スポーツ国家アメリカ 民主主義と巨大ビジネスのはざまで
鈴木透(中公新書)
今や世界で唯一の大国ともいえるアメリカ合衆国。アメリカンフットボールやベースボールなどの巨大なスポーツ・ビジネスを運営するスポーツ大国でもあります。このスポーツを題材に、人種やジェンダー・性の問題はもちろんのこと、ドーピングなどの社会問題からトランプ第45代大統領とプロレスの因果な関係など、興味深い話題を通じてアメリカ文化・思想の根幹をあぶり出しています。
著者は近著『食の実験場アメリカ ファーストフード帝国のゆくえ』(2019)で、ハンバーガーやフライドチキンといったアメリカの大衆食を例に、移民文化を論じる力量の持ち主です。多方面に渡る博学ぶりには、頭が下がります。
ヴェトナム難民文学から、戦争の実態を知る
映画・小説は、白人の描くヴェトナム戦争ばかり
私がヴェトナム系アメリカ文化・文学の研究を始めたのは、今から20年ほど前です。当時、大学でアメリカ文学史の授業を持っていた私は、ヴェトナム戦争の文化・文学を教えるにあたり、作品の多くがヨーロッパ系アメリカ白人による映画や小説であることに戸惑いを感じました。
在米ヴェトナム難民が描く文学に注目
というのも戦争というのは、二つの陣営によって戦われます。片方の言い分だけでは、その実体は見えてきません。身近な例として、第二次世界大戦末期、アメリカは日本に原爆を投下しましたが、今でもその受け止め方は日本とアメリカで大きく異なります。
だからヴェトナムの戦争文学を読みたいと思ったのですが、ここで大きな問題に直面しました。私自身ヴェトナム語ができなかったのです。もっとも、仮にヴェトナム語に精通していたとして、共産党支配が続くヴェトナムでは、自由な文芸活動は認められていませんでした。そこで目に留まったのが、アメリカに住むヴェトナム難民の描く文学だったのです。
ヴェトナム難民文化の登場に立ち会えた幸運
ヴェトナム戦争終結から四半世紀を過ぎた当時、次々と新進気鋭の難民作家・芸術家がアメリカで活躍し始めていたこともあり、一気にその研究にのめり込んでいきました。
学問というのは、長い時間をかけて熟成されていくものですが、新たな学問分野の登場に運良く立ち会うこともあります。今から思えば、ヴェトナム系難民文化の登場という局面に接することができた自分は、実に恵まれていたと思います。
「太平洋横断的ヴェトナム系アメリカ文化研究の構築にむけてー難民文化の再越境と変容」
海外、とりわけアメリカ社会・文化に関心を示す学生が多いことから、私自身の留学体験を話すこともあれば、研究等で訪れたアメリカの大学や都市の様子から、社会の仕組みに話題を展開することもあります。
◆主な業種
(1) 金融・保険・証券・ファイナンシャル
(2) 自動車・機器
(3) ホテル・宿泊・旅行・観光
◆学んだことはどう生きる?
学部学生の就職先は多岐に渡ります。私のゼミに所属する学生たちも様々な企業に就職していますが、近年は金融やメーカーにお世話になる場合が多いように感じています。また、海外の大学院へ進学する学生も珍しくありません。ゼミでは、アフリカ系やアジア系の文化や歴史をテーマにアメリカ社会の仕組みを学んでいることもあり、英語のスキルを活かしてグローバルな舞台で活躍することを目指す学生が集まっています。
早稲田大学国際教養学部は、英語で授業を行う未来志向の学部です。多くの留学生が正規学生として就学し、日本にいながら留学体験を得られます。また、四年間の学生生活の中の一年間は、世界中の大学で留学生活を送る機会も提供しています。グローバル企業への就職に強いことはもちろんですが、海外の大学院に進学する学生も多く、まさにこれからの時代に相応しい学び場です。