聞き間違いを避けるために、どんな発音を強調しているか
「あざす」と言う若者も、ゆっくり丁寧に話すシーンがある
最近の研究で、私たちはコミュニケーションをする時に無意識のうちに発音を微調整・チューニングしているということがわかってきています。例えば、聞き慣れた表現は省略して「あざす」のように言ったりしますが、重要なキーワードなどは反対に、間違えないようにゆっくりハッキリ言いますよね。
「過去」と「括弧」を聞き間違えないよう区別する工夫
他にも詳しく調べてみると、「金(きん)」「銀(ぎん)」(kin vs. gin)や、「過去(かこ)」「括弧(かっこ)」(kako vs. kakko)のような、発音上非常に似ている単語のペアでは、濁点があるかないか、小さい「っ」があるかないかの違いだけなので、この場合、青字の部分の音をより長くしたり、より短くしたりして、お互いを区別しやすくすることがわかりました。
私の研究では、このような区別のための強調発音がどのような条件で、どのように起こるのかについて、「コーパス」という話し言葉のビッグデータを使って調査しています。
強調発音を調べることは、人間の言語を理解すること
このような強調発音は、各言語がどのような特徴を持っているか、どのような単語で構成されているかによって変わってきます。また、言語は変化するものだということは歴史が示していますが、強調発音の長期間の積み重ねがその変化の仕方に影響しているという可能性も指摘されています。
したがって、強調発音を調べることは、発音の仕組みやコミュニケーションの特徴だけでなく、言語の違いを超えて、人間の言語を理解する上で重要な役割を持つと言えます。
「音韻的対立・語彙的な区別が言語要素の実現形・分布に与える影響に関する研究」