なぜフランス貴族が英国議会制度を?その謎を解明
カトリック神学がシモンの国家観を作った
高校の世界史教科書では、1265年のシモン・ド・モンフォールの議会は、イギリス議会制度の初めであると説明されていますが、高校2年生の私がこれを教科書で読んだ時、「そのような画期的な変更がなぜフランス貴族によってなされたのか」という疑問を抱きました。
大学と大学院でイングランド中世史を研究し、英国ケンブリッジ大学で在外研究を行い、ロンドン公文書館で羊皮紙のマニュスクリプトのラテン語史料を解読した結果、謎が解けると同時に、通説とはまったく異なる解釈が可能であるという結論に達しました。シモンの国制観を形成したのは、リンカン司教グロステストのカトリック神学だったのです。
海外渡航の自由化で、研究は世界水準に
英米の学会で成果を発表し、英文研究書も出版しました。大英図書館にも収蔵され、それを読んで英国人研究者もコメントを送ってくれています。戦前の大学教師たちは欧米研究者の成果をコピーして、コメントするのが精一杯で、原史料に基づいて自分独自の歴史像を形成する訓練を受けていませんでした。1970年代に日本人研究者の海外渡航が自由化されて研究状況が一変し、世界水準の研究を日本人が行う機会ができたのです。
古文書を読む訓練をケンブリッジで受けました。ロンドン大学中世史セミナーで研究発表しました。複数の人脈を頼って世界水準の研究者と個別に討論してきました。自分が教師になってから、経験を後継者に伝え、私を乗り越えて、世界水準の歴史家になるように激励しています。
社会の一員としての自覚を持ち、人類の発展に努力する意欲を持つ人格の形成。西洋中世社会の人々も、狭い社会、窮屈な身分制の中でも努力して未来を開いたという事実を実証する能力を身につけさせることができます。
「司教と王国―リンカン司教ロバート・グロステストの司牧と13世紀イングランド国制」
David Carpenter
King’s College London
【イングランド中世史】詳細な史料研究に基づく具体的な歴像構成能力、それをわかりやすく叙述する能力、そして後進の研究者の能力を開花させる能力を尊敬します。既に70歳を超えてなお現役であることも尊敬に値します。
◆業職種
(1) 大学等研究機関所属の教員・研究者
(2) 中学校・高校教員など
(3) 出版関連企業における編集者など
◆学んだことはどう生きる?
日本における西洋史研究を国際水準にまで高め、若手研究者に外国語で成果を公表しうる能力をつけさせました。教員養成系の大学教員となったU君は、一般読者向けの啓蒙書を出版して多くの中高生読者を獲得し、「教科書から学び得ない研究水準を知った」という読者葉書を見せてくれました。仏教系の大学教員となったKさんは、将来の仏僧となる人々に日本とは異なる宗教について講義し、より仏教を理解できると感謝されたと言っていました。
私は既に現役を引退しましたが、在職中は後継者養成に力を入れてきました。教え子のうち大学教員となった者は2名、高校教員になった者は20人を超えます。大学院博士後期課程に進学した者には奨学金を取得して在外研究することを勧め、実際に彼や彼女らは留学し、学位を取得しました。大学入学後は単位取得に終わるのではなく、学部3、4年段階でのゼミ指導を重視する本当の教育者を自分の指導者に選びましょう。あなたの一生がそこで決まります。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 宇宙物理 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 連合王国イングランド、ケンブリッジ。 |
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Q3.研究以外で楽しいことは? 研究テーマで扱った世界中の現場を訪問して、自分の目で確かめること。 |
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Q4.会ってみたい有名人は? シモン・ド・モンフォール |