ヴァーチャル日本語 役割語の謎
金水敏(岩波書店)
人はみな自分の母語を話す時、文法や発音など特に意識せずに話しています。単語についても、必要に合わせて使っているだけで、その特徴など意識することはありません。そういう「普段気にせず使っている日本語」の仕組みに気づかせ、言語についての興味を刺激してくれる本です。
そういうところから、日本人にとっての日本語、アメリカ人やイギリス人にとっての英語、留学、日本人が英語を学ぶということ、外国人が日本語を学ぶということ、多言語社会など、様々な方面に興味が広がるといいなと思います。読めば、「日本語って面白い!」となると思います。同様の理由から、『通じない日本語』(窪薗晴夫:著)もおすすめです。
脳活動データを分析、会話力を判定する筆記テストを作る
自動翻訳があれば外国語を学ばなくていいのか
自動翻訳や自動通訳などの技術が進歩すると、外国語を学ぶ必要性はなくなるのでしょうか。近年の技術の進歩は、この問いのリアリティをこれまでになく上げています。確かに、アプリ任せで十分になることも増えるでしょう。
しかし、そのような社会的変化が、逆にリアルでもバーチャル(ネット上)でも、人と人が言語の壁を越えて直接コミュニケーションをする機会を増やすことにつながります。外国語学習/教育の重要性は、また新たな局面を迎えていると言えるでしょう。
筆記テストに頼らざるをえない
日本語教育を含め、現代の外国語教育においては、文法や単語などの知識偏重から、実社会での会話力を重視するようになっています。
しかし、実際問題として、教育現場では、教育成果を検証する方法として筆記テストに頼っている部分が大きいのです。「筆記テストの点が良くても話せない」。こういうジレンマは多くの人が感じるものです。筆記テストを会話力向上やその評価に有効に使うことができれば、教育現場でのメリットは大きいです。
筆記テストと会話タスク時の脳活動データを収集
「筆記テストと会話では頭の使い方が違うはず。でも、それを何とか似せることはできないだろうか」。それがこの研究の発端です。この研究では、日本語学習者に数種類の筆記テストと日本語会話のタスクをやってもらい、脳イメージングシステムを使って脳活動のデータを収集しています。
そのデータの近似性・相違性という新しい視点から、会話力の推定(評価)につながる筆記テストの形式を模索します。
「日本語教育における筆記テスト時と会話時の脳活動の近似性・相違性の研究」
◆よく取り上げるトピックは
「最近不思議に思った日本語の使い方」や「学習者や外国人の友達に聞かれて答えに困った質問」などです。例えば、「『違くね』って『違う』をどう活用させているの」などと質問して、考えてもらいます。
◆主な業種
(1) 日本語教師
(2) 一般企業勤務
◆学んだことはどう生きる?
専門を活かしてということでは、日本語教師として活躍するケースが多いです。国際交流基金やJICAの派遣で、海外で日本語を教えるという進路や、現職の日本語教師の方が、修了後は大学でも日本語を教えるようになるというような進路があります。修士課程での学習と研究が修了後のキャリアに直結しています。また、博士課程に進学するというパターンもあります。
言語教育情報研究科は、言語教育学コースと言語情報コミュニケーションコースから構成され、言語教育学コースは、さらに英語教育学プログラムと日本語教育学プログラムに分かれています。一部の科目を除き、所属するプログラム・コース以外の専門科目も履修することができます。脳科学によるバイリンガリズムおよび第二言語習得関係の研究や、膨大な量のコーパスを活用して、英語・日本語の諸特徴を探る研究を行っています。