ネットショッピングの画像って、その商品を買いたいユーザーにとって、ちょっともどかしい時がある。もう少し別の角度から見たい、横から見たいとかね。そんな悩みを解消するために、ものを動かした時に見え方が変化する「運動視差」に着目、ものをぐるっと動かしネット上で商品がより良くわかる開発・研究をするのはYahoo! JAPANの坂本さんです。
ネット上の画像をくるっと回せば、よりわかる! ~鍵は運動視差
私はネット上の画像のより良い見せ方を模索する研究をしています。ネット上にはたくさんの画像があります。
例えば、このようなリンゴの画像があったとして、それが本物のリンゴかどうかどうやって見分ければいいでしょうか。もしかしたら、トリックアートのようにペラペラの紙に印刷したリンゴを本物と錯覚しているのかもしれません。
しかし、普段の生活でリンゴがあったとき、本物かトリックアートなのかを迷うことはないと思います。リンゴに近づいたり手に取って回したりすれば、それが立体なのかペラペラなのかは自然にわかります。このように、自分が動いたり、ものを動かしたりした時に見え方が変化することは「運動視差」と呼ばれ、人間の立体的な感覚やリアリティに大きく影響していることがわかっています。しかし、残念ながら、現在のネット上の画像には「運動視差」がありません。
そこで私たちは、ネットの画像にも「運動視差」を与えれば、より本物らしく見えるのではないかという観点から研究開発に取り組んでいます。以下のサイトは、ショッピングサイトのモデルさんの画像をぐるっと回せるようにした例です。これにより、服をよりリアルに想像して選んでもらうことが可能になりました。
http://www.outletpeak.com/static/cont/id_STY1412RIV?sid=OP1412STY01
2つ目は、ネットニュースに掲載された車の展示会の写真をぐるっと回せるようにした例です。新車のかっこよさや立体感が、よりリアルにわかりますね。
※こちらのサイトで試してみてください。
このように私たちはネット上の画像をぐるっと回せる新しい画像表現の開発に取り組んでいます。正確に言うと、回したかのように見える画像です。
では、このような画像はどうやって作るのか説明しましょう。まず同一の被写体を異なる撮影位置から、たくさん撮影します。
同じ被写体を別の角度から写した写真が2枚あればその間の「運動視差」から、被写体の三次元的な位置とそれを撮影したそれぞれのカメラの位置が推定できます。
この推定をたくさんの画像間に適用すれば、最終的に被写体の立体的な形状が推定できます。この推定結果から、自動的にぐるぐる回した画像は生成されます。
この「運動視差」を利用した研究は、先ほどの例だけではなく、デジタル教科書や音楽プロモーションビデオなどにも応用されつつあります。ネットで使われる画像は膨大で、まだまだ応用先はたくさんあると考えているので、より広く普及するよう、人々に役立つ研究開発を進めていこうと考えています。
四次元の世界
都筑卓司(講談社ブルーバックス)
現代のコンピュータサイエンスはデータを高次元で処理することがほとんどです。次元と言われると難しそうでしり込みしてしまうかもしれませんが、本書は一次元から順を追ってわかりやすく説明してくれており、しかも短く簡潔なので読む人を選びません。前半を読んだ時点で、四次元ポケットから道具が飛び出てくる理由もわかります。