廃棄物だったカニ殻が機能性材料として生まれ変わった!
カニの甲羅は「キチン・キトサン」でできている
エビやカニを食べると大量に残る「殻」の部分、何かに使えないかと、気になりませんか。カニの甲羅はとても硬く、普通の刃物は通らないほどです。そんな甲羅は何からできているのでしょうか。甲羅は、カルシウム分と天然多糖である「キチン・キトサン」の組み合わせからなる鉄筋コンクリートのような構造になっています。
薬剤を閉じ込める材料にぴったり
この研究では、エビやカニから採れるバイオマスであるキチン・キトサンに新しい機能を与えて、有効利用可能な天然由来の高機能材料とすることを目的としています。
具体的には、キトサンを直径数十マイクロメートルの微粒子形状に成形し、外側を炭酸カルシウムの殻で覆い「ゆで卵のような二重構造」を持った有機成分と無機成分との複合微粒子材料を作ります。内側に柔らかい有機物、外側に固い無機物の組み合わせは、内部にさまざまな薬剤を封じ込めるのにぴったりです。
木材バイオマスに匹敵する未利用資源
薬剤を封じ込めたコアシェル微粒子を実際に作ってみたところ、まわりのpHに応じて中身を放出したり、しなかったりすることがわかりました。この性質から、マイクロカプセルとしての利用が期待できます。
これまで、ただの廃棄物として扱われていたカニ殻から採れるバイオマス「キトサン」が機能性微粒子材料として生まれ変わった瞬間です。知られていないことですが、木材から採れるセルロースに匹敵する量のキチン・キトサンが自然界で生み出されています。カニ殻から生まれ変わった新しい素材の開発は、環境にやさしいだけでなく、未利用の資源を大切にする取り組みと言えます。
環境にやさしい材料として生分解性樹脂ばかりが目につきますが、天然由来材料の有効活用こそがより環境にやさしいと言えるのではないかと考えています。
元々、生物の仕組みなんかに興味がありました。そのせいもあって、大学では高分子化学科にいながらも、タンパク質を触らせてもらえる研究室に所属していました。その後、しばらく生物周辺から手が離れていたのですが、現在の職場に来てペプチドを合成し始めたのをきっかけに「生物の仕組み」好きが再燃し、今に至ります。最近では貝が、硬い表とツルツルの裏というように、表裏で違う結晶を作っている手法を真似しようとしています。
「海洋バイオマス「キトサン」の有効活用を生み出す有機無機複合コアシェル微粒子化」
◆主な業種
(1) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品
(2) 薬剤・医薬品
◆主な職種
(1) 設計・開発
(2) 品質管理・評価
(3) セールスエンジニア・技術営業
金属やガラスのような無機材料を研究するチーム、高分子から低分子までの有機材料を研究するチーム、さらには遺伝子や細菌に関する研究チームまでといった、かなり幅広い研究領域を一つの学科で含んでいます。
一部の研究領域に特化することなく、さまざまなジャンルに関する専門家がいるということは、応用力として強みだと考えています。滋賀県立大学工学部材料化学科に来ていただければ、どんな方面への興味も満たすことができるでしょう。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 地球物理学 |
|
Q2.一番聴いている音楽アーティストは? VAUNDY「踊り子」 |
|
Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 路線バスに終日乗り続けての利用者数・乗降バス停調査 |