小さな脳部位「視床下部」が、人の意思や行動にどう影響するのか
脳の奥深くを傷つけずに調べる
視床下部は自律神経の中枢と考えられていて、マウスなどの動物を使った研究が広く行われてきています。一方、人間の視床下部は、脳の奥深くにあり、かつ、とても小さいため、その内部の活動を非侵襲的に(頭部を傷つけることなく)調べることはとても難しいことでした。
私の所属する研究室では、最新の磁気共鳴画像法(MRI)の方法を用いてこの限界を突破し、人間の視床下部の詳しい活動を調べることを可能にしました。
視床下部が価値判断や意思決定に関わる
視床下部は、摂食行動をはじめとした人間の行動を調節していることから、食べ物に関する課題を行っているときの脳の活動をMRIで計測しました。すると、視床下部は他の脳領域の活動に影響していて、価値判断や意思決定を調節していることが明らかになりました。
私は、この研究をさらに発展させて、視床下部という小さな脳部位が人間の社会的な行動をも調節している可能性について調べています。
脳内ネットワークの活動に注目
「空腹時に怒りっぽくなる」など、自律神経は人間の行動に影響を与えます。自律神経機能の中枢である視床下部は多くの脳領域に投射していることから、ネットワークとして機能していると考えられます。
そこで、MRIでの脳活動の計測に加えて、経頭蓋磁気刺激法(TMS)を用いて視床下部を含む脳内ネットワークの活動を変化させることで、視床下部が人間の社会的な意思決定を調節するメカニズムを解明することを目指しています。
私は、大学・大学院でニューラルネットワークという人工知能の研究をしていました。人工知能の研究を進めるなかで、人間の知能はどのようになっているかを調べて応用したいと思うようになり、脳の高次機能の研究に軸足を移しました。それから、理化学研究所、ローマにあるサンタ・ルチア財団病院、東京大学、そして現在所属する順天堂大学と、MRIを使って人間の高次機能に関係する脳活動を非侵襲的に調べる研究を進めています。
「人の社会的な意思決定における視床下部の影響とそのメカニズムの解明」
◆ 小川昭利先生HP
◆主な業種
(1) 病院・医療
(2) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
◆主な職種
(1) 医師・歯科医師
(2) 薬剤師等
(3) 大学等研究機関所属の教員・研究者
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 情報工学。新しい研究がどんどんと生まれてくる楽しい研究領域だと思います。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? イタリア。ローマでの研究生活はとても楽しかったです。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? テニス。いまでもテニスを続けているので、大学でテニスを始めて良かったと思っています。 |
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Q4.好きな言葉は? 進まざる者は必ず退き、退かざる者は必ず進む。 |