グラフェンに続け! 新たな原子層物質の探索
グラフェンの発見者にはノーベル賞
2004年、私が大学生だった頃、炭素の原子層「グラフェン」の実験合成が報告されました。グラフェンは身の回りにある3次元的物質とは全く異なる物性を示すため、物理学・化学・工学の観点から活発な研究が続いています。
発見当時は、学会のグラフェンセッションはいつも満員で、また論文サイトarXiv(アーカイブ)には関連する研究論文が毎日10本以上アップロードされ、さらに2010年にはグラフェンの発見者にノーベル物理学賞が贈られ、まさにグラフェンが大フィーバーしていました。
数万種類の無機物質から探索
一般に、グラフェンのように原子の厚さを持つ物質は、「原子層物質(2次元物質)」と呼ばれます。
現在も新たな原子層物質の探索が続いていますが、数万種類あるとされる無機物質のうち何種類が原子層として存在できるかは十分に理解されていないのが現状です。
一方、2010年頃から、ミクロな量子力学に基づいて新たな物質を予測する「計算物質科学」が盛んに研究されています。
量子力学の方程式を数値的に解くためのプログラムが整備され、またスパコンなどの計算機性能が向上し、現在では様々な物質の結晶構造や物性を予測できるようになりました。
100種類以上の存在を予測!
私は、計算物質科学の手法を使って、新たな原子層物質を予測することを目標にして研究を進めています。現在までに、金属、規則合金、イオン性結晶など、100種類以上の原子層が存在することを理論的に予測しました。
今後も計算探索を続けて、グラフェンのような興味深い性質を示す原子層物質を見つけたいと考えています。
「原子層合金科学の展開」
大学の学びが高校と大きく異なる点は、「自分で問題を見つける」ということに尽きると思います。世の中には様々な問題があります。もちろん内容の差異はありますが、社会的ニーズに由来するもの、各人の興味や関心に由来するもの、ある学問分野における未解決問題など、様々な背景のもとで様々な研究者が問題に取り組んでいます。
しかし、「問題を見つける方法」については誰も教えてくれません。むしろ正解がないので教えることができないというのが正しいです。先人たちがどのように荒野を開拓してきたのかを学ぶことで、何かを掴めるのではないかと私は考えています。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 物理学(今と同じ)。やっぱり量子力学が面白いですね。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? アメリカ。ハンバーガーとコーヒーがうまい。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? 無所属でしたが、市民マラソン大会に年5回くらい参加していました。ウルトラ 70 kmも完走しました。 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 子供と一緒に本を読んだりゲームしたりすること。 |