細菌を利用した廃水処理、もっと早く、もっと効率的に
窒素化合物が水質悪化の原因に
私たちの生活により生み出される窒素化合物は、河川や湖沼に排出されると富栄養化などの環境問題を引き起こします。その対策の一つとして、廃水中の窒素化合物を除去する「生物学的廃水処理」という方法があります。
この方法では、「活性汚泥」と呼ばれる泥の中に存在する微生物(細菌)の働きを利用し、窒素化合物を「アンモニア→亜硝酸→硝酸→窒素」へと変換します。
細菌の増殖速度の遅さと密度の低さが課題
それぞれの過程で異なる細菌が働いていますが、第一段階であるアンモニアの酸化過程に関わるのが「アンモニア酸化細菌」であり、私たちはその一種である「ニトロソモナス・ユーロピア」という細菌の研究を行っています。
この細菌は有機物を必要とせず、アンモニアと二酸化炭素を利用して増殖することができるという特徴があります。しかし非常に増殖速度が遅く、最大細菌密度も低いため、廃水処理の高効率化における問題となっています。そこで、私たちは細菌がつくる「バイオフィルム」に着目しました。
細菌が固体の表面につくる「バイオフィルム」に着目
バイオフィルムとは、細菌が固体表面上に結合する際につくる三次元構造体であり、排水溝や流しのねばり、歯垢などもバイオフィルムの一種です。廃水処理プラント内で、アンモニア酸化細菌はバイオフィルムを作って存在していると考えられます。
このバイオフィルム形成を調節する役割をもつのが「環状ジグアニル酸」というシグナル分子です。私たちはこの分子に注目し、細菌内で環状ジグアニル酸を合成または分解する酵素の機能を調べています。
これまでの研究で、アンモニア酸化細菌は多くの環状ジグアニル酸合成酵素と分解酵素を多数もつことがわかってきました。これらの機能の解明が進めば、環状ジグアニル酸というシグナルを介してバイオフィルム形成を制御することができ、窒素化合物除去の高効率化に役立つと考えられます。
「硝化・脱窒菌のバイオフィルム形成制御と応用」
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? アメリカ。留学時代にとても良い経験ができたので。 |
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Q2.大学時代の部活・サークルは? アーチェリー部。身体能力だけではなく、精神力や集中力がかなり重要な要素であるという点にひかれました。自分の放った矢が的の中心を射抜いたとき、何とも言えない気持ちよさを味わえます。 |
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Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 山登り・ハイキング。県内や大学の近くにも気軽に登れる山がいくつもあり、休日には山登りを楽しんでいます。 |