電子黒板やデジタル教科書が普及し、学校で生徒がパソコン、タブレットを持ち込む授業が増えつつあります。しかし、デジタル教材は、有効な学習システムなのかという声も少なくありません。島田敬士先生は、情報処理技術を使って学習の分析をします。そしてデジタル教科書をより効果的に使う、学習システムを開発してきました。
温度分布で学習進行ペースを把握。デジタル教科書をより有効に活用する法
先生の授業、速すぎない?生徒の学習ペースを自動検出!
これまで学校の授業では紙媒体の教科書が使われてきましたが、学校のICT環境が整うにつれて、徐々にデジタル教科書が普及し始めています。その結果、教育現場から様々な学習、教育に関するデータが集められるようになっています。出席の状況やレポートの収集、テストの実施、あるいは関連図書の推薦なども、容易になりました。
しかしデジタル教科書を使った説明にどこまで生徒が理解しているのか、まだ疑問を持つ人は多いと思います。私は、授業での先生の説明に生徒がついてきているのか、あるいは先生の説明が速すぎてついていけていないのかについて、リアルタイム分析や可視化に関する技術の開発を行っています。具体的には、各生徒が今この時、デジタル教科書の何ページ目を開いているのか、温度分布を用いて、一目で教室全体の生徒の教科書の閲覧状況がわかるシステムです。
仮に先生が15ページ目を説明しているとき、15ページ付近に生徒の温度分布も高ければ、生徒は先生の説明についていけていることになります。それを先生が見れば、多くの生徒は今の授業スピードについてきていることが確認できるため、そのままのペースで授業を進められます。生徒が13ページ目とか前のほうのページを見ているのなら、授業進行のペースを落としたほうがよいと判断できます。このようにその場の状況に応じて、授業進行ペースを修正できるようになりました。
予習の重要ポイントを自動要約してくれるシステム
また私は、教科書の予習を支援する、教材の「自動要約システム」を開発しました。先生が次の授業で教える内容をすべて予習課題にしてしまうと、生徒の負担はあまりにも大きいです。そこで画像処理や自然言語処理などの情報処理技術を使って、デジタル教科書の重要ポイントだけを自動的に抽出できるようにしました。その結果、予習達成率は飛躍アップしました。
もう1つ重要な問題に、先生の説明は本当に正しく生徒に伝わったのか、という疑問があります。これを解決するために、共同研究者の山田政寛先生(九州大学)が開発された、生徒に知識マップを作ってもらうというシステムを利用しています。まず生徒は教科書の重要と思った複数のキーワードに印をつけ、キーワード同士の関係から、自分の目線で知識マップを作ってもらいます。多くの生徒から集まった知識マップから、生徒からどのようなキーワードが注目され、生徒は授業から何を学んだかを先生が効率よく把握できるように、知識マップを統合解析して可視化することを可能にしました。
このように教育学習データを解析し、授業にフィードバックする様々な情報技術の開発に取り組んでいるのです。