制御・システム工学

ドローンと無人地上機の制御

ドローンが目となり、無人地上機を目的地まで


村尾俊幸先生

金沢工業大学 工学部 ロボティクス学科

出会いの一冊

自動制御とは何か

示村悦二郎(コロナ社)

私の研究室は制御の研究室です。さて、みなさんはそもそも制御という言葉を聞いたことはありますか?制御を英語に直すとコントロール。この言葉なら、野球等を通して、聞いたことがあるのではないでしょうか?

この本は、なかなか製品の表には出てこない、制御とはどんなものかということを、その発展の歴史とともに、教えてくれます。制御を詳しく語るには、通常、数式の使用を避けられないのですが、難しい数式を一切使わずにこの本は書かれています。

制御の技術は様々なところで使われています。目に見えない制御。ぜひみなさんにも興味を持ってもらえると嬉しいです。

こんな研究で世界を変えよう!

ドローンが目となり、無人地上機を目的地まで

力仕事なら地上機で

コンピュータ制御された無人航空機であるドローンに、近年大きな注目が集まっています。ただし、ドローンは上空から俯瞰して状況を把握できるという大きな利点があるものの、力が必要な作業や複雑な作業を行わせるには地上を走行する無人地上車両(地上機)を用いる方がふさわしい場合もあります。

結果としてお互いのデメリットを解消するためにも、ドローンと地上機を組み合わせることが有益であると考えます。

視覚情報で目標軌道を生成

これらへの第一歩として、カメラを有するドローンを介し上空から広域の状況を把握し、その情報をもとに地上機を目的地へ制御する手法を提案しています。

具体的には、上空のドローンから得られる視覚情報により、地上機が建物を避けつつ道路上のみを走行し目的地へ行けるように、ディープラーニングを用いて目標軌道を生成します。そして、ドローンの視覚情報を通して地上機の位置姿勢を推定することで、その目標軌道に一致するように地上機を制御します。

また、ドローンがある一点に留まっていては、道全体をカメラ視野内に入れることができません。運動する地上機に対して適切なカメラ視野を取得できるように、ドローンも自身のカメラ情報を用いて動くように位置と姿勢に対して制御させています。

災害時に活躍するために

例えば災害時等にこのようなシステムを適用しようとした場合に解決すべきことは多く、ドローンに対しては、適切なカメラ視野を取得する際に飛行禁止区域を通過しない制御手法の提案にいまは取り組んでいます。また、地上機に対しては、地上からの状況もセンサによりしっかりと取得できるように、複数台が周囲を見渡すような位置姿勢関係を保ちつつ動くための協調制御に取り組んでいます。

さらに、目的地を指定する人がそれを直感的にできるように、xR(クロスリアリティ)用のデバイス等を用いたドローンや地上機の制御にも取り組んでいます。研究室の学生メンバーと新しい問題に次々と取り組んでいますが、それを解決できたときに一緒に味わえる達成感は最高です。

ドローンのカメラ情報を元に、2台の地上機が道路の上を走行し、目的地へ向かうように制御します。同時に、ドローンも自身のカメラ情報を用いて、位置と姿勢の両方に対して制御しています。
ドローンのカメラ情報を元に、2台の地上機が道路の上を走行し、目的地へ向かうように制御します。同時に、ドローンも自身のカメラ情報を用いて、位置と姿勢の両方に対して制御しています。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

小さい頃からロボットの制御に興味があり...なんてことは全くなく、大学で受けた授業の中で、制御工学を担当された先生の授業が一番分かりやすかったために、制御の研究室を選びました。

MRヘッドセットで視線情報を取得し、指定したフラフープをドローンが通過するように制御しています。操作者はドローンから送られるカメラ映像(写真のディスプレイ出力を参照)を通して、二つあるフラフープの内どちらかを見続けるだけで、後はドローンがそのフラフープを自動で通過するように位置と姿勢を制御しています。
MRヘッドセットで視線情報を取得し、指定したフラフープをドローンが通過するように制御しています。操作者はドローンから送られるカメラ映像(写真のディスプレイ出力を参照)を通して、二つあるフラフープの内どちらかを見続けるだけで、後はドローンがそのフラフープを自動で通過するように位置と姿勢を制御しています。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「複数台のドローン・地上機複合システムに対する視覚フィードバック協調制御」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
研究室メンバーが普段生活する学生部屋で撮影した、2023年度研究室メンバーの集合写真です。向上心が高い学生が集まってくれ、みんなでワイワイやっています。
研究室メンバーが普段生活する学生部屋で撮影した、2023年度研究室メンバーの集合写真です。向上心が高い学生が集まってくれ、みんなでワイワイやっています。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 一般機械・機器、産業機械(工作機械・建設機械等)等

(2) ソフトウエア、情報システム開発

(3) 電気機械・機器(重電系は除く)

◆主な職種

(1) 設計・開発

(2) 生産技術(プラント系以外)

(3) システムエンジニア

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

金沢工業大学のロボティクス学科は、情報工学、電気電子工学、機械工学などを幅広く学ぶことができ、他分野のことも理解できそれらを活かせる技術者を育てています。例えば必修科目では、自分達で設計加工したマイコンカーに対して、回路製作やプログラミングも行い、地面に描いた線に沿って走らせる制御まで行います。

また、ロボットを製作する、もしくはコンピュータ上でプログラムを作成するだけに留まらず、自分の思うようにロボットを制御するということまで卒業研究では行われることが少なくなく、制御工学に関連する研究室が多いのも本学科の特徴です。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

ロボットと生きる世界

土屋誠司(創元社)

私の研究室では、ドローンや地上を走行する移動ロボットの制御に関する研究をしていますが、みなさんはロボットと聞くと、どんな姿を思い描きますか?ロボットに好意的な感情を持っていますか?

この本は、ロボットとは何かという内容から、人間の体の一部になるロボットというような近年の話題まで、簡潔に書かれています。また、ルビ付きで写真やイラストも多いので、低学年の小学生でも読むことができます。もちろん高校生でも勉強になる内容が書かれています。

ロボットをうまく使いながら、人とロボットがお互いを補完しつつ共存していく方法を、みんなで構築できれば良いと思います。


続・ドローン産業応用のすべて 進化する自律飛行が変える未来

野波健蔵(オーム社)

私の研究室では、ドローンを制御対象の一つとしていますが、近年、ドローンは多方面で利活用され始めています。この本を読むと、世界のドローン産業をめぐる最新動向や、日本においてドローン産業応用がどのように進められているかなどを、多角的に把握することができます。

みなさんはドローンに何を期待しますか?乗客用ドローン(空飛ぶクルマ)の動向についてもこの本では紹介されていますが、それらが飛び回る世界もいつの日か実現するのでしょうか?ドローン産業の最新動向を知り、更に便利になる未来をぜひ想像してみてください。


なぜ僕らは働くのか 君が幸せになるために考えてほしい大切なこと

監修:池上彰(学研プラス)

みなさんは将来自分自身がどのように働いているかを、何となくでも想像できていますか?大学4年間は長いようで短く、卒業したらどのように働きたいかを、早い内から考えておく必要があります。

この本は就職活動の指南書ではないですが、働くということに対して、自分の考えを整理するのに役立つ良い本だと思います。また、高校生や中学生の内に読むことで、自分が大学でどういうことを学ぶべきかを、将来の働き方を考慮したうえで深く考えられるようになると思います。

特に、挫折を味わった時や、勉強することや学校に行くことに対し疑問を持った時に、第6章「いま あなたたちに伝えたいこと」の内容が、みなさんの心を少し楽にしてくれるかもしれません。

一問一答

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