ICTの活用でもっと鉄道やバスを便利に使えるようにならないか、遅れたり乗り換えたりの不安を解消できないか。JR東日本研究開発センターの日高さんは、そんな悩みを解消するためDoor To Doorの公共交通ナビゲーション(Mobility as a Service)を研究開発しています。
Door To Doorの公共交通ナビゲーションサービスを目指して
私は鉄道で「人」と「場所」をつなげる仕事がしたいと思っています。ICTの力でもっと交通を便利にできないかという思いです。
JR東日本アプリを紹介しましょう。1つ目の実例として、電車が遅れた時の不安を解消したいと、リアルタイム列車位置情報システムを開発しました。このシステムは、これまで鉄道事業者しか見られなかった情報を、スマホに配信するしくみで、データシステム面、デザイン面で2年間、試行錯誤を繰り返し開発しました。
その中で苦労した点を1つ紹介します。電車が発車するという情報は、センサー→サーバ→ユーザーへと伝播するのにどうしても1、2分かかります。その遅れはユーザーからすると、ホームにいるはずの列車はすでに出発した後ということになってしまいます。それではユーザーは困ります。そこでアイコンデザインの改良でデータの遅延を見越した工夫をしました。「列車が駅にいる」という状態は表示せず、列車が到着前あるいは出発後という表示にして、ユーザーに混乱のないサービスとすることができました。2014年にスマホアプリとしてリリースすると、皆さんから好反応をいただきました。
次の実例として、駅で迷うことを解消したいと、駅構内ナビゲーションアプリを開発しました。実際に、東京駅に電波を発信するビーコン(信号の発信機)160個を取り付け、スマホを見れば、ユーザーは今どこにいるのかがわかり、目的地までのルートを表示するしくみを作ったのです。
駅構内のナビの難しさは、カーナビなら「銀行を左に」などの表示ができますが、駅構内にはそういう目印が少ないことです。そこで駅の案内看板をデータの取り込み、これが見えたら進むという表示にしました。こちらは現在も開発継続中です。
ここまでは鉄道の発停車・駅構内案内が主ですが、新たな研究課題として、利用者の「Door to Door」の案内をめざしています。具体的には、公共交通、タクシー、カーシェア、航空、レンタサイクルなど各社とデータ連携し、情報提供サービスを行いたい。将来的には料金システムやダイヤなどにおいてもICTの力で連携できないかと考えています。