蛍光X線分析で古代東西交易路「ガラスの道」を追跡
古代のガラス製品は重要な交易品
今日の私たちの生活において、ガラスはなくてはならない素材の一つです。人工的なガラスの生産は今からおよそ4千年前の西アジアで開始され、やがて古代エジプトやユーラシア大陸の各地へと生産技術が広まりました。
ただし、古代におけるガラスの供給地は限定的であったため、当時のガラス製品は実用品であったと同時に、重要な交易品の一つでした。様々な地域で作られたガラス製品が陸や海の交易路を移動し、まだガラスの生産技術が確立されていなかった古代の日本列島にも伝来していました。
化学組成はガラスの「指紋」
ガラス製品は見た目の特徴に乏しく、人文科学的な方法に基づいた起源(生産された地域や年代)の議論には限界があります。一方、古代のガラス製品に含まれる元素の組成(化学組成)は、使用された原料の種類や採取地の違いを強く反映することから、これを「指紋」のように用いることで、その起源を科学的に絞り込むことが可能になります。
小型の分析装置を開発、考古遺跡や博物館で分析
物質の化学組成を分析する方法には様々なものがありますが、古代ガラスを含む文化財を対象とした研究では、非破壊で実施可能な蛍光X線分析法が広く普及しています。
私は、自由に持ち運び可能な小型の蛍光X線分析装置を装置メーカと共同で開発し、国内外の考古遺跡や博物館に持ち込んで、現地で古代ガラス製品を非破壊で分析しています。化学組成を指標としてその起源や流通を理化学的に検証し、古代におけるガラスの伝来経路「ガラスの道」の全貌を明らかにするべく、様々な研究者と協力しながら研究を進めています。
もともと理科が好きだったこともあり、中学卒業後は高等専門学校の化学系の学科に進学しました。ところが、いざ化学ばかりの授業を前にして、「これを覚えて何の役に立つのか」という壁と直面。いまいち自分のやりたいことがわからないまま3年生になった頃、とある先生が授業中に話した雑談で「考古化学」という世界の存在を知り、いま自分が学んでいる知識が幅広い世界に応用できることを認識しました。
高専の卒業研究でお世話になった先生の紹介で、当時東京理科大学で考古化学を含む分析化学の研究をされていた中井泉教授に出会い、中井教授の研究室で学位を取得しました。
「オンサイト蛍光X線分析による古代東西交易路「ガラスの道」の追跡」
東京電機大学工学部応用化学科では、一般的な理工系大学にある「物理化学」「有機化学」「無機・分析化学」の3部門に加えて、「化学工学」についても専門的に授業の中で取り扱うことが特徴です。キャンパスは東京都足立区の北千住駅から歩いてすぐの距離にあり、アクセス性も抜群です。社会の様々な課題に挑戦し、活躍できる研究や人材を養成します。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 研究で色々な国を訪問しましたが、結局一番ほっとするのは日本です。色々な国を見て回ると、自分の国の良さがわかると思いますよ。 |
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Q2.学生時代に/最近、熱中したゲームは? ポケモンです。本家の方は最近ご無沙汰ですが、ポケモンGOの方は細々と続けています。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? 高専卒業後に立教大学理学部化学科に3年次から編入し、そこから大学卒業までの2年間ですが、考古学研究会に所属していました。理系の学科、しかも3年からの新規入会はだいぶ珍しいケースだったようですが、とても楽しかったです。 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? もうすぐ3歳になるこどもと遊ぶことです。車や電車の名前を一緒になって覚えています。 |