ダンスってかっこいいですよね。情報処理の力を使えば、もっとかっこよくなります。土田修平先生は、ダンス情報処理という新しい研究分野を提唱しました。ダンス情報を対象とした多様な技術、研究テーマをカバーします。ワクワクドキドキする新しいダンスの世界を紹介しましょう。
ダンサーを助ける情報処理で、豊かなダンス表現の世界へ
ダンス練習支援システムを開発
中学生のころから、私はダンスがめちゃくちゃ好きです。そんな私は、ダンス情報処理という新たな分野で、ダンスの習得支援や表現拡張といったダンスに関する様々な研究を行っています。
最初に取り組んだのは、グループダンスの練習支援システムです。
グループダンスを練習する際、ダンサーが全員いないと、自分と隣のダンサーの間の距離感がつかみにくくなる、といったような問題がよく起こります。
その問題を解決するために、1人分くらいの大きさのスクリーンに、ダンサーの映像を投影する装置を作りました。ダンサーは、鏡を通して隣り合わせのダンサーの映像などを確認でき、全員揃っていなくても問題なくグループダンスの練習ができるようになりました。
また、ロボットとダンスを組み合わせたパフォーマンスが将来広がるだろうと予測し、そのようなパフォーマンス環境を構築しました。
同時に、新しいロボットも開発しました。このロボットはLEDが1000個ぐらいついていて、ロボットのホイールの回転とLEDの光の回転を同期させることで、実物の球体がまるで転がっているかのような表現を見せることができます。
それによって、従来のロボットでは不可能な表現を見せることができるようになりました。
ダンスをかっこよく見せる情報処理
ダンスモーションというのは様々な信号波形データの集まりとして見ることができます。楽曲もまた同様に信号波形データとして捉えることができます。
この異なる2つの波形を解析していくことで、ダンスに関わる様々な人をサポートできると考えています。
例えばダンスをかっこよく見せるための動画編集法がわからないと困っている人がいても大丈夫です。私のシステムがあれば、どのようにカメラを切り替えれば自分のダンスが魅力的に映るか、ヒートマップの色情報を用いて編集をサポートしてくれます。
また、自分のイメージするダンスに合った曲がなかなか見つからないと困っている人がいても、このシステムがあれば、カメラの前で踊るだけで、そのダンスに適した楽曲を教えてくれます。
さらに私は、世界に類のない大規模なストリートダンスデータの動画データベースを作成しました。このデータベースは1万3940本の動画と60曲の楽曲を持っており、研究目的であれば誰でも利用できます。
なぜこのようなデータベースを作ったか。例えば、ダンスの動画映像から、あるダンステクニックを検出するシステムが2つあった場合、このデータベースがあればどちらのテクニックが優れているか、比較できるようになります。
ダンスというものは、人の根幹となる身体から発せられるものです。単にアート、エンターテイメント分野にとどまるものでなく、人の文化や歴史、宗教や社会、医療、教育など、ダンスの活動範囲は多岐に渡ります。
情報処理技術を駆使してダンスを紐解いていくことは、人を深く理解することに繋がります。結果として人と人との相互理解に繋がっていくと考えております。
◆先生は研究テーマをどのように見つけたのでしょうか。
中学の頃からダンスに夢中で、大学に入ったら毎日練習するぞという意気込みで大学受験に挑んでいました。大学に入って研究室に配属されたら、研究室の先輩がダンスの表現を豊かにするための光る服の研究をしていました。その時、教授から「土田君もダンスについて研究してみたら?」と提案され、それが研究を始めるきっかけになりました。
その後は、様々な研究や技術を学びながら、自分のダンスをもっとカッコよくしたいとか、ダンスに関わる人たちが喜ぶような技術を開発したいと色々考えてきました。様々なアイデアを教授方にぶつけていくうちに、少しずつどのようなアイデアが良いかがわかってくるのかなと思います。
まずは、自分の興味があることをテーマに、思いついたアイデアを周りの人たちに積極的に話すことが重要です。その経験が新しい発見や学びに繋がると思います。
ヒップホップ・ジェネレーション 「スタイル」で世界を変えた若者たちの物語
ジェフ・チャン、押野素子:訳(リットーミュージック)
Hiphopの成り立ちがすごく面白くて、学生の時はこの本以外にも当時の写真集を購入したり、現役DJによるHiphopの歴史に関する講演に聞きに行ったりしていました。文化が創られる過程を知ることができて、しかも関わった方々がまだ生きている!ということにすごく痺れました。Netflixの「ヒップホップ・エボリューション」もすごくオススメですよ!
Mind Hacks ―実験で知る脳と心のシステム
トム・スタッフォード マット・ウェッブ、夏目大:訳(オライリージャパン)
脳の働きを理解する本です。感覚や記憶の仕組みを、さまざまな実験から学びます。自分や他人の行動を理解したい人にオススメかもしれません。脳や心理学への興味を広げるきっかけになると思います。