古人骨の成分から縄文時代の食生活を復元
骨から食生活がわかる
私は縄文時代人の骨を分析することによって、当時の人々の食生活や社会構造を復元することを目指しています。私たちの体や骨は、摂取した食物から作られているため、古人骨を分析するとどのような食物を摂取していたのかを知ることができます。
具体的には、魚や貝などの海産物の利用に個人差があったことが分かっています。また、古人骨の歯を分析すると、幼少期に住んでいた場所を推定することができ、集団内の他の個体と比較することよって、移入者かどうかを判断することができます。
縄文時代人のエネルギー源は植物質食料
私は昔の食生活の復元のために、新しくほかの成分の元素も利用できないかと研究を進めています。
骨の一部を採取して、実験室で化学分析を行いました。すると骨の成分の中には、食物内のエネルギー源に関する情報も含まれていることが明らかとなりました。この分析によると、縄文時代人はエネルギー源として植物質食料の摂取が大事であったことが考えられます。
ひとつの骨に対して違う分析をすることで、過去の食生活のさまざまな面が見えてきました。私は自分でアイデアを考えて、新しい発見をするところが面白いと思って、研究を続けています。
古人骨研究には、考古学や地球化学の知識も必要
縄文時代人の骨を専門的に調べる研究は、自然人類学や骨考古学と呼ばれています。縄文時代人の古人骨は考古学的な遺跡から発掘されるために、考古学とも深いつながりがあります。また骨の化学分析には、地球化学の知識が必要となります。
若い学生の皆さんには文系・理系の枠組みにとらわれず、広い知識を身につけたり、自分の興味を突き詰めて調べる探究心を磨いたりして欲しいと思います。
大学生のころ自然人類学の授業を受けることで、自然人類学に興味をもつようになりました。古人骨は過去の生活を生き生きと教えてくれます。
学生のころは、自分は何者なのだろうか、いろいろと思い悩むこともあります。自然人類学は、生物進化の視点から、人類が生まれるまでの進化史や、日本人の成り立ちについて教えてくれます。
人であることの意味を探すならばこの分野しかないと思って、自然人類学に進みました。
「安定同位体を用いた縄文時代人の食性・性別推定手法の新規確立」
東海大学の人文学部では、人類学や考古学について幅広く学ぶことができます。自然人類学だけではなく文化人類学の先生もいて、文系・理系の両面から人間について考えることができます。
考古学のうち、遺跡から出土する動物の骨を用いる動物考古学や、海に潜って水中遺跡の研究をする水中考古学についても学ぶことができます。
縄文時代の食生活について調べてみましょう。
家の近くの歴史博物館などを訪問して、縄文時代に関する展示を見てください。その地域には、どのような遺跡があって、どのような食物が出土しているのか確かめてみましょう。
さらに、実際に遺跡の場所を調べて、現在どのようになっているか遺跡を訪問してみると、もっと縄文時代の生活を身近に感じることでしょう。