など)には、そこにいる生物が放出したDNAが含まれています。2008年、水から取り出したDNA(環境DNA)の分析により、そこにどんな生物がいるか明らかにする方法が登場しました。生物を実際に観察したり捕まえたりしなくても、生物の分布を明らかにできるこの方法は、現在までに急速に発展し、生物調査法として存在感を増しつつあります。
環境DNAで種内変異も調べられる
DNAを構成する塩基の配列からは、生物の種を特定できるだけではなく、種内の個体間の違い(種内変異)までも知ることができます。したがって、種内変異を解析すれば、同じ生物種でも、違う場所にいる集団の「質」の違いを調べることができます。
私は、環境DNAを用いた種内変異分析というアプローチにより、絶滅危惧種の健全性評価や外来種の分布拡大経路推定といった、生物保全に関する研究を進めています。さらに、種内変異をより正確かつ詳細に分析するための手法開発にも取り組んでいます。
環境と生き物の変化を追う
刻々と環境が変化する現代の地球に暮らす生き物たちの動きや変化を追うために、素早く、広範囲に、網羅的な調査を行える環境DNA分析はとても適しています。この手法をいかに上手に活用し、生物多様性や地球環境の保全へと繋げることができるか、この課題にこれからも取り組んでいきたいと思います。
小さい時から動物が好きで、小学生の時に読んだ本といえばシートン動物記や椋鳩十の動物物語など、動物ものばかりでした。家にあった生物図鑑や専門書をなんとなく眺めているうちに研究に興味を持つようになり、なかでも動物行動学に惹かれ、動物行動学が学べるかどうかという観点で大学を選びました。卒論テーマはニホンザルの行動でしたが、学部の講義で生態学に興味が湧いたこともあり、大学院からは生態学の道へ進みました。
「環境DNA分析の機能拡張を目指した核DNAマーカー開発と長鎖配列解析法確立」
◆主な業種
(1) 病院・医療
(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(3) 薬剤・医薬品
◆主な職種
(1) 薬剤師等
(2) セールスエンジニア・技術営業
(3) 大学等研究機関所属の教員・研究者
◆学んだことはどう生きる?
本研究室(衛生・微生物学講座)の卒業生は、毎年1-2名程度が、都道府県の環境課といった環境行政の道に進みます。印象的だったのが、私がとある自治体の環境影響評価委員を務めていた時、卒業生2人が自治体職員として同じ会議に出席していたことです。しっかりと仕事をし、活躍している姿を実際に見ることができ、嬉しく思いました。
薬学と聞けば、薬に関する学問と感じるかもしれません。しかし薬学は実はとても幅広い学問です。たとえば、社会や集団としての健康維持に不可欠な衛生学的研究、そして人や生き物が共生する環境に関する研究も、薬学を形作る学問の一部です。多くの学生さんは薬剤師を目指して薬学部に入学すると思いますが、大阪大谷大学薬学部では、環境科学も本格的に学ぶことができます。学部での学びを通し、環境行政や衛生研究などに興味を抱き、その道に進む学生さんも少なくありません。
理科の実験室にPCR装置があれば、身近に存在する生物の分布を、目視観察と環境DNA分析で比較しながら調べることができます。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 今と同じ、生物に関する学問です。生物はいつも一緒ではありません。環境の変化に応じ、生物もまた変化するところが面白いところです。 |
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Q2.感動した/印象に残っている映画は? 『ハリーとトント』 |
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Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 友人と犬を連れてハイキングやトレッキングに行くこと。プリミティブアートの収集など。 |