考古学

新石器文化

氷河期に土器が出現していた!新石器文化の始まりはいつか


小林謙一先生

中央大学 文学部 人文社会学科 日本史学専攻(文学研究科 日本史学専攻)

出会いの一冊

発掘で探る縄文の暮らし 中央大学の考古学

小林謙一(中央大学出版部)

私が、自分の研究を紹介しながら、発掘調査の方法や遺跡のあり方など、考古学の基本からわかりやすく解説し、縄文文化の解明への試みを具体的に説明した本です。

私は、新しい研究方法であるAMS炭素14年代測定法の成果を積極的に取り入れ、謎の多かった縄文時代の暮らしを探っています。神奈川県の縄文遺跡では地元の博物館とともに発掘し、縄文ムラの姿を明らかにしていく研究を進めています。さらに、学生とともに、東京や愛媛など日本各地の縄文遺跡の発掘に挑んでいる活動を、写真などを含めて紹介しています。

こんな研究で世界を変えよう!

氷河期に土器が出現していた!新石器文化の始まりはいつか

発掘数が多く、これから伸びていく日本考古学

考古学は、埋まっている土器などの文物、家や墓などの遺跡から、過去の社会や暮らしを復元する学問です。日本考古学は、明治時代以降に体系化された比較的若い学問ですが、世界的に見て最も発掘数が多く、研究が大きく進展している分野です。

同時に日本独自の方法論に帰結し、世界にその意義を充分に発信していないといわれます。逆に言えば、まだまだ学問を発展させる要素が多く、これから伸びていく分野と考えます。例えば、人文科学の中でも一番自然科学的分析を取り入れやすい分野である点が挙げられます。

遺跡を発掘し、土器を研究するに当たり、日本人ならではの細かい観察とともに、科学の眼を通すことで、様々な新しい成果が上がり、新事実が次々と明らかになってきています。

年代測定法の進展で人類史が塗り替わるかも

その一つに、遺物に対する年代測定法の進展があります。最新研究では、日本を含む東アジアで氷河期の最中である16000年前に土器が出現し、その後急激な温暖化・再寒冷化という気候変動が起き、縄文文化へと変化していることが明らかになり、農耕出現の基盤となる新石器文化の始まりについて再検討が必要となってきました。社会、農耕、戦争の始まりなど、人類社会を考える上での重要な事項がこの時代に現れています。

また、多様な土器文化が東アジアの中で同時期に各地で生じたか、どこかの発生地から拡散したのかなど、新たな問題が現れています。過去の社会へ、最新科学を使って迫っていきたいと考えています。

愛媛県上黒岩第2岩陰遺跡発掘調査風景(2018年度) 8000年以上前の縄紋時代早期埋葬人骨がみつかりました。再葬と思われる集積骨葬とい言う特殊な葬制が注目されます。
愛媛県上黒岩第2岩陰遺跡発掘調査風景(2018年度) 8000年以上前の縄紋時代早期埋葬人骨がみつかりました。再葬と思われる集積骨葬とい言う特殊な葬制が注目されます。
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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「歴史に学ぶ」という言葉があります。エコロジカルな暮らしの代表は、まさに先史時代の社会システムであり、日本列島の旧石器時代、縄文時代、弥生時代の豊かな自然に適応した暮らしから、現代社会が忘れている生活の達人のヒントがわかってきます。

例えば、旧石器時代から縄文時代への変化の時期は、100年間に10度近く平均気温が上昇しました。人類が急激な温暖化をどのように乗り切ったのか、探る必要があるのです。

◆先生が心がけていることは?

過去を知り、現在を確かめること。気候変動への対応や、環境保全は、まず歴史的過程を明らかにし、そこから解決策を模索し、社会へと還元していく努力を自覚的に行っています。過去を温(たず)ねることで、現代を向上させることを目指しています。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「東アジア新石器文化の実年代体系化による環境変動と生業・社会変化過程の解明」

詳しくはこちら

注目の研究者や研究の大学へ行こう!
どこで学べる?
先生の研究室では

考古学研究室なので、遺跡発掘に参加してもらい、出土した遺物の整理作業に積極的に参加してもらいます。また、外部の研究者が参加する研究会などにも参加することを薦めています。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
福島県和台遺跡発掘調査考古学ゼミ・メンバー(2019年度) 縄紋中期の大集落遺跡である、福島県福島市の和台遺跡の史跡整備事業の発掘調査にゼミで参加し、発掘しました。
福島県和台遺跡発掘調査考古学ゼミ・メンバー(2019年度) 縄紋中期の大集落遺跡である、福島県福島市の和台遺跡の史跡整備事業の発掘調査にゼミで参加し、発掘しました。
先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

(1) 小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等

(2) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関

(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関、博物館等

◆主な職種

(1) 中学校・高校教員など

(2) 大学等研究機関所属の教員・研究者

(3) その他教育機関教員、インストラクター、博物館学芸員

◆学んだことはどう生きる?

日本は、世界でも最も多く発掘をしている国です。多くの遺跡が狭い国土に密集しており、開発行為により破壊される遺跡も多いので、きちんとした調査をすることが義務づけられています。そのため、考古学の国立研究機関、都道府県の埋蔵文化財センター、市町村の研究者、発掘調査員、文化財担当者が数多く活躍しており、最近では民間の発掘会社も増えています。


そういった第一線で発掘や遺跡保存に関わる人たちが、日本の考古学研究を推し進めるとともに、歴史性豊かな日本社会を形成する人的資源となっています。考古学研究室からは、大学や博物館所属の研究者はもちろんですが、高校中学の教員、各地で発掘する調査員、遺跡を保護する文化財行政職という公務員に多くの人達が巣立ち、活躍しています。

先生の学部・学科は?

中央大学文学部の日本史学専攻は、同一の専攻科の中に文献史学(文書・文字記録から歴史を復元する学問分野)の教員と、考古学(物質文化から歴史を復元する学問分野)の教員が一緒に研究し、教育しています。すなわち、多様な面から文化の様々な姿を学ぶ方法を勉強でき、歴史の実体を解明することができる大きなメリットがあります。歴史研究は、過去の社会という異なる文化を理解し、その理解力を、現代の我々が置かれている問題点の解決や未来予測に応用することができる、人類社会が発展していくための基盤となる学問体系です。

中高生におすすめ

魏志倭人伝の考古学

佐原真(岩波現代文庫)

中国の史書に断片的にしか書かれていない、日本古代の女王・卑弥呼の邪馬台国。いわば伝説の存在を、考古学によって明らかにしていく試みにワクワクさせられます。


考古学の散歩道 

田中琢、佐原真(岩波新書)

発掘調査から探る日本の古代史について、そのアプローチのあり方を豊富なエピソードで探ります。


もののけ姫(映画)

宮崎駿(監督)

縄文文化とアイヌ、中世が混沌としてるような不思議な世界観と、その中でも歴史的、民俗学的考証がしっかりとなされている面白さがあります。


先生に一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

韓国。食べ物がおいしいから。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

松任谷由実。その中でも『ひこうき雲』がお気に入り。

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『七人の侍』

Q4.大学時代の部活・サークルは?

考古学研究会

Q5.会ってみたい有名人は?

宮崎駿