「ゆらぎ」から「不規則系物質」を理解する
無秩序性に隠れた秩序性を見つける
液体はミクロに見るとはっきりとした構造がない無秩序な(不規則な)状態です。
ただ一方でマクロに見ると、物質ごとあるいは温度・圧力に応じて決まった性質を有しており、これを決めるなんらかの「秩序」が存在しているはずです。
このような無秩序性に隠れた秩序性を見いだし、液体のみならずガラスなどを含めた「不規則系物質」を理解する基本的枠組みを構築することを目指しています。
メゾスコピックレベルの「ゆらぎ」に着目
我々が注目しているのは、ミクロ(原子分子の時間空間サイズ)よりは少し大きく、マクロ(日常生活のサイズ)よりはかなり小さいメゾスコピックレベルの「ゆらぎ」(=不均質性)です。ここに「秩序」が存在すると見ています。
このサイズの重要性は理論やコンピューターシミュレーションでは意識されてきましたが、実際の実験となると手法は限られており、またアクセスできる時間空間サイズも限定的でした。
放射光施設と超音波装置を利用
我々は、音波を利用してメゾスコピックレベルの動的なゆらぎを直接測定する手法を新たに考案しました。この手法は放射光施設を利用する手法と、超音波装置による手法の2つの音速測定法を併用して行うことで広範囲の時間空間サイズをカバーできるところに特徴があります。
最近では、広範囲の温度圧力域の液体の水にこの手法を適用し、従来の手法では検知が難しかった微小な「ゆらぎ」の変化を測定し、物性との密接な関係性を見いだすことに成功しました。
このような「ゆらぎ」は、仮説として過冷却域にその存在が予言されている液体-液体相転移に伴うものと考えられます。「秩序」の一端をつかめたことで、今後「不規則系物質」研究の発展に寄与できると考えています。
私の学生時代からの元々の研究対象は液体金属で、伝導電子が液体の構造や物性に及ぼす影響を研究していました。
研究の代表例としてテルルという物質がありましたが、ふと液体金属以外に目を向けてみると、液体の水が非常に似た熱力学物性を示すことに気づきます。
液体の物性を決定する「秩序」は実は伝導電子ではなく、メゾスコピックレベルのゆらぎであるとの認識に至り、現在の大きな研究目標ができあがりました。一つの分野に浸りすぎて蛸壺化していては、このような方向性は決して出て来なかったと思います。
「水の音速緩和強度の温度圧力相図の作成-液体液体相転移の検証に向けて」
◆主な業種
(1) コンピュータ、情報通信機器
私の所属している学部は総合科学部で、物理学だけではなく化学や生物学、さらには人文社会系の先生もおられ、様々な授業を受けることが可能です。一つの専門分野に蛸壺化してしまわず、人とは異なるオリジナルな視点で研究を進めることに適しています。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? イタリア。若い頃短期間留学していましたが、なんといっても料理がおいしい! |
|
Q2.感動した/印象に残っている映画は? 『ラ・ラ・ランド』。俳優としての成功を夢見て奮闘する主人公ほか若者達を描いたミュージカル映画。音楽が秀逸です。結局、成功するための秘訣は、、、考えさせられるエンディング。 |
|
Q3.大学時代の部活・サークルは? 体育会バスケットボール部(ただしベンチウォーマー) |
|
Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 小学生の子供達の成長を見守ること。仕事柄、教育の引き出しはいろいろ持っていますが、、、まぁあまり教えすぎずに、自立心を育てることを基本としています。 |