ヨーロッパ文学

森鴎外

ヨーロッパ古典劇を歌舞伎風に!鴎外の翻訳劇の魅力


井戸田総一郎先生

明治大学 文学部 名誉教授

出会いの一冊

チリの地震 クライスト短編集

ハインリヒ・フォン・クライスト、訳:種村季弘(河出文庫)

「チリの地震」は災害文学の古典です。1755年に起こったリスボンの大地震が成立の背景にあります。未曽有の災害は、神への信仰の問題を引き起こしました。鴎外の翻訳が、日本で最初のものです。

こんな研究で世界を変えよう!

ヨーロッパ古典劇を歌舞伎風に!鴎外の翻訳劇の魅力

医学と文学の両方を極めた森鴎外

森鴎外は日本屈指の国際人であり、医学、衛生学、都市工学などの自然科学分野と文学、美術などの人文科学分野の両方を極めた領域横断型の知識人です。このような知的関心の広さに私が最初に気づいたのは、鴎外の劇場論を読んだ時でした。

1880年代にヨーロッパで展開していた衛生学的、防災学的に安全な劇場を巡る議論を、鷗外はいち早く東京に導入し、日本の伝統的な劇場構造の利点を生かしながら、安全な劇場を設計する具体的な案を練っています。

ヨーロッパ文芸を日本語に溶け込ませる工夫

鴎外のドイツ語論文を読めば、その傑出した語学力に驚きます。しかし鴎外の優れたところは、その語学力を駆使して得たヨーロッパ文芸の精髄を紹介するだけではなく、日本語の文芸世界に溶け込ませようと、様々な工夫を編み出していることです。鴎外の演劇翻訳の世界を散策する楽しみは、その工夫に出会い、鴎外の知性の働き具合を実感できるところにあります。

ゲーテやイプセンにも挑む

カルデロンやレッシングのようなヨーロッパの古典を歌舞伎風の七五調に訳したり、イプセンの近代劇を日本の古風な定型詩の中に入れ込んでみたり、あるいはゲーテの大曲『ファウスト』を、当時の新しい標準的な日本語に移し替えてみたり、その技芸の鮮やかさと、それに挑む勇気にはいつも感心しています。

私はドイツ文学者であり、日本文学の研究者とは少し異なる視点から、ニーチェやゲーテに接するように鴎外にアプローチしています。

ベルリンのドイツ大統領府の中庭、フンボルト財団年次総会参加に際して撮影
ベルリンのドイツ大統領府の中庭、フンボルト財団年次総会参加に際して撮影
先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「鴎外の演劇翻訳・改作・創作に関する日独比較文体論及び文献学的詩学に基づく国際研究」

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大学院の授業風景
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中高生におすすめ

ニーチェの顔 他十三篇

氷上英廣、編:三島憲一(岩波文庫)

本書の『芸術の夕映え』には、鴎外とニーチェを関係づけた記述もあります。ニーチェの入門書として興味深く読めます。


山椒大夫・高瀬舟

森鴎外(新潮文庫)

『山椒大夫』は、中世の説教節『さんせう太夫』をもとにして改作した作品です。古典や伝承を近代において改作し、新たな生命を与える文学の試みについて、鴎外はホーフマンスタールから刺激を受けています。


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