氷河期に土器が出現していた!新石器文化の始まりはいつか
発掘数が多く、これから伸びていく日本考古学
考古学は、埋まっている土器などの文物、家や墓などの遺跡から、過去の社会や暮らしを復元する学問です。日本考古学は、明治時代以降に体系化された比較的若い学問ですが、世界的に見て最も発掘数が多く、研究が大きく進展している分野です。
同時に日本独自の方法論に帰結し、世界にその意義を充分に発信していないといわれます。逆に言えば、まだまだ学問を発展させる要素が多く、これから伸びていく分野と考えます。例えば、人文科学の中でも一番自然科学的分析を取り入れやすい分野である点が挙げられます。
遺跡を発掘し、土器を研究するに当たり、日本人ならではの細かい観察とともに、科学の眼を通すことで、様々な新しい成果が上がり、新事実が次々と明らかになってきています。
年代測定法の進展で人類史が塗り替わるかも
その一つに、遺物に対する年代測定法の進展があります。最新研究では、日本を含む東アジアで氷河期の最中である16000年前に土器が出現し、その後急激な温暖化・再寒冷化という気候変動が起き、縄文文化へと変化していることが明らかになり、農耕出現の基盤となる新石器文化の始まりについて再検討が必要となってきました。社会、農耕、戦争の始まりなど、人類社会を考える上での重要な事項がこの時代に現れています。
また、多様な土器文化が東アジアの中で同時期に各地で生じたか、どこかの発生地から拡散したのかなど、新たな問題が現れています。過去の社会へ、最新科学を使って迫っていきたいと考えています。
「歴史に学ぶ」という言葉があります。エコロジカルな暮らしの代表は、まさに先史時代の社会システムであり、日本列島の旧石器時代、縄文時代、弥生時代の豊かな自然に適応した暮らしから、現代社会が忘れている生活の達人のヒントがわかってきます。
例えば、旧石器時代から縄文時代への変化の時期は、100年間に10度近く平均気温が上昇しました。人類が急激な温暖化をどのように乗り切ったのか、探る必要があるのです。
◆先生が心がけていることは?
過去を知り、現在を確かめること。気候変動への対応や、環境保全は、まず歴史的過程を明らかにし、そこから解決策を模索し、社会へと還元していく努力を自覚的に行っています。過去を温(たず)ねることで、現代を向上させることを目指しています。
「東アジア新石器文化の実年代体系化による環境変動と生業・社会変化過程の解明」
工藤雄一郎
学習院女子大学 国際文化交流学部 日本文化学科
日本先史時代の環境復元、植物利用の解明に携わっています。若手研究者として、環境史・生態史から歴史を見る視点から、自然科学研究と考古学の融合を目指しています。
小畑弘己
熊本大学 文学部 歴史学科/社会文化科学教育部 文化学専攻
縄文時代の土器に混ざっている植物や昆虫などから、食料の復元を試みています。日本唯一のユニークな手法で、世界に通用するものです。
考古学研究室なので、遺跡発掘に参加してもらい、出土した遺物の整理作業に積極的に参加してもらいます。また、外部の研究者が参加する研究会などにも参加することを薦めています。
◆「発掘で探る縄文文化 先史日本の暮らし」(中央大学公式YouTube)
◆「縄文文化の実像を探る」(中央大学公式YouTube)
◆「炭素14年代測定による新・考古学」(Chuo Online)
◆「土器はいつから? 人類文化の画期を探る」(Chuo Online)
◆主な業種
(1) 小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等
(2) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関、博物館等
◆主な職種
(1) 中学校・高校教員など
(2) 大学等研究機関所属の教員・研究者
(3) その他教育機関教員、インストラクター、博物館学芸員
◆学んだことはどう生きる?
日本は、世界でも最も多く発掘をしている国です。多くの遺跡が狭い国土に密集しており、開発行為により破壊される遺跡も多いので、きちんとした調査をすることが義務づけられています。そのため、考古学の国立研究機関、都道府県の埋蔵文化財センター、市町村の研究者、発掘調査員、文化財担当者が数多く活躍しており、最近では民間の発掘会社も増えています。
そういった第一線で発掘や遺跡保存に関わる人たちが、日本の考古学研究を推し進めるとともに、歴史性豊かな日本社会を形成する人的資源となっています。考古学研究室からは、大学や博物館所属の研究者はもちろんですが、高校中学の教員、各地で発掘する調査員、遺跡を保護する文化財行政職という公務員に多くの人達が巣立ち、活躍しています。
中央大学文学部の日本史学専攻は、同一の専攻科の中に文献史学(文書・文字記録から歴史を復元する学問分野)の教員と、考古学(物質文化から歴史を復元する学問分野)の教員が一緒に研究し、教育しています。すなわち、多様な面から文化の様々な姿を学ぶ方法を勉強でき、歴史の実体を解明することができる大きなメリットがあります。歴史研究は、過去の社会という異なる文化を理解し、その理解力を、現代の我々が置かれている問題点の解決や未来予測に応用することができる、人類社会が発展していくための基盤となる学問体系です。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 韓国。食べ物がおいしいから。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? 松任谷由実。その中でも『ひこうき雲』がお気に入り。 |
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Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は? 『七人の侍』 |
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Q4.大学時代の部活・サークルは? 考古学研究会 |
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Q5.会ってみたい有名人は? 宮崎駿 |