フィリピン南部の紛争影響地域で調査。「武器を取るな」はきれいごとか
中高生の頃からの「武力紛争を止めたい」想い
皆さんは、武力紛争というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。住み慣れた家を離れて生活する難民、ミサイルで破壊された市街地、機関銃やロケット砲が飛び交う野戦。私たちがメディアを通して知る紛争地は、どれもこれも悲惨なものです。
同時代に生きる者として、なんとか武力紛争を止めたい、止めるための貢献をしたい。中高生の頃は、私も皆さんと同じく、そのように思っていました。そして、今でもその想いは変わりません。
25年以上紛争地域の人々に聞き取り調査
そのようなことから、私はまずは武力紛争を生きる当事者の視点を理解したい、と思うようになりました。そして、気が付けば、過去25年以上にわたってフィリピン南部の紛争影響地域に通い、家族を失った人々、銃を取って戦う人々、和平交渉に携わる人々の話を聞いています。
多くが私たちと変わらない普通の庶民、いや私たちよりも不正義な立場に置かれているからこそ命を懸けて闘っている人たちで、話を聞くたびに、「武器を取るな」と第三者が簡単に言うことができない厳しい現実があることに突き当たっています。
今では、武力紛争を止めることに貢献するためには、こうした当事者の視点を理解することが第三者に課された責務ではないかとも思うようになりました。
武力紛争を戦ってきた人々の動きを本にしたい
現在、フィリピン南部では、最大武装勢力とフィリピン政府との和平交渉が進み、2022年に新自治政府を設立する動きが進んでいます。約50年間もの長きにわたる武力紛争を戦ってきた人たちが、どのように自分たちの政府を設立し、平和を築くのか。それを記録し、本にしたいと思っています。
「フィリピン南部の平和構築:新自治政府設立をめぐる課題の解明」